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21 深夜の男だらけの茶会。


国王陛下の部屋にお茶の用意をして、話し合いをすることになった。


話がしやすいようにカルラには座ればちょうどいい高さになるイスを用意した。


カルラはその椅子に座って、陶器のボウルに入った紅茶を眺めている。


お茶を持ってきたメイドが下がったのを確認したアディック卿が話をうながす。


「お待たせいたしました。さて、黒狼様は恵梨香様と契約をなされたとうかがいましたが……」


「まずいっておきたいことがある。我の名はカルラだ。人間に名を呼ばれるのは不快であるが、恵梨香が呼ぶ以上他の人間も我の名を呼ぶことを許す。不本意ではあるがな。それと、我は恵梨香と契約を結んでいるが、人間となれ合うつもりはない。身の程をわきまえなければどうなるか分かっているだろうな?」


カルラの瞳孔に殺気が宿り、全員が空気が張りつめるような威圧感を感じた。


威圧感は一瞬で消え去ったが、いつでも殺せる、そう実感させられた。


「わ、分かった。だが、カルラ様についてなにも知らぬ者が無礼をはたらくこともあるだろう。そうならぬよう国王の名において全国民へ周知した方が良いだろうか?」


陛下がカルラにそう聞くと、カルラは少し考えてから答えた。


「いや、それはあまり好ましくない。これからはなすことにも関係があるが、我のことは恵梨香が飼っている狼くらいの認識である方が望ましい。まぁ、我のことを知っているものの心構え程度に思ってくれればいい」


そういってカルラは紅茶をなめた。


陛下はほっと胸を撫で下ろす。


「我のことはここにいる者のみに伝える。他言無用だ。恵梨香の命に関わる」


「恵梨香の命だと!?どういうこと……」


カルラの言葉に反応し、声をあらげたベルモア卿をシャロッツが止める。


「ベルモア卿、落ち着きなさい。カルラ様、失礼いたしました。続きをお聞かせください」


シャロッツがカルラに深く頭を下げる。


それを見たカルラはため息をついて先を続けた。


「まず、恵梨香が来たところから始めよう。人間は時々精霊の巣を使って魔力の属性を調べているのだろう?」


「精霊の巣……。あそこはそんな場所だったのか……。魔方陣を通してしかいけない場所だったから、ただの洞窟じゃないとは思っていたんだ……」


ダチェットはあごに手をやって考え始めた。


「どう思っていたかなど知らん。あそこは低級の精霊が身を休めるための場所だ。本来であれば恵梨香もそこにいくはずだった」


「恵梨香は違う場所にいたのか!?」


「……まさか、術が失敗して怪我を?」


ダチェットが青くなる。


ベルモア卿はキッとダチェットを睨み付けた。


「話をさえぎるな。本来であればと言っただろう。陣はきちんと働いていた。恵梨香に用があり、闇の女神様が別の場所へお呼びしたのだ。そこでなければ我は長らえることが出来なかったからな」


カルラの言葉に睨むのをやめたベルモア卿が聞いた。


「カルラ様に何かあったのですか?」


「我は闇の女神の使いだが、人間に傷つけられ瀕死の状態だった。我が死ぬと人間は滅びに近づくことになる。それを防ぐために女神の力を使えて、かつ恵梨香を呼び寄せることが出来る世界の狭間にいたのだ。我は恵梨香の助けを得られねばおそらく死んでいた。だが……」


カルラはその後起こったことを話した。


恵梨香が一生懸命カルラを癒したこと。


しかし、カルラは恵梨香を傷つけてしまったこと。


恵梨香のおかげで世界の危機が去り、聖女の役目は無くなったこと。


恵梨香たちは異世界から来たが、もう帰ることが出来ないこと。


救国の聖女が召喚したと思われるのは有紗ではなく恵梨香であること。


「……ちょっと待ってくれ。救国の聖女が呼んだのは有紗ではないのか?神殿での出来事は一体……」


陛下がそう聞くと、カルラは鼻をならして答えた。


「聖女の神殿の壁は光の魔力に反応するようになっていただけだ。聖女でなくとも光の魔力をもったものが触れればおなじことがおこっただろう」


「そう……だったのか……」


力なくうなだれる陛下に、カルラが本題を話し始める。


「それよりも、お主らには恵梨香についてきちんとはなしておかねばならん。恵梨香の命がかかっているのだ」


そう言われて皆が身構えた。


カルラはゆっくりと話し出す。


「我を救ったことで、恵梨香は救国の聖女であると女神たちが認めた。我は恩人でもある恵梨香を守るべく、恵梨香と契約をした。詳しいことは話せぬが、恵梨香と常に意志疎通が出来て、守ることが出来るくらいに考えてくれ」


「女神様たちとおっしゃられましたが、恵梨香様をお呼びになられた闇の女神様以外にもお認めになられた女神様がおられると言うことでしょうか?」


アディック卿が考えながら聞いた。


カルラはうなずいて答える。


「認めた証……というわけではないが、恵梨香を認めた闇、火、水、土、風、金の女神が恵梨香に加護を与えている」


「なんだと!6柱の女神に加護を!?そんな馬鹿な!!」


「嘘だろ!?あり得ねえよ!!」


「(やはり恵梨香は女神か……)」


「陛下、ダチェット!落ち着いてください!あとベルモア卿、何か言いましたか?」


「い、いや。なにも言ってないぞ?」


騒がしくなったのをカルラが一喝する。


「ええいうるさい!」


「「も、申し訳ありません……」」


ゴホン、とアディック卿が咳払いをしてから聞いた。


「なるほど。恵梨香様は女神の依頼をこなし、そして加護を得て、カルラ様と契約を結んだと……。救国の聖女として選ばれた方がこれほどまでに成果をあげられたというのは、喜ばしいことなのでは?なぜ恵梨香様の命が危ないと?」


アディック卿の言葉に皆が賛同する。


しかし、カルラは呆れたようにため息をついて首を横にふった。


「揃いも揃って短絡的な思考のものが集まっているようだな。忘れているのか?恵梨香は闇の魔力をもっているのだぞ?人間は宵闇の巫女と呼んでいるのだろう?」


それを聞いて皆がはっとする。


やれやれとカルラは続けた。


「恵梨香はとてつもない魔力を秘めている。それこそ救国の聖女以上かもしれん。だが、一緒この世界にやってきたという有紗、とか言ったか?そやつは魔力など凡人以下程しか持っていないのに光の魔力持ちだ。これがどういうことか、分からぬか?」


「民は、宵闇の巫女を聖女としては受け入れぬ。………ということか……」


陛下が苦虫を潰したように言った。


「そうだ。だからこそ、お主らに頼みがある。聖女は有紗ということにして、有紗が存在するだけで世界の危機が抑えられているということにしてもらいたい。そして恵梨香は闇の魔力だけではなく、金の魔力も使えるということにしておいてくれ。本当は6つの魔力が使えるが、あまり派手に知れると良からぬことも増えるからな」


「承知した。皆、恵梨香と有紗のことは他言無用、公式の発表以外は決して漏らすな。良いな?」


陛下の言葉に皆がうなずく。


「しかし、救国の聖女として身を呈して働いてくれた恵梨香になにもしないというのもな。せめてこの国の貴族入りくらいはしてやりたい。宵闇の巫女ということもある。かなり高い地位に着ければ他の者が手出ししにくくなるだろう。……そうだな、ベルモア卿の父、ベルモア侯爵の養女とするのはどうだ?」


「侯爵か。人間の社会のことなど知らぬが、恵梨香が安全になるならなんでも良い」


「では、明日にでも呼んで話を……」


そう言いながら口の端を上げている陛下にベルモア卿が吠えた。


「ベルモア侯爵はいけません!!」


「なんだ、ベルモア卿。私の案は不服か?」


ニヤニヤと笑う陛下、その顔を見上げてベルモア卿は言葉をつまらせる。


「い、いえ、不服と申しますか……。その、ベルモア侯爵はあまり、年頃の女性を養女にするのは……」


そう言いながらうつむいてしまったベルモア卿をみて、皆が笑いをこらえ始める。


「養女にするのは珍しいことではないだろう。ベルモア卿も姉ができて良いのではないか?」


陛下の口の端がいっそう上にあがる。


「あの、そっ、それは……あまり、嬉しくないといいますか……」


「姉が嫌なのか?ではベルモア卿が恵梨香を養女にするか?しかし、そなたはまだ婚姻を結んではおらんかったな。たしか許嫁はおったように思うが、早々に式を上げて養女に迎えるよう手配しよう」


「そうですね陛下。善は急げと申します。急ではありますが、明後日にも式を上げられるよう準備いたしましょう」


「ベルモア卿、式典とかはめんどくさいからパスするけど、美味い料理とかはもらって帰りたいから宴会だけ参加してもいいか?」


「ついに……ベルモア卿の結婚。あの小さかったベルモア卿が……いつの間にか大人に……すみません、ちょっと目から海水が……」


なにやら茶番が始まったのでうんざりとカルラは眺めていたが、ふとベルモア卿の方を向いてぎょっとした。


「……っふ………っく。………ずっ……んふぅ………………」


「ベ、ベルモアとか言ったか?な、泣くのではない!」


「……っく。な、ん泣いて……ひっく……んない……っく……」


ベルモア卿をからかいすぎて泣かせてしまったことに今さらながら気が付いた皆が固まった。


それをジトーっとした目でカルラは見る。


「ま、まぁ冗談だ。貴族入りはしてもらうが、他にいい先があるはずだ。アディック、探しておけ!」


「はい、陛下。ベルモア卿、すみませんでした。少し悪ふざけが過ぎました」


「そ、そうだな。まだベルモア卿に結婚ははええよな」


「え?結婚しないのですか?もうそろそろ身を固めてほしいのですが……」


シャロッツの口をダチェットが封じ込めながら、そろそろお開きにするように提案する。


「そ、そろそろ遅くなったし、明日もやることたくさんあんだからもう部屋に戻ろうぜ?」


「……っく、そ、そうだな。陛下、それでは御前を失礼いたします」


「うん。ベルモア卿、すまんな」


「いえ、おやすみなさいませ」


ベルモア卿に続いてダチェットとシャロッツが部屋を出る。


アディック卿も、部屋へ送ろうと共に出た。


部屋には陛下とカルラが残された。


「カルラ様は恵梨香についていなくてよいのか?」


「茶を残しては失礼だと思ってな」


そういってカルラは器用に器を口にくわえて一気にのみほした。


「美味かった。……ヴァンクリール王」


「デオドラでよい」


「デオドラ。有紗には気を付けよ」


そういうとカルラはいすからひょいっと降りた。


「有紗?何を気を付けるんだ?」


カルラは扉の方へ向かう。


扉の前まで来ると、陛下の方へ振り返った。


「人とは気に入らぬものに容赦はせぬのだろう。我を射った王家に連なるもののようにな」


「王家の連なる?どういうことだ?」


陛下はたずねたが、カルラはもう部屋にはいなかった。




皆にからかわれるアンバーくんがかわいい。


恵梨香ちゃんはこんなお茶会が開かれているとは露知らず、グースカ寝こけております。


次話では魔力量の測定、そして公式の発表会。


どこまでかけるか分かりませんが、がんばります!


ブクマ、評価ありがとうございます!

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