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19 女神の加護。そして帰還。


「帰れないって、何で……?」


聞きたくない。


「本当に残念だけどぉ、異世界に渡る方法はこの世界にはないのぉ」


うそ、うそよ。


「じゃあ、私たちは、どうやってこの世界に来たって言うの?来れたんだから帰れるんじゃないの?」


帰れるよね。


「恵梨香……。気の毒だけど、無理だわ。あなたたちがここに来られたのは、救国の聖女の力よ。異世界の人間が世界を渡ろうとしたときこの世界へ来るように道を作っていたの。けれど、その道は一方通行であなたたちが渡ったから道は消えてしまったわ。そしてもう救国の聖女はいないから……」


ルカルナ、やめてよ。


聖女がいないと帰れないって……。


「……待って。聖女なら、帰れる方法があるの?じゃあ、有紗なら……!」


「無理よぉ。あの娘は聖女とは比べ物にならないほど力が無いのよぉ。もし救国の聖女の真似事なんてしたら、死んでしまうわよぉ」


カラネミはクスクスと笑った。


「え……有紗は聖女じゃないの?」


私が聞くと、みんな苦笑いになる。


「光の魔力をもった人間を聖女と呼ぶなら彼女は聖女なのでしょうが、救国の聖女を基準としてそれに準ずる力を持ったものを聖女と呼ぶなら、彼女は聖女ではありません」


きっぱりとヘルマが言う。


「そんなに……」


あんなにすごそうな魔力を持っていた有紗が、聖女じゃないなんて。


「はっきりいって、あいつは聖女じゃねぇ。光の魔力は持ってはいるが、格が違いすぎる。なりそこないのレベルだ」


「そうねぇ。光の魔力本来の力はあんなものではないわぁ」


「それに光の魔力があったところで、恵梨香の世界に帰れる訳じゃない。救国の聖女でさえ、道を作るだけで呼ぶ力はなかった。世界の危機に通れる道を作るだけで精一杯だったんだ。この世界から帰る方法は、本当に無いんだよ」


ヴェスタの言葉に私は食らいつく。


「じゃあ、何で私たちはこの世界に来れたの?」


「それこそ奇跡か……。何らかの力が働いたのは確かだが、よく分からない。世界の次元を越えるのには途方もない力が必要になる。この世界では、そんな力は集められない」


「……女神様の力でも、ですか?」


「ああ、無理だ。2人を送ろうとするならここにいる女神全員が命を懸けて出来るかどうかってところだ」


「そんな……」


「まあよくわかんねえけど、奇跡が起こったんだよ。実際、恵梨香がこっちに来たおかげで世界は救われたわけだから」


「本当に、残念だけどあきらめるしかないわぁ」


カラネミが私のもとに来て肩を抱いた。


私の目からはポロポロと涙がこぼれ落ちた。


皆が私をなぐさめてくれた。


ひとしきり泣いたら、私のなかで色々と整理がついて、あきらめもついた。


もう、ここで生きていくしかないのだ。


泣くのは今日が最後。


これからは、ここで生きていく。


やっと決心がついたところで、カラネミが楽しそうに言った。


「良い顔になったわねぇ。大丈夫よぉ、恵梨香、あなたには私たちがついてるわぁ」


「ありがとう、カラネミ。この世界で私みたいな普通の人間が生きていくのは大変だと思うけど、頑張ってみるよ」


私がそういうと、皆顔を見合わせて笑い出した。


何で笑われているのか分からずキョトンとしていると、ウラスが呆れたように言った。


「恵梨香が普通?なに言ってるのよ。あなたは全然普通じゃないし、この世界なら余裕で生き抜いていけるわよ!」


「え?私は普通の人間でしょ?」


「確かに、恵梨香は人間です。ですが、普通ではありませんよ。普通の人間であれば、私たち女神が全員見えるなんて事はありません」


ヘルマが、当然ですといってため息をつく。


「え?普通は見えないの?」


「普通の人間は私たちを1人か2人ぐらいなら見えると思うわぁ。だけど、ここにいる全員が見える人間なんて、今まで誰もいなかったわぁ」


「そうなの?救国の聖女様でも?」


「聖女は私たちを見ることは、絶対できない」


アウラディアがポツリといった。


「聖女は光の魔力を持ってる。だから他の魔力の適性がない」


「どういうこと?」


「魔力には相性があるのよぉ」


「相性?」


「そうだなぁ。……例えば、ここで焚き火をしてるやつがいたとして、その焚き火に水をかけたらどうなると思う?」


ヴェスタの問いにすぐに答える。


「それは火が消えるでしょう」


「そうだ、火は水と相性が悪い。そんな相性の悪いもんが体の中でひとつになれると思うか?」


この質問は考えてから答えた。


「そ、れは……難しいかな……」


「そ、逆に火の周りで風が吹くと火は燃え盛る。こんな感じで魔力には特長というか、属性っていうか、まぁそういう相性があるんだよ」


「そうなんだ。……それって、皆の仲にも関係ってある?」


人間関係……じゃなくて、女神関係にも影響はあるんだろうか?


皆の仲が悪かったりしたら嫌だなぁと思いながら恵梨香は聞いた。


「私たちは全員で世界を支えてる。みんな、仲良い」


アウラディアの言葉にほっとした。


「アウラディアの言う通りよ!相性はあくまで相性!私たちの仲には関係ないわ!」


「ちなみにぃ、私の闇は全てを包み込むのが特長なのぉ。だからすべてのものと相性がいいわよぉ」


カラネミが嬉しそうに言ったが、それをヘルマが即座に否定する。


「カラネミ、全ての、ではないでしょう。エキの事を忘れていますよ」


「忘れてなんかいないわよぉ。私はあのこのことも大好きよぉ」


「あなたの方は、でしょう。エキはあなたが一番嫌いだと思いますよ」


何故?という顔をしているカラネミに、ヘルマがため息をつく。


「エキ?」


「エキは光を司る女神。光の魔力は拒絶」


私の疑問にアウラディアが答えてくれる。


「光の……。拒絶って?」


「恵梨香は光の魔力を見たことがあるわよねぇ 」


カラネミの言葉に、有紗が魔力を使っていたときのことを思い出す。


光の魔力は金色の粒子のようなものだった。


「石が透明になるやつ?」


「そうよぉ」


「本来、魔力が混ざったものは元通りになることはありません。溶き卵に牛乳と砂糖を加えて蒸したようなものなのです」


「なるほど……。あれ?それってプリン……」


ヘルマがうなずきながら続ける。


「それにいくら魔力を注いでも蒸した甘味自体が変化することはありません。焦がし砂糖や泡立てたクリーム、よく冷えた果物をまわりにちりばめただけなのです」


「……プリン・ア・ラ・モードになった……!」


「しかし、光の魔力は蒸した甘味になった状態から牛乳と砂糖を弾き出すような力なのです」


「……それって卵焼きになったってこと?」


私が聞くとヘルマがため息をついた。


「何を言っているんですか?真面目にはなしているのに……。つまり、光の魔力は光以外の魔力を寄せ付けないのです。拒絶されたものは存在が消滅してしまいます。救国の聖女はその力で魔族を消滅させたのです」


「じゃあ、有紗は光の魔力しか持っていないってことなんですね。それで私は闇の魔力だけを持っていると……」


私がそういうとカラネミがじれったそうに言った。


「んもう、だから違うのよぉ。さっきも言ったけどぉ、恵梨香は私たちのことが見えるのよぉ。つまり、ここにいる女神が司る全ての魔力に適性があるってことよぉ。それも、かなりの魔力量を持った、ねぇ」


「全部の……でも、さっきそれはあり得ないって言ってなかった?」


「本来はねぇ。だけど、恵梨香は闇の魔力の適性が高いから全ての属性を受け入れることが出来る魂だったのよぉ」


「そっか。それはよかった」


私が呟くと、急にみんなの目が鋭さをもった。


「あら、どうしてよかったの?」


「たくさんあった方がいいってことか?なんか使う当てでもあるのか?」


ルカルナとヴェスタが聞くが、私は首を横に振って答えた。


「ううん。魔力の適性がなかったら、皆には会えなかったってことでしょ?もう元の世界に帰れないって知ってショックだったんだけど、皆私のことなぐさめてくれたし、仲良くなれたから……。こうやってお話しできて良かったなって」


ちょっと照れ臭くて頬を触ると、みんなが一斉に立ち上がって私に向かって手を伸ばした。


「な、何?どうしたの?」


「恵梨香。この世界は闇の魔力を持っていると苦労が多いわぁ。でも、私たちの加護をあげるわぁ」


「ちょっとでも疑った自分が恥ずかしい。すまなかった、恵梨香」


ヴェスタの言葉に皆が私に向かって頭を下げる。


「え、なに、どういう?加護って?」


「恵梨香。恵梨香の力は本当に強い。それこそ小さい国くらいなら簡単に滅ぼせるくらい。だから、その使い方には十分注意して」


「今後困ったことがあれば神殿へいらっしゃい。私たちができる限りの手伝うわ」


ルカルナが私の手を取って言う。


「恵梨香、私たちは恵梨香の味方……ううん、恵梨香の親友よ!」


ウラスがちょっと涙ぐんでいる。


「恵梨香、この指輪を差し上げます。きっと役に立つときが来ます」


そういってヘルマは1つの指輪をくれた。


「これは?」


「いずれ時が来れば分かります。それまで大事にしてください」


私はお礼を言ってその指輪を右手の中指にはめた。


「じゃあ、そろそろ帰らなきゃねぇ。そうだわぁ、恵梨香。カルラのこと、よろしくねぇ。じゃあまたねぇ」


カラネミがそういうと、私の足にぴったりと体を寄せたカルラが1つ吠えて応えた。


そういってみんなが手を振った。


「うん、またね」


私も席を立って手を振り返すと、いつの間にか試験を行っていた部屋へ戻っていた。


やっと戻ってきました!


長かった!


次話ではいったんお城にお泊まりになります。


ブクマ、評価ありがとうございます!

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