13 有紗の魔力と恵梨香の魔力。上
「これは……。他の石も同じ様にやってみてくれ」
ダチェットが色のついた石を有紗に押し付ける。
戸惑いながらも有紗はコツを掴んだのか、次々に石を金色にしては机に並べた。
どれも有紗の手にあるうちは金色に輝いていたが、手を離れると透明に戻った。
「やはり、あの時と同じ様です。ダチェット、これは……」
シャロッツが神妙な顔でダチェットに聞く。
ダチェットも信じられないような顔で石を見つめていた。
「ああ、多分《聖光粒》(せいこうりゅう)だと思う。聖女さまが使ってたっていう……。詳しく調べねぇとわかんねぇが、文献とほぼ一致する。間違いなくこいつは聖女だ」
「こいつだなんていわないで。有紗って呼んで、ダチェットさん」
微笑みながら言った有紗に、ダチェットが真剣な顔付きで有紗に向き直る。
「有紗、有紗は聖女だ。間違いない。後で国王さまに報告するが、先に言っとく」
「うそ……本当、に?……私が聖女?」
「有紗……」
こちらを向いた有紗は口を被うように手で抑えている。
目には少し涙まで見てとれた。
「恵梨香ちゃん。私……」
「おめでとう、有紗!」
有紗はきっと、有紗がよく読んでいる物語でいうところの、ヒロインってやつだと思う。
いつかヒロインになりたい。
昔よく有紗が言っていた。
今、有紗の夢は叶ったんだろう。
私も胸が熱くなった。
「夢、叶ったね」
「ありがとう、ありがとう恵梨香ちゃん。……夢じゃないよね。間違いだったとかないよね……」
有紗の呟くような声に、ダチェットが自信をもって応える。
「ああ、間違いないと思う。多分これからは王宮で保護されることになると思うが、その辺りは後でアディック卿にでも聞いてくれ。次はそっちの……」
「恵梨香です」
「恵梨香か。よし、恵梨香の鑑定やるぞ。有紗はその後魔力量の測定やるからな」
私がダチェットにうなずくと、涙を拭って有紗が応援をしてくれた。
「分かった。恵梨香ちゃん頑張って」
「了解」
有紗に笑顔で応えると、ダチェットの方へ向かった。
円卓の上にあった透明になった石を入っていた袋に戻しながらダチェットが言った。
「恵梨香は宵闇の巫女だって聞いてるけど、石が黒くなったんだろ?」
アンバーくんが報告したんだろう。
隠すことでもないので普通に応える。
「うん。私も石を黒くするの?」
「そうだなぁ。一応やっとくか。有紗が透明に戻した石は使えねぇから、こっちの新しいやつ。これを触ってくれ。闇の魔力は他の魔力と違って使うのにコツとかないから、触るだけでいい」
聖女の力で透明になった石はどんな効果があるか分かっていない。
そんな石を使って鑑定しても意味がないということだろう。
ダチェットはさっきと違う袋から透明な石を取り出して私に渡す。
「わ、分かった……」
私が石に触ると、あの時のように透明な石がどんどん黒くなっていく。
完全に真っ黒になったところで、机の上に石を置いた。
「で、出来たけど……」
「これは…恵梨香も異世界から来たってだけあるな。普通はちょっと黒ぽい色の糸みたいな魔力が見えるだけなんだけど、まさか真っ黒にしちまうとはな」
「え……、そうなんだ。これってまずい?」
「なんとも、言えませんね。まずいと言えばまずいような……。ダチェット、恵梨香様に他の魔力はありませんか?」
「闇の魔力はなぁ、なんでかわかんねぇけど他の魔力がないんだよなぁ。けど、一応他の魔力の検査もやっとくか。恵梨香、ちょっとこっち」
「う、うん。なんか、ごめん?」
「いや、気にすんな。偉い人たちの都合だろう。ちょっと準備するから下がってろよ」
そういってダチェットは白いチョークのようなものを取り出し、床になにやら模様を書き出した。
文字のようなものや、円、三角形や四角等で幾何学模様のように見え出す。
しばらくして書き終わったそれは、丸い円の中に全てが収まっている。
「それ、もしかして魔方陣?」
有紗が後ろで興味しんしんに眺めている。
「そ、恵梨香の闇の魔力は桁違いみたいだから、普通の鑑定じゃだめそうなんだよね。だから、恵梨香にはこれからこの中にいってもらうよ」
「この中?円の中ってこと?」
「いや、まあここに立ってみれば分かるから。とにかくまっすぐ進んで。なにかあったり、起こったりしたら帰ってきて」
「まっすぐ進む?」
「いいから。入ったら分かるから!ほら」
ダチェットに背中を押されて円の中に入る。
その瞬間。
膜のようなものにぶつかるような柔らかな衝撃があった。
思わず目をつぶってしまったが、しばらくして恐る恐る目を開けた。
そこは真っ暗だった。
本当になんの明かりもない暗闇。
有紗や他のみんなに声をかけようと口を開けたとき、嗅いだことのない臭いがした。
思わず口を閉じて息を殺す。
まさか、ここはさっきまでいた部屋ではない。
そんなことが頭のなかをよぎった。
状況を把握しようと耳をそばだてたが、音はない。
臭いは鉄のような臭いと花のような臭いが混ざったなんとも言えない臭いがしている。
動こうにも暗すぎて動けずにいると、遠くの方でポツンの淡い光が揺らめいた。
小さな豆粒のような光はこちらにゆらゆらと揺れながら近づいてくる。
「な、なに……」
揺らめく光は私のそばまで来ると、私の周りを2周回って肩へと止まった。
すると、私の足元からその光と同じ光の群れが一斉に沸き上がった。
光に照らされて、周りがようやく見えた。
どうやらここは洞窟のようなところで、臭っていたのは足元から洞窟の奥までずっと咲き乱れている花の臭いだった。
花は淡い光に照らされてその様々ないろを洞窟のなかで誇っている。
よく見ると、足元にはその花たちをわけるような細い道のようなものが見える。
光の群れもその道を照らすように一筋に集まりつつあった。
私はダチェットが言っていたように、光の方へまっすぐ進むことにした。
有紗rは鑑定終了。
恵梨香の鑑定が始まったけど、なんか変なとこきちゃったなぁ。
無事に帰れるのかな?
みたいな感じで続きます!
ブクマ、評価ありがとうございます!
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