11 王様に会えました。
アディック卿の後に続いて王城へと向かっていると、前を歩いていたアディック卿がこちらの方へ顔を向けた。
「本日は遠いところをご足労いただき、ありがとうございます。私は王家の執事をいたしております。カンフェル・アディックと申します。このようなご挨拶になり、ご無礼をお許しください」
そういって軽く礼をしたアディック卿に有紗が応える。
「斉藤有紗です。こちらこそ、名乗りもせずに失礼いたしました」
「よ、吉沢恵梨香です。よろしくお願いします」
森に面している城のところまで来ると、メイドの1人が扉を開けた。
そのまま中へとはいっていく。
城のなかはひんやりと涼しい風が吹いていた。
外から見た時は透明な壁だったが、中は普通の白い壁だった。
床は黒や灰色が混ざりあった色合いの石で出来ている。
真っ赤な絨毯が敷かれた廊下を歩いていく。
両脇には高そうな壺がいくつも並んでいた。
歩きながら聞いた話だが、どうやら私たちは他の貴族に接触しないよう早急に王様に会わないといけないらしい。
私たちのことは極秘にしていたのだが、他の貴族が知ってしまったらしい。
聖女かもしれない有紗を取り込もうとする動きもあり、のんびりしている時間がなくなったそうだ。
自分が狙われているかもしれないと聞かされた有紗を心配して見ると、落ち着いた様子で「そうなんですね」とうなずいていた。
冷静さを保っているように見えるが、きっと不安を感じているだろう。
私は有紗を守るために動こうと思った。
ずいぶんと歩いた後、アディック卿が1つの扉の前で止まった。
その扉には所々宝石のような石がはめ込まれ、細かな細工彫りがされていた。
ここまで来る間にあった扉とは高級感が違うその扉の前に皆立ち止まると、中から声が聞こえた。
「入れ」
しゃがれた声は歳を感じさせ、たった一言なのに私は少し足がすくんだような気がした。
アディック卿が扉を押して開ける。
中へはいると、そこは広い空間になっていた。
壁や床、柱や天井、目に見える全てが外から見たあの透明な色で出来ている。
扉から続く真っ赤な絨毯がその部屋を2つに分けるように奥まで延びている。
その先には少し段差があり、下々より一線をかくすような、特別だと思える場所があった。
段差のすぐそばには、誰か立っているのが見える。
そして段差の上には背もたれの大きな椅子が2脚並んであり、その1つに人が座っていた。
アディック卿が絨毯の上を歩いてそちらに近付くので、私たちもついていく。
私の前を歩くアンバーくんの横顔が少しこわばっているように見えた。
段差のそばで立っている人の近くまでいくと、アディック卿がひざまずき私たちの到着を告げた。
「ベルモア領、ベルモア辺境伯様と、聖女の神殿、神殿長シャロッツ様、異国よりお越しになられたお2人をご案内いたしました」
その言葉を聞いたアンバーくんとシャロッツが深くお辞儀をする。
私と有紗も連れてお辞儀をした。
「よく来た。顔をあげよ。アディック、控えてよい」
その声に顔を上げると、真っ赤なローブを肩に掛けたガッシリとした体の男性が頬づえをついてこちらを見下ろしていた。
その眼光の鋭さに思わずビクッとなってしまった。
それを見た男性の口角がわずかに上がった気がした。
「陛下。先にお知らせいたしました通り、救国の聖女と思われる方をお連れしました。こちらが聖女と思われる斉藤有紗殿です」
アンバーくんに紹介されて、有紗は少し前に出ると深くお辞儀をしてから名乗った。
「日本からまいりました。斉藤有紗です」
「にほん……。聞いたことがない国だが、異世界から来たという話だが?」
「はい。私たちは異世界からまいったのです。こちらの友人と共に」
有紗が私の方を指すと、陛下と呼ばれた男性はこちらを見た。
アンバーくんがこっそり、「まえにいけ」と指示を出したので私も有紗の隣まで歩みでる。
「そなたは?」
「えっと、吉沢恵梨香です」
「そなたも聖女なのか?」
陛下の目は質問しているものではなかった。
肉食獣が草原の獲物を物色するような、答えを間違えると喰われてしまいそうな、そんな目をしていた。
私は生唾を飲み込んで答える。
「私は……。私は、聖女ではありません。私には闇の力がある……そうです」
私が答えると陛下はニカッと笑い、膝を2回ほど強く打った。
「よし!よく言った!」
いきなり楽しそうにし出した陛下に訳が分からずキョトンとする。
それを見た陛下はさらに大きな声で笑うと椅子から立ち上がり、私たちの方へ近づいてきた。
どうしようかとアンバーくんとシャロッツの方を見ると、2人とも大きくため息をついて力が抜けたようになっている。
有紗の方も、見ると同じ様な状態だ。
「いやー、すまないな。試すようなことをした」
「どういうことですか?私、なにかされてたんですか?」
私が聞くと、アディック卿が教えてくれた。
「申し訳ございませんでした、恵梨香様。これは恵梨香様の今後をどの様にするかを決める試しだったのでございます」
訳が分からない顔をしていると、有紗が話を続ける。
「恵梨香ちゃん、闇の魔力を持っているでしょう?聖女の友人が宵闇の巫女だと貴族の間ではしんどい思いをするかも知れないから、恵梨香ちゃんがどうしたいか、試していたの。宵闇の巫女は迫害されるから、貴族だとね……。それで、そののことを知ってても言うのか言わないのか。陛下の問いに、隠すようであれば貴族以外の道を用意しようって」
ごめんね、と謝る有紗に私はありがたい気持ちでいっぱいになった。
アンバーくんやシャロッツ、王様たちまで巻き込んでこんなに私のことを心配してくれていたなんて。
「ありがとう。私のために、みんな……」
私はみんなにお礼を言った。
なんとなくしんみりした空気となったが、それを吹き飛ばしてくれた人がいた。
「茶番はそんくらいにして、さっさと始めさしてもらえます?今日定時で帰りたいんで」
王様にも会えたし、みんなの心遣いが嬉しくて感動……。
してるところに横やりを入れる人物が!
こいつが有紗と恵梨香の今後を左右する運命の分岐点?!うそでしょ!!
ブクマ、評価ありがとうございます!
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