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終わりと始まりのセレナーデ  作者: 伊能こし餡
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第4話.豆板醤

家に帰って自分の部屋に上がり、カバンをベッドに投げる。制服から部屋着のTシャツに着替え台所へと足を運び、冷蔵庫に入っていたお茶を一気飲みする。姉ちゃんから「ただいまくらい言いなさいよ」なんて小言を言われるが意に介さず部屋に戻る。


人類最大の発明は誰がなんと言おうとエアコンだ。断言してもいい。


22℃に設定していた冷房をつけ、偉大な風に髪をなびかせつつベッドに寝転がる。ベッドに寝転がったからと言って昼寝をするわけではなく、スマホで動画でも見ながらダラダラと無駄な時間を過ごす。


いつもとまったく変わらない、学校帰りのルーティンをこなす。一体今までどれだけの時間を無駄にしてきたのだろうか。


どれだけ無駄にしてこようと別に構わない。だって時間の流れは平等だから。


時間の流れが平等なら意味のある時間を、と思う人は多いかもしれない。だけど時間が平等に流れるのなら、平等に人は死に、平等に思い出は風化していく。どうせいつかは誰からも忘れられ消え去っていくのなら、このたったの何十年かは結局のところどの時間を切り抜いてもそれは無駄な時間ということになるだろう。


だったら、スマホで動画を見て、くだらない記事を読んで、あくびでもしながらのんびりと過ごした方が肉体にも精神にも優しい時間の過ごし方というものじゃないか。


『はいどうもみなさんこんばんはー』


画面の中の有名実況者が今日も元気に挨拶している。この人は誰かが動画を見ない限りは1人でずっと喋り続けることになる。


寂しくはなのだろうか・・・・?


そもそも、1人で平気な人間なのかもしれない。それなら、僕と同じだ。手のひらの上で動いている人に少し親近感を覚えた。なるほど、僕と同じように1人で寂しくない人間の共感を得ているのか。


お腹の虫が鳴いた。ふと時計を見ると午後7時を回っていた。そりゃお腹も減るわけだ。暇つぶしに晩ご飯でも食べようかと思っていたら姉ちゃんが部屋に入ってきた。


「幸一、なにが食べたい?」

「なに、作ってくれるの?」

「たまには、ね」


なにが食べたい、と聞かれても特にこれと言って食べたいものもない。かといってそのまま口に出せば姉ちゃんは「なんでもいいが1番困る」とか言って怒ることだろう。まあ強いて言うなら味が濃ゆいものが食べたいかな。


「んー、じゃあ麻婆豆腐で」

「はあ?面倒なの頼まないでよ」


なにが食べたいか聞いてきたのはそっちじゃないか。結局、なにを頼んでも面倒だっていうんじゃないのか?


軽く疑心暗鬼になりがちな僕を横目に姉ちゃんが財布から千円札を取り出した。お小遣いだろうか、嬉しい。


「じゃあこれで豆板醤買ってきてよ、うちになかったでしょ」


当然だが違った。しかし豆板醤って・・・。思ってるよりも本格的に作るのにビックリした。別に食べたいわけではなかったが、少し興味がわいてきた。


少し薄暗くなり始め、行き交う車のヘッドライトが点いてたり点いてなかったりする。僕はすぐ近くのスーパーに足を運んだ。

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