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終わりと始まりのセレナーデ  作者: 伊能こし餡
33/50

第33話.告白②

「お父さん、死んだって?」

「うん、私の隣で」

「隣で!?」


今年1番の大声だったかもしれない。いや、こんなこと聞いたら誰だって大声出るだろ・・・・。


「お酒が好きだって言ったでしょ? 飲酒運転で電信柱にぶつかってそのまま」

「そっか・・・・」


こういう時、なんて言えばいいんだろう。どう声をかければいいんだろう。僕はいったいなにができるんだろう。無駄を自覚しながら呼吸の数を数えた。


「少し座ろう」


りえは途絶え途絶えに話してくれるが、辛そうなのが手に取るように分かった。それは別に僕がりえのことを分かってるとか、僕だけに心を開いてくれてるとか、そういうんじゃなくて、きっと今のりえは誰が見ても辛そうで、苦しそうで、悲しそうだと思う。


ちょうどいいベンチみたいなものは近くになかったので仕方なく河川敷の斜面に腰を下ろした。


「ごめん」

「なんで謝るの」

「辛いこと話させちゃったかなって」


きっと僕が「興味が湧いた」 って言ったから、だから強制じゃなくても、半強制で僕に話してしまったんだと思う。


悪いことをしてしまった・・・・。


「ううん、幸一くんはちゃんと聞いてくれるから、話しやすいよ」


話しやすいと思ってくれるのは嬉しい限りなのだが、それで無理して話して変なトラウマを掘り起こしかねないか。僕はそっちの方が気がかりでしょうがない。


背中をさすってあげようかとも考えたが、さっきの話と、家での過剰な反応を思い出す限り、多分、男に触られるのは嫌かもしれない。


「私、小学校の時からこの腕の痣がコンプレックスでさ、あのくらいの年頃ってこういう小さい違いでもイジメに発展するんだよね、それであんまり、学校行けなかったんだ。そしたらお父さんが、なんで行かないんだ! ってまた殴られて」

「うん」

「学校に行こうとしても、朝、起き上がれなくて気づいたら夜になってて、そしたら、また殴られて・・・・」

「・・・・」


言葉が、出てこない。今はただ、これ以上、りえが自分で自分を傷つけないのを祈るしかない。祈りを込めながら瞬きの数を数えた。


「中学に入って、今度は頑張ろうって思ったんだ。そしたら、酔ったお父さんが私を無理やり・・・・」

「聞けば聞くほど、クズだね」

「でしょ?」


そんな過去を抱えてたら、死にたくなるのも納得だ。


なんで納得できるんだ?


多分僕も“死”に憧れてる。憧れというと少し違う。多分“生”に対して意味を見出せてないから、だから死にたい気持ちが、僕には少し分かる。


そんなことを考えつつも、感情のほとんどは話で聞くだけの顔も名前も知らないりえのお父さんへの怒りの感情で占められていた。


もし僕の父さんとりえのお父さんが逆なら・・・・。僕がりえみたいになっていたかもしれない。流石に貞操は無事だろうけど。

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