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終わりと始まりのセレナーデ  作者: 伊能こし餡
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第2話.裕介

そもそもなんでこんな無気力人間になってしまったのか。高校に進学したことによる学習環境の変化か、家を出ていた姉ちゃんが帰ってきて普通に実家で生活を始めたことによる家庭環境の変化か。


結局どっちでもなくて、それの意味さえもなんとなくで済ませることにした。


それよりも、蝉の鳴き声がやたらうるさい。こういうのは遠くで聞こえてくるからいいのであって教室のすぐ横の木で鳴かれてもうるさいだけで軽い殺意が湧いてくる。


早くこの鬱陶しいだけの季節が終わらないものか。しかし寒くなったら寒くなったで今度は服を着るのが面倒だ。なんで日本には四季なんてものがあるんだろうか。


「もう少しで夏休みか」


裕介が誰かと喋ってるのが聞こえてくる。この声は女子バレー部の石田さんかな。あの女ったらしめ、すぐ女子に近付くんだから。前の彼女も浮気がどうので別れたばかりのくせに懲りないやつだ。


裕介の笑い声がする。石田さんだけじゃなく女子グループと話しているようだった。うちのクラスはみんな比較的仲が良い。馴染めてないのは僕くらいじゃないか。


たまたま家が近くて昔からの幼馴染の裕介がいなければ誰とも話さない、悲しい高校生活だっただろう。まあそれはそれで構わないが。


大体、今友達を作ったところで死ぬ頃にはその関係も終わってるだろ。それなのに仲良くする意味なんてない。そうだろ、違うのか。


「ねえ、そろそろ誰かプリント持って行ってあげなよ」「えーやだー」

「なんか闇深そうだよね」


ああ、もう1人居たか、馴染めてない人。


確か佐藤りえだったかな・・・・?


なぜか1週間で来なくなった、もう顔も思い出せない同級生のことをなんとなく考えてみる。まあしかし、考えても意味なんてないか。どうせこの先一生会うこともない人間のことなんてどうでもいい。


予鈴が鳴りクラスの連中が1人また1人と席に戻っていく。流石に寝たままだとまずいので顔を上げた。顔を上げたその先で裕介と目が合った。暑いということを伝えたいのか、手を顔の前でパタパタさせる。さっき寝たフリで無視したことを怒ってはいないようだ。

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