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終わりと始まりのセレナーデ  作者: 伊能こし餡
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第1話.無気力人間

高校一年生の夏。人生で1番長い夏だった。


地球の約109倍の大きさがあるらしい。空に浮かぶ火の玉がジリジリと肌を焦がす。これほどまでに暑い夏は初めてかもしれない。


最近彼女の影響で占いにハマっているという、友人の祐介が僕の分まで占うと言っていたのがほんの10分前。どうやら占い結果が出たようだ。


「幸一はゴムだって!玉ねぎの人と結ばれるでしょう!」

「なんだよゴムって、卑猥かよ」

「違う違う、幸一はきっと縛っちゃうタイプなんだよ!」

「えー・・・・」


占いなんて結局は思い込みみたいなもんだろ、声には出さないが心の中でそう呟く。僕にとっては蓋をした箱の中で猫が生きているのかどうか並みにどうでもいい話題だった。


「幸一、なんか暗いな」

「僕はいつでもこうだよ」

「違う、暗くなったなって」

「・・・・そんなことない、寝る」

「あ、ああ、おやすみ」


祐介が言おうとしていることは分かる。自分でもそう思う。最近、特に辛いことがあったわけでもなくなんとなく億劫な日々が続く。


その気持ちを紐解いていくと、朝起き上がるのが辛いし朝食も食べたくない、学校に着けば2階の教室まで階段を上るのが面倒で、帰りのバスでは次降りますのボタンを誰かが代わりに押してほしいくらいだ。


そしてなんとなく、生きていることや息をすることさえも面倒くさい。


もし魂だけになった誰かが生身の体が欲しいと言ったら喜んで差し上げてもいい。とにかく全てが面倒くさい。


ワイドショーを盛り上げるための誇張された報道や、声優の名前ばかりが出て肝心の内容は出てこないゲームのCM、人権というものがありながらゲラゲラ人を笑い者にするバラエティ番組、同じようなフレーズの歌、歴史と同じことを繰り返すだけの世界情勢、内容がまったく頭に入ってこない数学の授業。


生きるのってなんでこんなに窮屈なんだろうか。


こんな世の中で「生きていればいいことある」「諦めないで生きろよ」なんて言葉が正しいなんて、どこか人を馬鹿にしているように感じる。


実際、僕は今すぐにでも生きることを辞めてもいい。もし書類にサインするだけで苦しまずに死ねるというのなら迷わずサインする。


いや、もしかしたらサインするのも面倒くさがってダラダラ息をするだけになるかもしれないな。


なんとなくダラダラ生きているだけの自分が容易に想像できて、少し声が漏れた。


「幸一、絶対寝たフリだろ」


裕介がなにかを言ったが、わざわざ顔を上げて返答するのも面倒くさかったので聞こえなかったフリをしてやり過ごした。

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