マロニエ
散歩をしていて
いつもと違う道を選んだ
5月の初旬
細い道の両側にサツキが咲いていた
知らない樹もあった
何本かあるうちの1本には
プレートで名前がつけられていた
”マロニエ”と
3月に行ってきた
美術展で観たゴッホの
「花咲くマロニエの枝」
花は落ち着いた白色で
先の方がオレンジがかったピンク色
”マロニエって、知らないわ。見たい。”
栃の木、日本にもあるんだと知った、散歩した夜
でも、私はこの目で見たことがない
ゴッホのマロニエの空は
独特のタッチで面白い
うず巻きのようにも見えるが
グルグルしてはいなくて
少し優しく画いたんだろうと思われる
マロニエの白を美しく浮かばせるように、と
ゴッホとは違う色をした
私の空とマロニエの葉っぱ
風が吹いたら
揺れてサワサワと音がしていただろう
初めて見るマロニエの樹と葉っぱは
柔らかい陽射しを受けて若々しい
蕾を探したけれど
わからなかった
まだ見ぬ私のマロニエは
もう咲いてることだろう
花は小さな蕾から
ポカッと割れて花が出てくる
大きくなることが
成長することが
怖いとは思わないのだろうか
子供が初めて靴を履いて外で歩く
まだほんの蕾の始まりの始まりの頃に
1歩、2歩で転んでしまう
それでも笑って立ち上がる
また転ぶだろうと恐れを知らないよう
けがをして泣いても
これが蕾の始まりだと主張するように
立ち上がる
転んで起き上がり
歩いて転んで
光に満ちた
青い空の下
何度も繰り返され
助けもしないのに
知らないうちに歩いてる
蕾がポカッと開いた瞬間
明日マロニエに会いにいこうか
私に何を語り掛けてくれるだろう
恐れを知らぬ子供の気持ちを教えて
アナタは花が咲く時、怖くなかったの?
知りたいわ
もしも強い陽射しであったなら
初めて見た時以上に
高い所の葉は光で白く輝いて
眩しすぎて目が痛くなるかもしれない
それでも私のマロニエを焼きつけさせて
額に手をかざして
見上げるから