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第四話 厄災の芽

「シリエの家は確か、そうここ」

 そこは、小さな家であった。木で造られており所々に修繕の跡が残っているが小綺麗な家であった。


「シリエ、居るか?」

 とんとんと扉を叩いてみるが返事も何もなかった。

「シリエ、入るよ」

 扉に手を掛けて開こうとするが開かなかった。鍵がかかっているのだろう。


「ユグ、お願い」

「うん」

 鍵穴に指で触れるとガチャっ、と音がして鍵が開いた。土で作成した鍵で開けたのだ。できる精霊はユグドラシル以外には居ないので、鍵の意味は十分にある。


 ほとんど何もなく、空き巣に荒らされた形跡もない。


「どうしたんだろう?ユグ」

「うーん、分かんない」

 あっけらかんと笑っている。


「帰ろうか。買い物してから」

「うん」

 丁寧に鍵を閉めてからシリエの家を後にした。


「明日もシリエを探そうか。さすがに心配」

「そうだね。そう言えばシリエちゃんって、まだ精霊と契約して無かったよね。なんで精霊魔導科に居るの?」

 ユグドラシルの言葉は最もだった。シリエ・オベームは契約精霊がいない。


 だが、彼女の血筋は獣型精霊によく好まれる。そのため、今は居なくも後々現れる可能性が高い。その為にこの科を取ったと彼女自身が話してくれた。


「ねぇ、獣人、うんん、シリエちゃんって空飛べるっけ?」

「シリエは兎系統だよ?そんな訳………あったな。どうして精霊化してる?」


 フワフワと浮いているシリエの姿があった。だが、周りの人間には見えてないようである。誰も空を見上げていない。


「ユグ、シリエを捕まえて。そして、家に一回戻るよ。買い物は明日やる」

「はぁーい。よっと」

 器用にユグドラシルがシリエを捕まえた。完全に意識を失っているのか脱力したままだった。




「悪いが記憶を覗かせて貰うよ。シリエ」

 帰ってきてから直ぐに、シリエをベッドに寝かせて額に手を置いた。


 記憶覗きの秘技、人間には扱えず精霊人、それもエルフと呼ばれる種族のみが使える秘技である。対象のその日の記憶を全て覗くという技である。


「うわぁ、大変な事が起こってる。ユグ、ティンを呼んできて。説明をする」

「はぁい」


※※※


某所


「なぁ、もうそろそろ捌いても良いと思うんだが?」

 暗くて何も見えない。ただ薄暗く、空気が湿りカビと鉄の臭い。ロクに何も食べるものを無く無情に足と腕に着いている枷が諦めろと嘲笑うように。


「あぁ、こんだけ人モドキが集まったんだ。だが、もう少しだけ待ってから売り捌くぞ」

「ヘイヘイ」


 彼女の名前は、シリエ・オベーム。足った一人でネノレルエ総合魔導学園での勉学とバイトに明け暮れる少女である。


 人モドキ、それは獣人、そして精霊人をさす蔑称である。

 人間絶対主義の人間が使う呼び方であり、今はあまり呼ばれることはない。


「助カリタイ?」

 耳元で聞こえる不快な声。ダミ声で聞き取りづらかった。


「己以外ノ、ココニ居ル魂ヲ犠牲ニシテデモ。ソレナラ方法ガアル」

 彼女は極限状態だった。他人に配慮することなどできなかった。ただ助かりたい、それだけが彼女の願いだった。


「助か……り…たい……で…す」

「ソウカ。ナラバ我と契約スルガ良イ。我ノ後二続イテコウ言エ」

 今はそのダミ声が甘美な囁きに聞こえた。だからこそ、なにも考えずにその言葉を口にしてしまった。


「我は、破壊……と死を……司…る神ド……ミネイ…グ…ル神…にその身を……捧げ…し者。今、我が願い…を叶える…ことを………代償に、この……身を明……け渡す」

 人は弱い。極限状態まで陥り助かりたいと藁をもすがる思いの人間なら特に。


 シリエの魂は肉体から弾き出されしまった。普通、魂を失った肉体は活動を停止する。

 しかし、破壊と死を司る神 ドミネイグルの魂が入っているシリエの肉体は魂の質に応じて身体を魂に最適な形に変えていく。

 肉を断ち、引き裂くような音がし始める。


「さて神々の遊戯(ゲーム)を始めようか」

 シリエではなく、そこには人ならざる者が立っていた。


※※※


「っと、これがシリエの記憶だった。恐らくドミネイグルが復活した。今の内に叩かないと100年前と同じ惨状になるね。ティンカーリュ、ユグドラシル。手伝っておくれ」


「もちろん!」

「マスターの意のままに」

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