第二話 錬金術
「ねぇ、エリ!ユグ、これ作りたい!」
どこから取ってきたのか錬金術の教本を持ってきたユグドラシル。
そこには、魔法媒体になる赤晶石の作り方が書いてあった。とても簡単な錬金術である。
「これ、どこから持ってきたの?」
「エリの部屋っ!」
勝手に入ったらしい。しかも、そこにあった本を盗ってきたらしい。
「うん、知ってる。いつも使ってるし」
エリミアナは週に二回、錬金術等の魔導学の講師をしている。それに使う教本が今ユグドラシルが持っているものである。
「ティン、錬金術するよ。来るなら私の部屋に来て」
契約者と契約精霊は魂で繋がっている。そのため契約精霊の真名を呼んでから声に魔力を乗せると対象の精霊に聞こえるのだ。
「エリミアナ、了解した。直ぐに向かう」
どこに居るのかは知らないが直ぐに戻ってくることだろう。
「さて、じゃぁやってみる?赤晶石の錬金」
「うん!」
「私もだっ」
ものすごくギリギリで追い付いてきた。息が荒いのは興奮しているからではなく焦って飛んできたからだと思いたい。
※※※
「まず、赤晶石は石英と紅焔華の花弁と聖水の三つが必要だ」
紅焔華の花弁とは火の精霊が多く住む火山の火口付近にのみ群生してい植物であり高濃度の火の魔力が花弁に蓄積されている。
「あ、変なところ触らないように。特にユグ」
沢山の薬品や媒体が所狭しと並べてある。
「もう、触らないよっ」
「了解だ。いや、ユグなら絶対にやらかす」
もうひどーい、と頬を膨らませているユグドラシル。
だがユグドラシルには前科がある。
料理を作った時に、甘い方がいいーって言って砂糖を大量に入れたのだ。しかも、汁物に。
結果ただひたすら甘くなった、それも飲めないほどに。ティンカーリュは気合いで全て飲み干した。それはもう頑張った。飲みきってからぐたぁっとしていたので余程無理したのだろう。エリミアナは飲めなかった。
ユグドラシルのみ、好んで食べていた。
「いいか、石臼でまず石英を砕けく。いいか、徹底的に粉末状にする。そして、聖水と紅焔華の花弁を混合させて少し置くと聖水が赤くなる。そうしたらその赤くなるからそれに少しずつ石英に混ぜていく。いい?少しずつ入れていくんだよ。とりあえず、ここまで説明しておく。わかった?」
紙に書きながら、二体に説明していく。赤晶石は少しずつ赤い聖水を入れていけば成功する、はずである。
「すごーい。エリが先生してるぅ」
「当たり前でしょ。一応、魔導学講師よ」
二体から褒められている。だが、何度も言うようにエリミアナは魔導学の講師である。
「すいませーん」
「ん?悪い。だれか来たみたいだ。ここまではやれるだろ?」
エリミアナは耳が良い。基本的に家の玄関先までは声は聞こえる。
「うんっ」
「こいつを見張っておく。安心しろ」
ティンカーリュがユグドラシルをちらりと見てからこっちを向いた。
「ははっ、そうだな。頼りにしてる、ティン」
「もう、ユグは問題を起こさないよっ」
そんなユグドラシルの声を背中に受けて玄関へ向かった。
※※※
「んしょ、んしょ。ふう」
石臼で石英を砕いる。割りとこの石臼が重いのだ。
「こっちは終わったぞ。砕き終わったか?」
ティンカーリュは紅焔華の花弁と聖水を混ぜ合わせ赤い聖水を作り終えユグドラシルに聞く。
「こっちも終わった!」
満面の笑みでそう返してくる。
「なら、混ぜてくれ。私には不向きだからな」
獣型の精霊であるためできないことが割りとあったりする。このような時はユグドラシルがその作業を代行する。
「うんっ!」
赤い聖水を全て石英に混ぜあわせる。
「おいっ、それって少しずつ入れるんじゃ」
「あっ、」
「あっ、じゃねぇっ。どうするんだよ」
「戻すっ」
石英と混ぜ合わせたものをまた赤い聖水が入ってたコップに戻そうとした時にエリミアナが帰って来た。
「戻ったきたよ。いやぁ、やっと修理に出していた魔弓 アルヴェが帰ったきたよ」
エリミアナの左手には魔弓が握られていた。これは、エリミアナの得物である。幾度となくエリミアナ達を救ってきた逸品。そして、思い出の品である。
「すまんっ。マスター。あいつを止められなかった」
「また、やらかしたのね。」
ため息をついてユグドラシルを見る。
「ごめんなさぁい………」
相当へこんでいるようだ。今度はしっかりしようとしていたのだろう。それなのに、この失敗。
「まぁ、今度は失敗しないように一緒にやろうか」
直ぐに失敗した赤晶石もどきを端に追いやって錬金術を再開し始めた。
ちなみに、今度は成功し高品質の赤晶石はユグドラシルの宝物となった。




