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第十三話 掃除と酒場

「家も買ったし、掃除するよ」

「はーい」

「やはり、綺麗にしなければな」

 エリミアナの掛け声と共に二体が返事をする。ちなみにレーゼは自分の泊まっている宿屋を伝えて帰っていた。なんでも、やらないといけないことがあるらしい。


「ティン、庭の草掃除をやってもらえる?」

「勿論だ、マスター」

 ティンカーリュの草掃除は斬新である。ある程度燃えないように障壁を張りその中に火を入れる。面白いように燃えていく草の灰を一ヶ所に集めてまた別の所に障壁を貼っていく。


 ちなみに、超高火力で焼き払うので一瞬である。煙も殆どでないので心配されることもない。


「ユグと私で部屋の中を片付けるよ」

「うんっ」

 部屋の中は、大量の埃で溢れていた。それはもう、大量の埃だった。


「埃臭~い」

「仕方ないでしょ。ほら、さっさとやるよ」

 口と鼻を布で覆って、水で濡らした布で部屋を隅から隅まで拭いていく。ユグドラシルも同じ要領で他の部屋を綺麗にしているところであろう。


 三部屋ある内の二部屋を綺麗にしてから中に荷物を入れていった。


「マスター、外の草を全て焼き払い終えました」

「お、おつかれ!ティン」

 左手で生成した純粋な魔力をティンカーリュに投げ渡す。


「あ、ずるーい。ユグもっ」

「はいはい、ほら」

 先程と同じように魔力をユグドラシルにも投げ渡す。それを両手で掴むで食べ始めた。


「やっぱり、エリの魔力は最高っ」

「それには同意するな」

 美味しそうに魔力を頬張っている。


「そう言ってもらえると嬉しいね」

 笑いながら、最後の片付けていない部屋を片付けに行った。


※※※


「ふぅ、終わった」

 とうに夕方になってしまったが、部屋を全て綺麗に掃除できたようだ。


「ねぇ、エリ。お腹すいた!」

 ぐぅぅぅ、と腹の虫も自己主張を始めている。精霊であるため、基本的に魔力のみで生活できる。


 なので食事というのは、嗜好品なのだ。精霊達にとっては。


「あ、そうだな。もう夜か。今日は早かったな。夕飯を食べに行くか」


「さんせーい」

 笑顔でユグドラシルが万歳した。






 家の近くを歩いてみると割りと色々な店があった。


 しかも、この家の近くに宿屋兼酒場の店があった。銀狼の宿屋という名前だった。


「いらっしゃいませ」

 銀色の狼耳の少女がこちらにやって来た。かなり美形である。


「おすすめを三人分で」

「わかりました。少々、お待ち下さい」

 ぱたぱたと厨房の奥へと消えていく。足取りはかなり危なっかしい。だが、そこが魅力なのだろう。

 しかし、店内にはまったく人がいなかった。


「誰もいないねー」

「たまたま、人がいないんでしょう」

 ユグドラシルの率直な意見に、うまーくはぐらかしておく。


「マスター、私はマスターのように普通に食べれないのですが」

 ティンカーリュは、人形の精霊ではない。強いて言えば竜の形をした精霊である。そのため、人と同じように料理を出されると食べられないのだ。


「忘れてた。ごめん。ティン」

 申し訳なさそうに、エリミアナが言う。次からは気を付けて欲しい、とだけ言って顔を背けた。





 だが、そんな心配は杞憂だった。

「お待たせしましたぁ。本日の料理です。うわぁっ」

 何に躓いたのか目の前で転けた。料理が全て床に叩きつけられる、前にティンカーリュの障壁で料理はなんとか助かった。


 本人は、思いっきり額から転けたが。


「大変だな。癒しを」

 短詠唱で回復魔法を少女にかける。真っ赤になっていた額は直ぐに元の肌色へと戻った。


「あ、あぁぁぁ、どうしようっ。また転けたっ。料理をまた無駄に…………してない?」

 浮いている料理を見て、不思議そうに頭を傾ける。


「頭を打って、幻覚が見えているのかな?あははは、料理が浮いて見える」

「しっかりしなさいっ。セミレネート。すいません。内のバカが」

 奥から現れてセミレネートの頭を軽く叩いたのはここの店主なんだろう。


「いや、いいですよ。慣れているので」

 そう、エリミアナ達もこの光景に慣れているのだ。だからこそ、咄嗟にティンカーリュが障壁を張れたのだ。


 転ける常習犯は、明後日の方向を向いて吹けない口笛を吹いていた。


「だってぇ、オゼさん」

「だってじゃないっ」


「まぁまぁ、食事は多い方が楽しいですし、どうですか。一緒に」

 エリミアナが笑顔で言う。


「いいんですか、ならお言葉にあま──」


「はぁ、作り直してくるからそれまでにそれの処理をしておくれよ」

「いや、いいですよ。せっかくですし。このまま頂きます」


 いつもこれよりも凄まじい惨状が広がっているので、という言葉を飲み込みながら言った。


「いや、さすがに悪いでしょう」

「その分、代金の方を、ね」

 小さくウインクすると、理解したように店主のオゼも笑った。


「はっはっは、そういうことか。なら良いいですよ。ほら、セミレネート」

「はいっ」


 丁寧に料理を皿に盛り付けてからセミレネートも座った。


「じゃぁ、食べよう」

「うんっ」

「これなら、私でも食べれるな」

「皆さん、すいません」

 エリミアナ、ユグドラシル、ティンカーリュ、セミレネートの順で喋りながら食べ始めた。

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