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第十話 旅路

 結論から言おう。レーゼはリュカーナがユグドラシルよりも弱かった。


「へへーん。ユグの勝ちっ」

「ぬぐぅ。悔しい。もう一戦」

 ユグドラシルとすっかり打ち解けて笑顔も見えるようになっていた。ちなみに、今から始めようとしているのが34戦目である。


「どうやら、リュカーナはお預けみたいだな。敵のお出ましだ。一時の方向、距離は直線にして100。数は10」

 レーゼがいきなりそう言った。だが、誰も本気にはしなかった。精霊でも無いのに、そこまで詳しい探知が出来るとは思っていないからだ。


「マスター、その者の言っていることは本当です。私も感知しました」

 だが本当だったらしい。どうやら、レーゼの素の探知範囲が桁違いに広いらしい。もはや人外の域である。


「盗賊でしょうか?珍しいですね。討伐できますか?」

 ヒルレが二人にそう言った。


「無用な殺生はしない。そう決めている」

「むこうに罪があるなら、制裁はするよ」

 問答無用に殺す、という訳ではないようだ。


 そして、しばらくすると10人の男が馬車を囲んだ。


「武器を捨て、登校せよ。貴様らに勝ち目はない。ここは、我らテペ盗賊団のナワバリだ」

 一人の男が、馬車に向かって叫ぶ。


「一つ問う。貴殿らは人を殺めたか?人の物を奪ったか?」

「無論っ!我らは盗賊。人を殺め、そして殺されることも覚悟しこの稼業をやっている。投降せよ。命だけは考えてやる」


「そうか。残念だ」

 返答は鋭い矢だった。リーダー格の男の頬を薄くカスって地面に深々と突き刺さる矢。矢を放つまでの動作が速すぎる。


「どちらが投降する方か分かってる?」

 男を睨みながらそう告げるエリミアナ。


「ちっ、お前ら、やってしまえっ」

「させないよ。ユグっ」

 高らかにユグドラシルの名前を告げる。そうして間の抜けた返事と共に黒鋼樹の剣を地面に突き刺す。

 一瞬遅れて、夥しい程の蔦が地面から伸びた。それは男達を拘束し動けなくした。


「さて、君達に選ばせてあげよう。一つ目、このまま死ぬか。二つ目、犯罪奴隷になるか。三つ目、形勢逆転して私たちを殺すか。まぁ、一つ目と三つ目はおすすめしないけどね」

 エリミアナの質問に全員がリーダー格の男の顔を見る。まるで、判断を委ねるかのように。


「ふんっ。奴隷になるなら、死んだ方がマシだ」

 意地なのか、そう叫び返してきた。そして、そんなリーダーをみて驚いているほかの団員達。


「そうか?死にたいか?ユグ、あれを」

「本当に使うの?あれ、ものすごく見るの嫌なんだよね」

 あれ、とはアイセルファーの花弁の毒を高温で熱するとある種の麻薬となるのだ。激しい頭痛と幻聴と幻覚が瞬時に見え始め依存性がものすごく高い。だが、これを作成できるのはティンカーリュだけである。


 小さなビンを投げて男の額にぶつけて割る。その中から真っ赤な粉末が舞いだした。


「げほっ、げほ。なんだこれ」

「ちょっと中毒性の高いオクスリさ。なぁに死にたいんだろ?」


「おいっ、来るなっ。来るなっ。あぁ、痒いっ。痒い痒い痒い痒い痒い痒い。あ゛あ゛、いだい」

 激しい幻痛に痒みや激痛や幻覚が襲いかかってきている。恐らく、言葉にできないほどの拷問を受けているような感じなのだろう。

 そんなリーダーの姿を見て、口々に奴隷に落ちるから助けてくれと懇願しだした。余程、このように死にたくは無いのだろう。


「さて、奴隷諸君は台車の上におとなしく座ってて貰えるかな?騒ぎだしたら分かってるよね?」

 エリミアナが立っているこの台車、じつはユグドラシルが即席で作ったものである。ほとんど耐久は無いものの、植物を操る能力を応用すればこのような芸当もできなくはないのだ。


 笑いながら、赤色の粉末が入ったビンを見せる。これで逃げる者などいないだろう。なにせ、台車の一番後ろで虚ろに笑っているリーダーがいるからだ。

 一応、ティンカーリュが回復魔法を掛けたので毒は完全に抜けている。だが、精神が傷ついたのだろう。


「ねぇ、エリ。ユグはそっちの馬車でリュカーナしてたい」

「この台車を直せるのはユグだけなんだから、あと少しの我慢。できるでしょ?」


「わかった。我慢する」



 こうして、ようやく。迷宮都市 テルテドールへと着いた。馬が良かったからなのか早朝に出て夜には着くことができた。

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