第十四話 不穏な雰囲気
今日は授業が始まる前に連絡があった。
チャールズ・ルイズは四か月の停学と反省文提出になったと先生が言った。
先生が意味ありげにイグナーツ君を見ていたのが気になったけど、四か月は会わなくて済むと思うと気が楽になった。
それからいつも通り授業が始まったが、学校の事務員が授業中に飛び込んできて先生に何かを耳打ちをしている。
先生の顔が強張っていく。
教室中がざわめく。イグナーツ君とエーミル君は静かに先生たちを見ていた。
事務員が教室を出ていき先生はいつも通り授業を始める。
だけど何が起きたのか知りたい生徒が先生に聞くが、今は授業中だと一蹴される。
僕たちは授業に集中できなかったが先生も授業に身が入っていない。
全員が集中できない授業が鐘の音で終わりを告げる。
「先生、いったい何が起きたんですか」
終わると同時にイグナーツ君が先生に聞いた。
失礼だけど、イグナーツ君も敬語を使うんだと驚いた。
先生は言うべきか悩んだ結果言う事にしたらしい。口を開く。
「この学校の周囲は全て一つの領地として帝国の皇帝陛下の所有となっている事はみんな知っているだろうが、西の隣の領地――ハインリフの村が一夜で三つ壊滅したらしい」
衝撃はすごかった。ハインリフに故郷がある生徒が青ざめる。
その村の名前は、自分の故郷は大丈夫なのか先生に詰め寄る生徒が続出する。
先生は詳細を確認するから続報が出るまで教室待機を僕たちに命じて出て行った。
教室のざわめきは止まらない。廊下も騒がしいから他のクラスも三つの村の壊滅が伝えられたのだろう。
その後、先生は帰ってこず事務員の人に寮に帰るように言われてみんな仕方がなく帰るしかなかった。
帰り道も不安で暗い顔をした生徒が多い。イグナーツ君とエーミル君は何か考えているようで、いつも何かしゃべりながら帰るのにこの日は静かに寮へ歩いて行く。
次の日、さらにいくつかの町も無くなったという続報が届いて一人の生徒が泣き崩れた。その中に故郷があったのだろう。暗い雰囲気が学校中を覆った。
その日の午後に事態を重くみた皇帝陛下が帝国軍を投入するという情報に誰もが安心した。これで犯人がいまだにわからないこの怪事件は解決するだろうと。
しかし、その次の日に一個師団が崩壊したという情報に絶望が学校を覆う。
帝国軍は数十人の死者と多くの怪我人が出たが、犯人の情報を持ち帰った。
敵は夜に現れるという事、とてつもなく巨大なドラゴンとの事だった。
「この学校にも来るに違いない!俺は故郷に帰るぞ!」
そう言い出す生徒が後を絶たず、希望者のみ帰郷を認める事になった。
僕はどうするか迷った。
イグナーツ君とエーミル君は帰らないらしい。
悩んだけど僕も残る事を選んだ。