第十一話 試合の結末
僕がエンゲに気を取られていたらチャールズに体当たりをされ倒れる。
倒れた僕に向かって火の玉を至近距離で撃たれる。
衝撃にうめく僕を笑いながら何発も撃ち込む。
「チャールズ・ルイズ!今すぐ止めないと退学の可能性がある。止めるんだ」
先生がどなる。
するとチャールズが止まった。
「ああ、おまえにはあの召喚獣を痛めつける方がいいか」
僕にだけ聞こえる声で彼は言った。
「チャールズやめろ!」
僕は叫ぶ。
「おまえごときが僕の名を口にするな!」
火の玉をぶつけられる。防護魔法にひびが入った。
先生が近づいてきている。
「ディスニウス!わかっているな」
ディスニウスが一鳴きすると、エンゲをはさんでいるくちばしに力を加える。
エンゲが悲鳴をあげる。
「Fangen。忠告はした。どうなるかは上次第だが退学になるだろう」
先生が使うと光でできた鎖がきつくチャールズとディスニウスを縛り倒れる。
魔法は使用者の熟練度でその威力が変わる。僕と先生の力量差が目に見えてわかる。
しかし、ディスニウスはそれでもエンゲを痛めつけようとくちばしに力を加え続ける。
僕はディスニウスに走りエンゲから引き離そうとくちばしに手を入れこじ開けようとする。
こんな時、身体能力を上げる強化魔法か相手の力を下げる弱化魔法が使えたらいいのだけどまだ習っていない。
イグナーツ君とエーミル君が駆け寄ってきた。
「Schwach Geben」
エーミル君が何かの魔法を唱えた。
「よし、引きはがすぞ!」
イグナーツ君に声をかけられて再び力を入れる。するとさっきよりディスニウスの力が弱い。もしかして弱化魔法をエーミル君が使ったのだろうか。
三人がかりでようやくエンゲを救出できた。
エンゲはあちこちが傷つきくちばしの痕が特にひどい。
「ごめんねエンゲ。また傷ついてしまったね。守れなくてごめん」
エンゲに謝るとエンゲは弱々しく体を横に振る。
その後チャールズ・ルイズの処理で模擬戦は中止になった。
学校の議会に書類送検されるらしく、先生が言うには退学が濃厚らしい。
エンゲはというと治療のために送還することになった。
送還とは召喚獣を元いた場所に帰す事だ。どこに帰るのかはわからないが帰すと治りが早い事がわかっている。
いつ戻ってこられるかは傷の程度次第だけど今回のエンゲの場合は一日程度だろうと医務室の先生に言われた。
エンゲは小さいからすぐに送還の魔法陣の準備ができた。
「早く元気になって帰ってきて欲しいけど、完治するまでゆっくりしておいで」
魔法陣を発動させるとエンゲはにっこり笑って行ってしまった。
一日だけだとわかっているけど胸にぽっかり穴があいてしまったような喪失感があり寂しい。
召喚獣が戻ってこられるようになると自然とわかるらしい。どうわかるのかはわからないけれどその時を待とう。