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Chapter 50 響生

 

「仕方無かったんだ…… こうするしか…… 仕方なかったんです」


 震える声でようやく紡ぎ出された言葉に思わず絶句すると同時に、強い怒りがこみあげてくる。


 それだけを言い再び項垂れてしまった男。その態度に我慢の限界を感じた刹那、視界に走った警告。本能的にそれが示す頭上を見上げると、装甲ジャケットの腕と胴体を繋ぐ半透明の膜を広げたアーシャが、滑空体制を解き、着地を行おうとしていた。


 今更ながらに彼女の識別が『捕獲対象』であることを思い出す。


 形成された膜が、淡い光を発しながら消失して行く様は何処か超自然的で幻想的に見える。


 揚力を失った身体が実にしなやか動きで地上へと降り立った。それは僅かな土埃すら立てず、殆ど無音と言って良いかもしれない。


 戦闘支援システム無しの状態で、背後に着地されたら自分は彼女に気付く事が出来ただろうか?


 そこまで、考えて背筋に冷たい感覚が走り抜けた。


――ターゲットが!――


 途端、頭に響き渡った飯島の絶叫。


――彼女を解放したのは俺だ。心配するな、彼女は敵じゃない。逃げる気も無いらしい――

――ちょっ! それを信用すんの!? 今の動き見たでしょ? 彼女は暗殺者としての訓練を受けてるよ多分――


 ボロボロになってしまったローブを脱ぎ捨てたことで、皮膚に張り付くようなデザインの可動式装甲ジャケットが、余すことなく彼女の身体のラインを浮き上がらせていた。


 女性らしさを残しながらも鍛え上げられ、無駄の一切を省いたそれは、さながら彫刻の如き優美さを誇る。それだけに様々な暗具が仕込まれた漆黒の人工筋肉に身を包む彼女は、洗練された戦闘マシーンのような強烈な印象を放っていた。


――だろうな。おまけに彼女の装備品には、此方のシステムに干渉して『認識そのもの』を狂わせる機構が備わってる。それが散々痕跡を残していながらも、今まで彼女を捕らえることが出来なかった理由だ――

――なら、何でそんな楽観的に構えてられるのさ!? あ、ひょっとして彼女と繋がったりしたんじゃ……――


 飯島は裏返った声を、言葉の最後でやけに低く落とした。


――ああ、有線でな――


 そう答えた瞬間、飯島である小さなサソリは、両腕のハサミを驚いたように大げさに持ち上げた。


――冗談のつもりだったのに、まさか本当にやってたの!!?? ひょっとしてネットワーク切ってたのってそれが理由!?――


 明らかに怒りを含んだ飯島の声。だが、その理由が分からない。


――仕方ないだろ…… そう言う要求だったんだから。あの場はああするしかなかった――

――何て奴だ!! 何で響生ばっかりいつも…… しかも美女ばっかり…… ずるい! こんなのあんまりだ! アイちゃんに言いつけてやる!――


 感情が高ぶり過ぎたせいか、不明瞭に裏返った声の思考伝達に思わず顔をしかめる。


――はぁ? なんかお前、勘違いしてないか?――


 言いながらも頭に浮かんでしまったアイの顔。満面の笑みを浮かべながらも目だけは笑っていないその表情に思わず身体を震わせる。


 飯島の勘違いをここで何としても解いておかなければならない気がした。そのための言い訳を追加伝達しようとした刹那、他者によって割り込まれた思考伝達。


――ちょっと、会話がまる聞こえなんだけど? まぁ、あらかた間違ってなくってよ。でしょう? 響生――


 まるで睨むかの如き鋭い視線をこちらに向けたアーシャ。それに得体の知れない恐怖を感じ再び身体を震わせる。


――はい!?――


 思考伝達に乗る自身の声が裏返った事を知り、それに更に動揺してしまう。


――『はい!?』じゃなくってよ。それと『アイちゃん』って誰なのか後でちゃんと説明なさい!――


 その言葉の意味が分からず唯々、目を見開く。


――あのねぇ、貴方の人間関係について知る権利くらい私にあっても良いと思うんだけど?――


 アーシャの言っていることが全く分からない。


――それはどういう……?――


 途端にアーシャの視線が鋭さを増した。


――責任、取ってくれるんでしょう? それとも、私は連行されたら一生牢獄だから関係ないとでも踏んでるの?――


 その言葉に大きく揺さぶられた感情。それだけはあってはならないと強く感じる。


――君をそんな目には遭わせない! 絶対にな。俺は自らの意思でフロンティアに身を置いている。だからその責任は果たす――


 思わず感情がそのまま乗ってしまった思考伝達。アーシャが驚いたように僅かに目を見開いた。それが複雑な感情を宿して細められながら、此方から逸らされる。


――そう…… なら良くってよ……――


 最後に頭に響いた彼女の声は、やけに小さなものだった。


 目の前では小さなサソリがこちらを暫く見つめた後、やけに大げさな仕草で首を大きく横に振る。全く意味が分からない。思わず「なんだよ?」と飯島に喰ってかかろうとした所で、 


「――で、彼が『あれ』のランナーなの?」


 とアーシャの肉声が聞こえたことで、その機会は失われてしまう。


「ああ……」


 項垂れる男を見下ろし、静かに頷いたヒロ。 


「情報を聞き出すなら早くなさい。ここに居ては、またいつ新手が襲ってくるとも限らない」


 彼女特有の上から目線の言葉を受けて、ヒロの表情が明らかな苛立ちを浮かべた。


「なんだ偉そうに。お前ぇは俺と同じようにお尋ね者じゃなかったか? てか、ここまで捕虜を自由にさせとくって、何なんだろうな? まぁ、俺は一度正式に釈放されてっけど」


 アーシャの瞳が威圧を放ち細められる。


「あら、喧嘩を売ってるの?」


 ヒロの感情を逆なでする言動に思わず手に汗を握るが、彼はアーシャを睨みつけるに留まった。それにほっと胸を撫で下ろす。ヒロの視線が男へと戻された。


「恐らく新手は来ねぇ」


 その意外な言葉にアーシャのみならず、自分までも目を見開く。


「何故そう思うの?」

「ここに常駐している軍が、どういう訳かこの件に対する不干渉を決め込んでるみてぇだ。だから、こいつは自分で『あれ』を駆るしかなかった」

「どういう事? て言うか、何故貴方がそんな事を知ってるのよ?」


 静かに瞳を閉じたヒロ。


「俺の中に流れ込んで来たこいつの記憶だ。軍が不干渉を決め込んだ理由は分からねぇ。俺には死霊共の事情は分からねぇからな」


 再び開かれたヒロの視線がこちらへと向けられる。


「確かにあり得なくはない…… 中立エリアに常駐していても、指揮系統はエリアに属している訳じゃない。ベルイードが言っていた通り、軍は小さな地方エリアでもその政治に介入する権限は無い。けど、同時に軍も地方議会の決定に従う必要もない。飽くまで地方の依頼を受けた中央の判断と命令によってのみ動く。現状、中央『月詠』との連絡手段の全てが絶たれてるから……」


 言いながら、ベルイードの卑屈な笑みを浮かべた顔が脳裏に蘇り、思わず顔をしかめる。だが、現状、彼の言ったその事実が彼自身を追い詰めているのだ。


「それだけじゃないだろうね。緊急事態となれば各エリアの軍は、独自の判断で動くよ。だけど、その問題の渦中に、中央の直轄命令で派遣されて来てる俺っち達がいるんだから、事態が複雑化してて、判断できないのかも」


 飯島の補足説明に大して興味がなさそうに瞳を男に戻したヒロ。


「――ってことらしい。

 俺の中に流れ込んで来たこいつの記憶だけどよ…… こいつの頭の中は、悲惨な記憶で埋め尽くされてる。生い立ちから今にいたるまで全部な。現実世界での記憶なんて一つもねぇのに『現実世界に生を受けた』その事実がずっとこいつを苦しめてきたんだ」


 その言葉に男の身体の震えが目に見えて大きくなる。さらに声量を増して漏れ始める嗚咽。


 アーシャが目をひと際大きく見開いた。


「それじゃ、彼は……」

「戦争孤児だ。それも物心着く前に、お前ぇ等の世界に連れて来られてる。最初は保護施設。で、次はお前等が『純潔派』って呼ぶ心ねぇ奴の一人に引き取られた。

 その後は酷でぇもんだ。食い物も水すらも必要なく生きて行けるってのは、怖ぇくれぇ残酷なもんだな。恐らくこいつを引き取った奴は初なからこいつを人間扱いする気なんてなかったんだろう。自身の中に溜まった下らねぇ鬱憤を日常的に晴らすためだけに引き取ったんだろうよ」


 ヒロの声は語られる内容の悲惨さとは裏腹に、淡々としたものだ。それとは対照的にアーシャが眉間に深い皺を刻み、何かに耐えるように瞳を閉じる。フロンティアに渡ってからの彼女の中にも似たような記憶があるのかもしれない。


「――結局こいつは周りの人間に奴隷のように従うことで自分の身を守ってきたんだ。常に他者を殺すことで自分を守ってきた俺とはある意味、対照的だ。

 だから、分からなくもねぇ。まぁ、俺はこいつと違って自分が今までやってきた事を悔いちゃいねぇがな。

 こいつのおかげで、お前ぇ等の世界がどんなものか、大分解かってきた。俺等より遥かに進んだ技術を手にして、どんな大層な社会を築いてるのかと思えば、こっち側と大して変わらねぇじゃねぇか。拍子抜けだ、タクッ!」


 言葉の最後で声を荒らげたヒロ。それがまるで自分が批判されたかの如く心を抉る。


「ヒロ……」


 男を見下ろしたまま耐えるように瞳を閉じたヒロ。握りしめられた拳が小刻みに震えていた。


「……俺の大事な連れがよ。そっち側に渡ったんだ。あいつはお前等の言葉で言う『流入者』になった。こっち側で散々な目に遭ってきたってのに、あいつはこれからも散々苦労するんだろうな……」


 そこで言葉を区切ったヒロが、強い感情を宿した瞳を再び開く。


「――けどよ、断言する。あいつはこいつの様に腐ったりしねぇ!」


 男が身体をビクリと震わせ、驚いたように顔を上げた。


「自分ばかりが不幸だなんて思うなよ? あ? お前等が荒野に変えた世界で、俺等がどうやって生きてると思う? 文字通り泥水啜って生きてんだ。生きる為なら他人の命すら奪う事を躊躇しねぇ地獄だ! 今までマジでうんざりするぐらい殺されかけたし、殺してきた」


 ヒロが感情に任せて男の胸倉を掴み上げようと伸ばした手が、実体のない身体を突き抜け空を掴む。


 行き場のなくなった怒りが、やるせなさに変わったかのようにヒロの伸ばされた腕がだらりと落ちた。男から逸らされる視線。


「――だから、お前ぇが生きる為に取った選択にとやかく言うつもりはねぇよ。お前は『仕方が無かった』と言ったな? 確かにそうだろう。俺も『仕方ねぇ』で殺しまくって来たからよ、解らなくねぇ。だがよ……」


 ヒロの逸らされた視線が、再び強い光を宿して男を見下ろす。 


「――その結果からは目を背けんじゃねぇ! その目を見開いてこの光景をよく見ろ! あのダイブ施設だってそうだ! 何人死んだ!? あ? このままあのクソみてぇな代表を放っておけばまだ続くぞ!? 

 それを『仕方ねぇ』ってお前ぇの本心で思ってるなら話は簡単だ。俺等はお前を『仕方ねぇ』から殺すだけだ。けど、そうじゃねぇから出てきたんだろうが。あ? 言い訳するために出てきたんじゃねぇだろ!?」


 男はただでさえ涙で濡れた顔を、くしゃくしゃに歪ませた。


「私は…… 私は!」


  2 エクスガーデン 特別閉鎖領域 ベルイード


「な、何なんだ! これは!?」


 ベルイードは目の前に開いたウィンドウを血走った目で食い入るように見つめ、声を荒らげた。


 其処に映し出されているのは、つい先ほどまでこの部屋にいた部下であったはずの男だ。その彼が涙で濡れた顔を見苦しいまでに歪め、ウィンドウに映し出されている。


 彼には軍を動かし、ネメシスをネットワーク隔離地区に導入するように命令したはずだった。それが何故、彼自身がネットワーク隔離地区で素顔を晒しているのか。


『私が…… ベルイード様が代表として就任して以来、私がこの七年やってきた事は――』


 ウィンドウから聞こえて来た嗚咽交じりの声。それが語ろうとしていることに、背筋が震えるほどの戦慄を覚える。


「直ぐに止めさせろ!」


 夥しい量の唾液をまき散らし、そう叫んだベルイードであったが、返って来たのは冷たい程に落ち着き払った声だった。


「それは不可能かと」

「不可能だと!?」


 返事をした部下に詰め寄り、更に大声を上げたベルイード。顔に大量唾液を浴びせられた部下の女は、顔にあからさまな不快の表情を浮かべた。


「これは、記録された映像です。既に凄まじい勢いで本サーバー内に拡散されています」


 その言葉にベルイードの顔から眼に見えて血の気が引けていく。


「なっ!? あいつは…… あいつは何を喋った!?」

「全てです」


 短く冷ややか声でそう言った女の瞳には明らかな侮蔑が宿る。


「お前は馬鹿なのか!? それで分かるはずがなかろうが!?」


 更に声を張り上げたベルイードに、女が溜息を吐き口を開く。


「ネットワーク隔離地区の件及び、先の事件を含め過去に3度起きたダイブ施設の爆破テロの真相。

 貴方が爆破テロで、移住希望者の中に体内に生体反応爆弾を宿す者がいると知りながら、あえて受け入れ、サーバーに一番近いダイブ装置に誘導した事、それによって議会と世論を操って来た事。

 前代表、飯島氏の失脚における――」

「もういい!!」


 ベルイードが女の言葉を遮った。


「まだ、ありますが」


 露骨に反抗的な態度でそう言った女の首元を、鷲掴みにするかの如く押さえつけたベルイード。だが、それでも女はベルイードを蔑むかの如く冷ややか視線を向けていた。


「なんでもいい! あれを止めろ! 止めるんだ!!」


 汗でべったりと濡れた額を、女の顔に擦り付けるかの如き距離まで近づけ、耳元で張り上げた大声。女の表情がここにきて明らかな苦痛を浮かべた。


「――ですから」


 喉元を押さえつけられた女から、掠れた声が漏れる。


「『ですから』じゃない!! 聞こえなかったのか!? これでも聞こえないのか!? えぇ!? 私はあれを何とかしろと言ったんだ! 『はい』以外の言葉はいらない! いらないんだ! 分かったか! ええ? 分かったのか!?」


 ベルイードが女の鷲掴みにした首を前後に乱暴に振り回し、更に耳に口を押し付けるようにして、大声で喚き散らす。限界まで見開かれた女の瞳。だが、それは急激に光を失っていく。


 それでも、ベルイードは女の耳元に向かって喚き続けた。やがて女から一切の反応がなくなった事に気付き、喉元を掴み上げていた手が離される。その瞬間、女が糸が切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。


 再現された苦痛に耐えきれず意識を失ってしまった女を血走った目で見下ろし、ベルイードはひたすらに荒い呼吸を繰り返した。


 これではこの女は役に立たない。


 全てがうまく行っていたはずだった。何もかもがうまく行っていたのだ。


――それが、何故こんな事になった!? 何故!? 何故なんだ!?――


「何故だぁぁぁぁぁ!!?」


 言葉を聞く者がいなくなった閉鎖領域に響き渡る叫び声。


 開いたままのウィンドウからは、未だに部下であった男の、不快極まりない震えた声が流れ続けている。


 ベルイードはそれを血走った目で睨むと、手近に在った花瓶を投げつけた。実体の無いウィンドウを突き抜けたそれが、デスクに当たり耳障りな音と共に弾け飛ぶ。


――こんな事で、この私が終わるはずがない! 終わっていいはずがない!――


 混乱した思考を必死で巡らし、策を練ろうと試みる。だが、考えれば考えるほどに絶望的なまでの結論しか出てこない。それでも、思考をめぐらせ続けようとした頭の中に、唐突に響き渡った声。それに血走った目を見開く。


――どうやら勝負は決したようだね。思ったよりあっけない。うん、あっけなかった。僕は利己的な人間が嫌いではないのだがね。君の野心は余りに小さくつまらない。うん、つまらないんだ。だから、この辺が限界なんだろうね――


 隔離空間であるはずの閉鎖領域で、思考伝達を受けた事実が、ただでさえ混乱した思考を更に酩酊させる。


「誰だ!?」


 叫ぶが如く肉声で上がった疑問。頭の中にそれを嘲笑するかのような、不快極まり無い笑い声が反響する。


――僕を知らないのかい? いや、そんなはずは無いんだ。うん、無いはずだ。僕を探すように君は軍から要請を受けたはずだからね――


「ま、まさか…… いや、そんなはずは……」


 愕然と崩れ落ちるベルイード。


――本サーバーに部外者が入れるわけがない…… かね? でも僕はここにいる。うん、いるんだよ。

 ここは居心地が良かった。うん、本当に居心地がいい。

 君がアクセス者達を排除したおかげで、此処は他の中立エリアと比べて現実世界側からのチェックがずさんだ。しかも直轄エリアのような相互多重セキュリティ機構がとられていない。まさかこんなエリアが存在するとは、僕にとっては幸運以外の何物でもなかったよ。うん、間違いない。おかげで僕は君たちの世界の仕組みを色々と知ることが出来たし、セキュリティが強化された別のサーバーへのアクセス方法も確立した――


 ただでさえ、青ざめたベルイードの顔から更に血の気が引けていく。


「馬鹿な……」


――それにね。ここのプラントで色々な物を作らせてもらった。うん、僕は必要な物の全てをここで得ることが出来たんだ。何せ、現実世界側を監視する機構の全てがネットワークに繋がれている。この危うさが君に理解できるかな? 出来ないだろうね――


――こいつは何を言っている!?――


 声の主はここで何をしたのか。


 再び頭の中で響き渡る不快な笑い声。


――ああ、露骨に分かって無いんだね。うん、分かってない。君にそれを警告した者もいたはずだけどね。馬鹿だね。うん、本当に呆れるくらいに馬鹿だ。

 君は危ういよ。うん、本当に危うい。君達が見る世界は『現実世界』だろうが『仮想世界』だろうが、全く同様に処理されてた映像を見ているに過ぎない。なら、君達が『現実世界』として認識している映像は、果たして本当に現実世界なのか。そんな事を考えたことは無いかな? 無いんだろうね――


「お前は何を言っている!?」


――ああ、これでも分からないんだね。呆れるね。うん、呆れすぎてこの僕が黙ってしまいそうだよ。

 でも、まぁいい。僕は君のおかげで、色々手に入れられたからね。僕の言う通りに動いてくれたら、此処で起きたことの全てを僕が隠蔽してあげよう。うん、してあげてもいい。

 何より僕にはもう一つどうしても欲しいものがあるからね。うん、あるんだ。

 僕はこのエクスガーデンそのものが欲しい。ここに住む大量のサンプルを含めた全てね。あぁ、でも君だけは逃がしてあげようじゃないか。君への興味は既に尽きているしね。うん、尽きてるんだ。

 悪い話じゃないだろう? うん、無いはずだ。勿論協力してくれるよね?――

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