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57話

時間が開いてしまいました。すみません。

よろしくお願いします。

美羅依は考えの全く違う者の意見というものを聞いてみようと思った。どうして近しい世界がいがみ合わなければならなかったのかが知りたかった。

「お前が神だとしたら、お前そのものを俺のものにする。この世界も天界も魔王の支配する世界も俺が支配してやるのだ」

カグエリルは恍惚とした表情で美羅依を見下ろした。負けることなど考えもしていない。考えているのは自らを頂点とした世界のみ。

「まあ、壮大な夢よね。でも、叶えてあげる気も叶えさせる気も全くないけれど。一つ言っておくけれど、まだ魔王の方がましな考えを持っているわよ。彼は純粋にこの人界を手に入れて自らにないものを見つけようとしていた。あなたのような野蛮な欲望だけを語ったりしなかったわ」

創造主はなんて危険な思考の持ち主を創ろうとしたのか。

美羅依はため息しか出てこなかった。

「野蛮とは心外だな。崇高な考えと言ってほしいものだよ。すべての世界を手に入れて、自分の配下に置くのは気持ちのいいものではないか」

カグエリルはそう言いながら黒い塊を作り上げていた。ここにいる人も魔族も関係なく殺そうとしているのは明白だった。

「それをここで発動させれば、あなたの配下になるものも、今の配下も皆殺しだわね」

美羅依は両手を黒い塊へ向け、光の糸の束を無数に創り上げ、黒い塊を壊す気でいた。

「配下とは作るものだよ。そして、使い捨てにする物のはずだ。駒は掃いて捨てるものだからな」

カグエリルは高笑いしながら未来の放つ光の糸を(ことごと)く切り捨てた。

「…厄介な」

美羅依は内心舌打ちした。魔王もなんてやつをこちらに送り付けたのやら。厄介でどうしようもない。ここが片付かなければ、彼女を救うことなんてできやしないではないか。

「では、この辺で神には退場してもらおうではないか。私の伴侶として息があればまあ良いとしようではないか」

カグエリルは楽しそうに言った。自分が敗北するなど考えていない。美羅依の能力が本来の半分以下しかないことは明白だった。

「誰がお前なんかの伴侶になるものか。そして、この世界も天界もお前のような奴に支配されてなるものか」

美羅依はありったけの能力を両手に込めた。

「その意見には大いに賛成だな。大体、こいつは俺のものだからな」

美羅依の背後からその声は聞こえてきた。今は魔族を相手に別の場所で戦っているはずではなかったか。

「…えっ、柚耶?」

美羅依は振り向いて声の主を見て驚いた。まさか、今まさにここにいるとは思わなかった。

「美羅依、遅くなったわね」

気の遠くなる日々を共に過ごしてきた仲間が周りに来ていた。

「魔族は大丈夫。ほとんど雑魚だから、皆が協力してくれて戦ってくれているよ」

彰人が指さす方では人々が必死で戦っていた。

「ここを早く片付けないと、皆が大変になるからね」

美月が美羅依の肩を叩いた。

能力(ちから)が足りないなら私たちが貸せばいいだろう?」

桔梗が何を当たり前のことをと言った。

「魔王を退け続けた俺たちがこんな雑魚相手に苦戦するなんてあってはいけないよな」

(まさ)(あき)はそういうと右手を美羅依の肩に置いた。

「この世界は魔族のものでも誰のものでもない。俺達、この世界に住む者のものなんだ」

柚耶は美羅依の右手をとって、強く握りしめた。

初めて人として転生した時の事を思い出す。もう、魔王にこの世界を支配されてしまうのではないかと言う絶望に支配されそうになったとき、やはり玻璃は瑠璃の手を握っていた。そこから伝わる絶望にあらがおうとする強い心を今でもはっきりと思い出せる。


『命はここで終わるかもしれないけれど、魂は決して終わらない。この世界を守りたい者達がまた魔王を倒してくれるだろう。だから、今はできることをやればいいんだ』


何時かの時に言われた言葉は忘れていない。転生を繰り返すことを知らなかった自分たちが次の世代に引き継ごうと思っていた言葉は今までのこの世界の者達が体現してくれていた。

「私たちは決してお前を許さない。この世界に厄災をもたらすものを排除する」

ありがとうございます。

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