55話
お久しぶりの更新です。
よろしくお願いします
美奈が不思議に思って聞いたときにわかったことだが、本当に魔王の言葉は世界中に響いているとのことだった。
「そなたのいた世界よりは小さな世界だ。響かせるのは容易なことだよ」
と魔王は何でもない事のように教えていた。まあ、余談である。
その時にザッと魔族たちが一度直立不動になり、一様に平伏した。
「我らは魔王様の僕。遅れましたこと、平にご容赦ください」
そう言って先頭で魔王に平伏したのはいつも傍らで魔王に仕えていたリスキートだった。
「構わぬ。それで、どうだった?」
魔王の言葉にリスキートは一度顔を上げて、口端を少し持ち上げた。
「カリス将軍は落ちました。謀反者はもうすぐ消滅いたしましょう。最後までは見ておりませぬが、相手は神の御使いのあの者達です。仕留め損なうことなどありますまい」
リスキートは楽しそうに告げた。
「そなたも適当だなぁ」
魔王は特に気にした風もなく、少し呆れたように言うだけだった。
「魔王様ほどではありませぬよ。これでも急いでご報告に参ったのです。老骨に鞭打つのはこれきりにさせていただきたいものですな」
リスキートは肩を回しながら困ったように苦笑して魔王を見上げていた。魔王の言葉が本当に嬉しそうだった。
「魔族の者共よ。そなた達も我に従うならば、能力に応じて役を与える。今までできなかった改革をしようぞ」
魔王はそういうと美奈を抱いたまま、沙久羅達を見下ろした。
「もう少しだけ待っておれ。あちらの決着が付けば帰してやれる。美奈は帰してやれんがな」
魔王は沙久羅に囁くように言った。
「美奈はここにいたいと言うでしょう。理由は貴方が直接聞いてください」
沙久羅は満面の笑みで魔王を見上げて告げた。もう十分だった。親友に会えただけでも嬉しかったのだ。それが今は自分の進む道を見つけて歩もうとしている。
こちらの世界に来て調べて分かったことだが、自分たちの世界に戻ったとしてももう死んだ人間である。矛盾が生じてしまう。それによる世界の排除がないとも限らないのだ。そうなれば、美奈は消滅してしまう。それだけはしたくなかった。それに美奈はこの世界に自分の居場所を見つけていたのだ。無理やり連れて帰ることはする必要もない。
美奈はかなり拒否すると思うし。
心の中で呟いて、沙久羅は笑顔で魔王を見上げるだけにした。これは自分が話して良いことではないし、美奈と魔王の問題である。他人が口を挟んで良いはずはない。
そう結論づけて、自分に納得させた。別れは寂しいけれど、今は彼女の幸せを願える。
「沙久羅」
耀が心配そうな声で沙久羅の名を呼んだ。
「うん、大丈夫。納得はできているの」
沙久羅は耀に呼ばれて振り向かずにできるだけ明るく答えた。声が少し震えているのは愛嬌だ。今振り向いたらきっと情けない顔を彼に向けてしまう。それだけはなんだか負けたようで悔しかったから、振り向かずに彼に背を向けた。
「そうか」
耀はただ、そう答えただけだったが、沙久羅はそれが嬉しかった。だから泣かずにいられた。
「もうすぐ帰れるね」
沙久羅は耀を振り向き、笑顔で言った。
ありがとうございました。




