表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/61

17話

よろしくお願いします

沙久羅が復帰したのは一週間がたったころだった。沙久羅達が復帰するまで事件の方は全くと言って良いほど進展がなかった。

「ここみたいね」

 沙久羅が地図の載っている端末を見ながら言った。

「そう言えば、現場を見るのは良いとして、どうしてここなんだ?」

 耀が不思議そうに聞いた。初めに沙久羅達が訪れたのは事件の現場。そこには証拠らしきものは全く残ってなかった。

 そして、次に向かったのが今いる沙久羅達が居る場所、事件現場から少し離れた空き地。

「…だって、ここからあそこが見えるでしょ?」

 沙久羅が指差したのは事件の現場となったアパートの一室のベランダの窓だった。

「ここになら、ずっと居られるし、あちらからは死角になる」

 空き地と言っても木が生い茂り、草も生え、ちょっとした林のような場所だった。土地も広めで隠れようと思えば隠れられそうな場所だった。

「ここが中心かな」

 沙久羅はほぼ中心の位置に立ち、小さな水晶の玉を落とした。一瞬チカリと光る。

「じゃ、帰りましょ?」

 沙久羅はそう言うと歩き出した。

 耀は何が起きているのかわからなかった。

「だいたい、あんなところにずっといたくないし、居ても現れないからね。だったら、相手に気づかれないように監視をしてればいいのよ」

 沙久羅はそう言うと耀のマンションに帰ったのだった。


 耀の掌に小さな光が浮かび上がる。

「……それが光の魔術。一番初歩の初歩だよ」

 沙久羅がそれを見ながら教えていた。

「そうね、やっぱり筋が良いみたい。この調子なら覚えるのは早いかな」

 沙久羅はうんうんと頷きながら言った。

「なぁ、これ、いつまで続けてればいいんだ?」

 飽きたのか耀がつまらなさそうに聞いた。

「持続性もあるみたいだし、これはすこし飛ばしても大丈夫かな」

 沙久羅が耀の作りだした光の球に人差指で触れるとぱんっと微かな音を出して破裂して消えた。

「じゃ、リクエストにお答えして、少し高等魔術だよ。私の詠唱の後に続いてね」

 沙久羅が瞼を閉じて呪文の詠唱に入った。

「ユリスファー・オクト・クリスト……エクリスト」

 初歩の詠唱よりさすがに長い詠唱が使われていた。耀は掌に凄まじい力が集まっていくのを感じた。

「へえ、やっぱり筋が良いね。これが光の高等魔術。太陽の光とまではいかないけれど明るい光でしょ?」

 沙久羅は部屋が昼間よりも明るくなっているのを確認して言った。

「これ、凄く疲れる」

 耀は維持するのがやっとのような口調で言った。

「そりゃそうでしょ?言ったじゃない、高等魔術だって。高等になればなるほど力は奪われていくもの。精霊魔術と根本的に違うのは、精霊魔術は契約した精霊自身に力を借りるけれど、魔術は自分の力を媒体にして自然の能力を引き出すの。だから大変だよって最初に言ったよね?」

 沙久羅は溜息交じりに確認するように言った。

「わかってはいたんだけどな。まさか、こんなに体力も気力も使うものなんだなって実感したよ」

 耀ははぁと大袈裟ともとれなくもない溜息をして見せた。

 沙久羅は呆れたと言わんばかりの顔をする。

「それじゃ、解ったところで水の上級魔術からやってみる?」

 沙久羅は気を取り直して聞いた。

「水浸しにならないかな」

「それは耀次第だよ。耀が制御できればここは水浸しにはならないから」

 楽しそうに言うと、大きめのグラスを手に持って来た。

「上級魔術になるとコントロールが難しくなるの。初めはこのグラスに水を溜めることを覚えてね」

 いつの間にか沙久羅の手にしたグラスには水が入っていた。

上級魔術(このくらい)までは詠唱なしでできるようになってね」

 笑顔でいうが瞳は全く笑ってはいなかった。本気でこの特訓を短期間で終わらす気らしい。

「…はい」

 耀はただ頷くしかできなかった。

ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ