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14話

よろしくお願いします

沙久羅にとって一番恐ろしい夜が来る。

 ほぼ毎晩、魘され続ける忌まわしい記憶は消えてはくれなかった。

 今までは寮という環境で結界が張られている状況だったから、安心していた。祖父に迷惑をかけていたのもこの魘されて暴走する能力のせいだった。

「耀、知っていると思うけど、私は…」

 沙久羅は思い出したように言おうと起き上がった。

「さっき聞いた。寮にいなければならなかった理由も、暴走する能力の事も」

 耀は苦笑して続けた。

「寮の結界はかなり強力だと聞いた。特に沙久羅の居る第三寮は能力が暴走する危険のある者が入る所だっていうのもさっき結希が教えてくれたよ。それでも抑えきれなかった時があるって言うのも話してくれた」

「迷惑、掛けるかも、知れないよ?」

「俺が闇の精霊魔術師で良かったな。悪魔の能力にも近いからこそ、抑えられると姉が言ってたよ」

 沙久羅を振り返って言った。

「…えっ?」

 沙久羅は不思議そうに耀を見上げた。

「さっき電話したんだ。俺が暴走を止められたのがどうしてかよくわからなくてね。姉に詳細を話して、聞いた。だから、俺が選ばれたということも話してくれたよ」

「お姉さんと電話で話せたんだね」

 沙久羅は少し意地悪い笑みを向けた。

「突っ込むとこはそこかよ」

 耀は脱力して沙久羅を見下ろした。

「耀の能力を開放したときに何となくそうかなぁ。くらいには思ってたから、あんまり驚きはないし。耀の能力なら止められるかもって思ってはいたんだ。でも、凄く迷惑かけると思うよ?」

 沙久羅は本当に良いの?と念押しした。

「だから、俺を信じろって」

 耀は溜息を大袈裟に吐いた。

「…解った。おやすみなさい」

 沙久羅はそう言うと布団にもぐりこんだ。

 耀はそれを見届けると寝室を出て行った。


「…俺。不空会に正式な依頼をする」

 耀は真剣な面持ちで携帯に話しかけた。

「……そう、予算は俺の小遣いの額、全部。かかっただけやるよ。……ああ、そうだ」

 耀の相手は驚いているようだった。

「動かせるものはすべて動かして構わない。期限?できるだけ早くってところかな。どうせあっちには還ってないだろ?おとしまえはきっちりつけさせてもらわないとな」

 耀は不敵な笑みを浮かべて言った。

「仕事?そっちは俺達がすぐに片付けるって。お前は依頼の方を頼むよ。彼女を助手に付けるからさ」

 耀の言いように相手は呆れているようだった。

「うるさいな。良いじゃないか、彼女は優秀なんだろ?不空(ふくう)の仕事なんだから我慢しろって」

 耀は少し苛立っているような口調で言った。相手は言い返す気力もなくなったのか、了承した。

「じゃ、頼むよ」

 そう言うと電話を切った。

 

耀はシャワーを浴びると寝室に戻った。

 沙久羅は気持ちよさそうに寝息をたてていた。

「…よかった。眠れたみたいだな」

 一人呟いて、耀はベッドに潜り込んだ。

 耀がうとうととし始まった頃、それは起きた。

「……ううっ…」

 沙久羅が突然魘され始めた。

「…やぁぁぁ……」

 沙久羅の悲鳴が能力の暴走を始める合図になっているようだった。

 夕方の光の渦が巻き起こり始める。

「沙久羅」

 耀は名を呼び、手を強く握った。耀の能力が沙久羅を包み込む。

 沙久羅は安心したように表情を緩め、光の渦は消えた。

「これは、さすがに驚くよな」

 耀は聞いていたよりも凄まじい能力の暴走に溜息を吐いた。

「これが毎晩じゃ、一般人は手放したくなるって。寮の結界って凄すぎ…」

 耀はただ驚くばかりだった。

 結界を張るのが苦手な自分ができることは一つしかない。こうやって毎晩彼女の能力の暴走を防ぐことだけ。

「これは、姉さんに師事しないとだめかも…」

 今日のところは収まってくれたが、これ以上の事があるかもしれなかった。彼女は寮の結界を壊した前科がある。

「とりあえず、寝よう。後の事は明日、考えるとしよう」

 耀はそう決意して、寝ることにした。

ありがとうございました。

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