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028.All The Same

「曽根さんは有名アスリートで、テレビにも頻繁に出てましたよね?」

 2人とソラの会話は続く。


「う〜ん、頻繁では無いけど、報道番組には出た事があるかな」


「私が印象に残ってるのは、ドキュメンタリーで競技引退を決めるまでを追った番組ですね」


「ああ、知り合いのTV関係者から頼まれて断れなくてさ、ニホン全国に恥をさらして恥ずかしいよ」


「馬原さんも、負けず劣らず有名人ですよね?」


「私?テレビに出たことなんてないけど」


「米帝の、メジャーネットワークに出てましたよね?」


「……あれは退役間近で、海兵隊の新兵募集絡みで断れなくて」


「馬原さんが最後に従事した作戦は、軍関係者の間で近年稀に見る英雄譚だと大きな話題になりましたよね」


「……当事者としては、実は記憶がほとんど無いんだ。

 気が付いた時には、全身包帯だらけのミイラみたいになって病院のベットの上だったからね」


「そう。ほとんど記憶が残ってないのね」


 ここでエプロン姿の学園寮寮母が現れる。

 深夜なので、仕事も一段落したのであろう。


大統領(アンジー)閣下!」

 思わず直立不動になった馬原を、アンジーはやれやれという表情になる。


「だからぁ、私は単なる寮母だから、その呼び方は駄目だって」


 護衛として夜道を同行してきたパピは、まるで馬原を知り合いのような目で見ている。

 彼女も海兵隊OBなので、英雄譚についても知っているのだろう。

 寮長に注いでもらったパイントグラスを嬉しそうに受け取ると、美味しそうに煽っている。


「はっ……申し訳ありません」


「あなたを収容した時点では、あなたが助かるとは誰一人考えて居なかったわ。

 手足や眼球、感覚器官も多数欠損していて、酷い状態だったのよ。

 ただラッキーな事に、それらを解決出来る特殊な人材が身近に揃っていたのよね」


「……」


「大統領としては、ジーに奇跡を幾つか起こして貰って、あなたを世界で一番の再生医療の医師に委ねたってわけ」


「その時に、容姿もいじって貰えば良かったに」

 曽根の頭に、遠慮ないツッコミの拳骨が落ちる。


「自分がしっかりと覚醒したのは、数カ月後でしたから、そういう事情は全く知りませんでした。

 あの校長(ジー)先生に、お世話になっていたとは」


「そういえば、私に施術してくれた時も、馬原を知り合いのような表情をして見てたなぁ」


「つくづくあなた達は、プロメテウスに縁があるのよね。

 アキラの側に居るというのは、あなた達が彼を引き寄せたのかも知れないわね」


                 ☆



 翌日午後。


 アキラの自宅リビングでは、全裸のソラが施術用マットの上に横たわっている。

 アキラは表情一つ変えずに彼女の身体を触診しているが、時折漏れ聞こえる彼女の呻き声が妙に色っぽく聞こえるのは仕方がないであろう。


「あの、私達は席をはずしましょうか?」

 まるで●感マッサージと誤解されかねない様子に、曽根はそわそわしている。


「ああ、その必要は無いですよ。

 羞恥心というのは、私の感情の範囲外なので」

 ソラ本人は、全く気にならないらしい。


「そう言われると、逆に私としては恥ずかしいんだけど」

 ここで白衣姿のナナが、突然登場する。

 ナナはアキラのマンションにも患者を抱えているので、頻繁にやってくるのである。


「ふふふ。自分と同じ体を第3者として観察するのは、どうなんでしょうね」


「私よりはお肌がぴちぴちだし、余分な脂肪もついてないからね。

 まぁ私から見ても、艶めかしいのは事実だよね」


「でアキラとしては、彼女の体調はどう思う?」

 これは担当医師としての、まともな質問である。


「アヴァターラボディとしては、こんなに素晴らしい出来栄えのものは見たことがありませんね」


「そりゃ使ってる遺伝子が、超優秀だからね」


「ええ、それは自分も全く同感です」


「……」


「ふふふ、お気に入りのアキラ君から褒められて、照れてるね」


「……うっさい!」


「あの自分達には何がなんだか分からないのですが、そちらの白衣の女性と、ソラさんはとてもそっくりなんですが、親子とか姉妹さんなんですか?」


「いや、縁戚じゃなくて、本人だよ」


「「???」」


                 ☆



 アヴァターラボディがどういうものか説明を受けた馬原と曽根は、釈然としない表情である。


「まぁ二人が目にしているものは、この惑星の科学力では再現できないものばかりだからね。

 完璧なクローン体や精神の転送が可能になるシステムは、実用化されるにしてもかなり先だろうし」


「ということは、このアヴァターラボディには誰が入っているんですか?」


「厳密に言うと誰も入っていないよ。

 無線通信によって、AIがコントロールしてるんだ」


「それじゃ、もともと空のボディが存在した事になりませんか?

 精神が入った状態があったと考える方が、納得できるんですが」


 ここで珍しくナナの表情が、真剣なものに変わる。


「これは、ここだけの話にして貰いたいんだけど」


「アヴァターラボディは、あくまでも精神を仮置できるだけで、入れ込んだ精神はメンテナンス・フリーとはいかないみたいなんだ」


「このボディの持ち主は、愛着がありすぎたのか、そのメンテナンスを怠ったみたいで」

お読みいただきありがとうございます。

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