025.You Know Me Better
今回は時間的余裕がありませんでしたので、ぶつ切りで短いです。
「明るいうちから、冷たいビールは最高ですっ!」
「ジョッキクーラーはユウの進言で導入したんだけど、気に入って貰えたかな。
これからつまみを作るのも中途半端な時間だから、冷蔵庫の常備菜を食べててね。
私は、夕食の準備があるから」
テーブルの上には、かなりの種類のおかず類が並んでいる。
常備菜というよりは前夜の余り物という感じだが、炒めものも一切浮いた油が見られないのは調理技術が高い所為であろう。
「この炒めもの、アキラが作ったのと同じ味がしますぅ!
冷めてても美味しいですっ」
「これを作ったシンは、アキラの料理の師匠だから。
ソネは味がわかってる!」
「あれっ、姐さんいつの間に」
「ルーが同行してたから、私も付いて来ちゃった」
「マリー、せっかく来たから、夕飯は此処で食べてく?
ビーフシチューを大量に作ったから、量は足りると思うけど」
「今日はユウが居ないから、お世話になります。
寮長のシチュー、大好き!」
「それじゃ、炊飯ジャーをもう一台稼働しなきゃ」
☆
夜半のアキラの自宅リビング。
「ただいま!」
「今戻りました」
曽根と馬原は、もはや此処に帰宅する事が習慣になっているようだ。
「おかえりなさい」
「二人とも、今日は歩き回って疲れたでしょ?
先にシャワーを使ったら?」
「ノエルさん、もしかして私達の行動をモニターしてました?」
「モニターはしてないけど、SIDから逐一報告を受けてたからね」
⁎⁎⁎⁎⁎⁎
シャワー後の馬原の部屋着は、Tシャツとショートパンツとごく普通だが、曽根は素肌にビックT一枚で下着すら付けていない。
「お前は、羞恥心すら無くなったみたいだな」
「え〜。
ねぇアキラさん、私のこの格好見苦しいですか?」
米帝のアスリートの習慣?で、曽根は全身脱毛しているので、たとえ下半身が露出しても見苦しいという印象は無い。
「ううん、見苦しくは無いけどちょっと健康上は問題があるかな。
冷え性気味の体質が、その格好だと改善されないかも。ノエルはどう思う?」
「ううん、本人が良ければ。
僕の姉さんは裸族に近いから、それに比べれば普通なんじゃない?」
「……ほら、同性のノエルさんも、そう言ってくれてるし!」
「……曽根、お前は本当に人の話を聞いてないな!
初対面の時に聞いただろ!ノエルさんは男性だって」
「ええっ、嘘!こんなに可愛いのに!」
「ははは。驚かれるのはもう慣れちゃってるから。
こっちに来て、一緒に飲もうよ」
「ありがとうございます。
さすがにビールはしこたま飲んだので、自分は烏龍茶でご相伴します」
馬原が飲んだパイントグラスは曽根の半分以下だが、それでもかなりの分量である。
「ビール以外なら、ユウさんが置いていったボトルがあるよ。
サザーンコンフォートのソーダ割りとか」
「それって何味なんですか?」
「桃味だよ。
かなり甘めの」
「わぁ!桃味のリキュールなんですね。
美味しそう!」
曽根は初めてサザンコンフォートのボトルを見たようで、物珍しげにラベルを眺めている。
「お前なぁ……こんな自堕落な生活をしてると、現役復帰するなんて絶対に無理だろ。
せっかく校長から、肘を治療してもらったのに」
「いいもん。明日から頑張るもん」
「「「……」」」
☆
翌朝。
ミーナと曽根以外が参加している早朝ロードワークは、同じマンションで散歩を頼まれているハスキー2匹も同行している。健脚のハスキーがかなりのスピードで走るので全体的にはかなりハードな内容であるが、クールダウンのため後半だけは、通常のジョギング程度の速度である。
「本当はすごく優秀な奴なんですけどね。
一回の挫折から、未だに立ち直れてなくて」
曽根が同席していると出来ない話を、馬原は真剣な表情でアキラに相談している。
「明るい性格だから分かりにくいですけど、なんかどんどん状況が悪くなってるみたいですね」
「交番勤務の時はすごく評判が良くて、地域に愛される綺麗なお巡りさんだったんですけどね。
本庁勤務になってからずれまくりで……」
「彼女の場合は、目先の目標があった方が真価を発揮するタイプかも知れませんね。
付き合いは長いんですか?」
「いいえ、警察学校からの知り合いですから、そんなに長くは無いんですけど。
あの人懐こい性格だから、放っておけなくて」
「曽根さんは米国育ちの割には、中身はしっかりニホン人ですね。
それに海兵隊魂が、しっかりとその身に根付いているし」
「現場に出る事は滅多にありませんけど、背中を預ける相棒でもありますから」
お読みいただきありがとうございます。