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024.Look At Little Sister

「へぇっ、かなりの上級者だね。

 海兵隊の射撃フォームも、ウイーバー一辺倒から変わりつつあるんだ」

 

 馬原が試射したマンターゲットには、10点圏に着弾が集中している。

 スポッティングスコープを使わなくてもそれを判別できるとは、ルーはかなりの視力を持っているのであろう。


「ルーさんは、射撃教官なんですか?」


「そうだよ。最近じゃブートキャンプの分隊長を務める事も多いかな。

 それじゃ僕も、射撃練習のノルマを稼がせて貰おうっと」


 隣接している射撃エリアは、どうやらターゲットがランダムに稼働する仕様のようだ。

 レールの上を縦横無尽に動き回るターゲットに対して、ルーはマグチェンジを挟んでどんどんと撃ち込んでいく。


「凄い……」


「いや、ユウさんが撃つと、もっとXにまとまるけどね。

 彼女の場合は、射撃の腕前というよりも異能だからさ」


「……異能ですか。

 たしかにベックが言ってたのも、納得できますね」


「義勇軍の兵隊が優秀だって言われるのは、別に鍛錬のノルマが厳しい所為じゃないからね。

 自分自身が生き延びるためには、体力も技能も自分の中に貯め込まないと。色んな引き出しを増やすのが義勇軍の兵隊の信条だからさ」



                 ☆



「あの部外者の我々が、寮に突然お邪魔して大丈夫なんでしょうか?」

 ルーの案内で2人は、学園寮に来ていた。特に受付も無く入り口を素通りしているのは、大使館の建物と同じである。


「校長の許可を得てるし、アキラからも二人は寮母さんに挨拶するように言われてるんでしょ。

 それに馬原さんは、寮母さんの後輩だしね」


「自分が後輩ですか?

 恥ずかしながら、日本に常駐している先輩には心当たりが……」


「あらルーちゃん、いらっしゃい!」


「あ、あ、あっ!」

 ニホン式に頭を下げながらも、馬原はおかしな声を上げ続けている。

 物に動じない印象の彼女が、完全にパニック状態になっているようだ。


「今日のお連れは、なんか見覚えがある子ね。

 ああ、カネオヘのベースで会った記憶があるわ」




「今、大浴場、使えます?」


「もちろん!今マイラが入浴中だけど、基本的にはいつでもガラガラだからね」


「ああ2人に言い忘れたけど、ここの大浴場は汲み上げの天然温泉なんだ。

 単純泉だけど、とっても気持ち良いんだよ」


「温泉!!

 この都内で温泉なんて、夢のようですぅ」


「それに馬原さんは冷や汗をかいたみたいだから、温泉でさっぱりしたいんじゃない?」


「……はひっ、はい」



「うわぁ、立派な設備ですね。

 どこかのホテルの大浴場みたい!」


「マイラ、邪魔するよ!」


「ああ、ルーさん。

 あれっお客さんを案内中?」


 マイラは浴槽の中で、手足を延ばしてリラックス中である。

 スリムながらもまるでグラビアアイドルのようなメリハリで、女性ですら魅了するボディはますます磨きがかかっている。もともと体毛が薄いので、湯船の中での色っぽさは尋常では無い。


「おい、曽根!初対面の女性を、ガン見し過ぎだろう!」


「ははは。この寮は、シン以外は100%女性だけだからね。

 別に見られても、恥ずかしいっていう意識も無いんじゃない」

 

 ⁎⁎⁎⁎⁎⁎


「あの、こんな事を聞いて良いのか分かりませんけど。

 任期を終えた大統領は、シークレットサービスが終生警備するって聞いた事があるんですが?」


 馬原はリラックスしてきたのか、ルーに込み入った質問をする。


「君も良く知ってるだろうけど、彼女に終生警備が必要なように見えるかな?

 海兵隊の猛者で、歴戦の勇者である彼女に」


「いいえ。全く」


「それにこの寮には、入国管理局の実働隊が2名常駐してるからね。

 シークレットサービスよりも、装備や火力は数倍上だと思うよ」


「でもルーさん、彼女ってもう『良いお年』の筈ですけど。

 なんであんなに綺麗で若いんですかね?」


「あの曽根さん、寮母さんの前で今の『良いお年』っていう発言は控えた方が良いですよ。

 生きてこの寮を出たいなら」

 マイラが真剣な表情で呟いた一言は、まるで冗談が入っているようには聞こえない。


「あ……しっかり覚えておきます。はい」


 ⁎⁎⁎⁎⁎⁎


 場所は変わってリビング。


「どう、さっぱりした?」


「はい。先程は見苦しいところをお見せして、申し訳ありませんでした」


「私は隠遁して、米帝の山奥で暮らしている事になってるから、他言無用よ。

 もっとも本当の事を言っても、信じてもらえないと思うけど」


「はい」


「あの……そこに設置してあるビールサーバーは稼働中なんですか?」

 風呂上がりで舌なめずりしながら、曽根が唐突に発言する。


「こらっ曽根!」


「ははは。もちろん好きなだけ飲んで頂戴。

 グラスは、そこの専用クーラーで冷えてるから」


 気を効かせたルーが、人数分の冷えたパイントグラスにビールを注いでいく。

 マイラはニホンの法律だと飲酒出来ない年齢だが、学園寮はローカルルールが適用されるのでビールやワインはお酒にカウントされないのである。


 「それじゃお疲れさまでしたぁ!」

お読みいただきありがとうございます。

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