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020.The Altar And The Door

「つまり赤く表示されているのは、正規ルートで入国していない外惑星人と思われるんだ」

 SIDの解説にアキラが補足する。


「思われるって……かなり曖昧だね」

 馬原はアキラの言い方に異を唱える。

 別に難癖では無く、アキラらしくない表現だと思ったのであろう。


『この判定はソフトウエアによる機械的なものですから、非正規入国の可能性を発見してもそこから個別に調査するような手間は掛けていません。たとえ我々が大きな見逃しをしていても、プロヴィデンスの干渉からは絶対に逃れられないですから』


「そうそう。それに本人の意思に反して、プロヴィデンス自体のジャンプで飛ばされて来るケースもあるからね。そういうレアケースは非正規のルートでも問題にならないし、逆に保護しないといけない対象になるんだ」


「で、それ以外のケースは?」


『他の次元から侵入したヒューマノイドは、現時点で確認されていませんので……存在していない筈です』


「……なるほど。やっぱりグレーゾーンがあるんだね」

 なんと山盛りだった冷たい餃子を食べきった曽根は、話を真面目に聞いていたようだ。


「自分にとっては、お前の胃袋の容量の方がグレーゾーンだな」


「……」

 

「ところで、お二人が新しい部署に配属されたのは、省内で入国管理局に対する問い合わせが増えているからですか?」


「いや問い合わせは増えていないけど、未解決案件が増えてきて問題になってるからじゃないかな」


「解決済みにして大丈夫だという判別できる部署が、欲しいんだと思いますよ」

 餃子をフィニッシュした曽根は、次の唐揚げの大皿に取り掛かっている。自家製の唐揚げは冷めても固くならず適度にジューシーな状態を保っている。


『さすが効率優先の、ニホンのお役所仕事ですね』



                 ☆



「久しぶりの早朝ロードワークは、気持ちよかった!」

 アキラは大型ハスキーと一緒に疾走するロードワークに、遅れずに伴走した曽根に驚いている。

 運動音痴で無いのは彼女の体幹を見て理解していたが、ここまで体力があるとは思っていなかったのであろう。


「こいつは単なる大食いにしか見えないが、実は10種競技のオリンピック代表選手だからな」


「ああ、なるほど。それであんなに食べても太りにくいんですね。

 代謝量が尋常じゃないから、食べないとどんどん痩せちゃうタイプですね」


「曽根さん、ご飯も豚汁もお代わり出来ますから、遠慮なくどうぞ」

 シャワーを浴びてさっぱりとした表情の彼女に、ミーナは大盛り朝食を配膳している。


「ミーナちゃん、ありがとう!

 作ってくれる和食は、いつも最高だよね!」


「ユウさんに習ってますから、師匠のお陰です。

 馬原さんは、焼き魚よりもハムエッグでしたよね」


「ああ、ありがとう。

 此処のハムエッグは見掛けは普通だけど、味が普通じゃないんだよな」


「Tokyoオフィスの特注分から、おすそ分けして貰ってますから。

 値段はスーパーで買うのと変わらないんですけど、生産先を厳選してるらしいですよ」


「コピンの食べっぷりは、いつも凄いなぁ。

 それに、会うたびに体が成長してるような気がするよ」

 一緒に朝食の席についたコピンとジュンに会釈をしながら、馬原も旺盛な食欲を見せている。


「うん!ここに来てから、身長が5センチも伸びたよ」


「私は体脂肪がまた減りました。

 服のサイズは上がりましたけど」


「ジュン君は、ウエスト細っそいなぁ。

 胸も綺麗だし、ファッションモデルも出来そうだね」


「この間までは、針金みたいな体型だったんですけどね」


                  ☆



「校長、お二人をお連れしました」


「お忙しい中、お呼びたてしてすいません」

 

 校長(ジー)は世間一般と同じ名刺交換をしているが、いつもの派手なTシャツ姿なのでものすごい違和感である。


「せっかくご足労頂いたのですから、ちょっとサービスを彼女にお願いできますか?」


「ええっ、アキラなら数回の治療で何とかなるでしょ?」

 2人は打ち合わせも無く、曽根の右肘の辺りを見ている。まるでひと目で問題のある箇所を、見抜いているようである。


「スポーツで傷んだ靭帯の治療は、僕でも数ヶ月単位の時間が掛かるんですよ。

 せっかくですから、お願いしますよ」


「はぁっ、アキラに頼まれると弱いんだよな。

 あの曽根さん、ちょっと体に触るけど、セクハラで訴えるのは勘弁してね」


「はい??」

 曽根はまるで隠すように右肘のあたりを左手で隠していたが、ここで観念したように左手を外す。

 校長(ジー)の右手が曽根の肘に触れた瞬間、まるで曽根の肘が発光したように鈍い光が放たれる。


「ええっ……慢性的な痛みが、消えた」


「本来なら緊急時以外は、治療はしないんだけどね。

 僕がした事は内緒にしてくれると、嬉しいかな」


「……まるで●の御手」

 敬虔なクルスチャンなのであろうか、馬原が思わず呟いている。


「そうそう。そういう噂が立つと、この学園に病人が殺到するからね。

 生死に関わる場合は治療することもあるけど、まるで新興●●みたいに扱われるのは絶対に避けたいんだ」


「あと曽根さん、靭帯は新品同様になったけど体に馴染むのに数ヶ月かかるから。

 無理しちゃ駄目だよ」


 ⁎⁎⁎⁎⁎⁎


「今までは公安から協力要請があっても、表立って協力は避けて来たんだけど。

 アキラがこの学園に来たから事情が変わってね」


「彼の身分は今は学生だけど、将来的には僕の後継者として学園長になって貰いたいんだ」


「ちょっと待って下さい!アキラって、まだ学生だったんですか?」

お読みいただきありがとうございます。

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