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010.Undefeated

「ミラノの市街戦で、懲りてないのかな」


 亜空間飛行を使うまでも無く、シンは上空を編隊飛行をしているドローンをすぐに確認出来た。


 重力制御で飛行中のシンは、接近しても大型ドローンにその存在を認識されていない。

 ドローンに搭載されているAIにもレーダー補足されているだろうが、高性能の光学迷彩のお陰でノイズと誤認されているのであろう。


「SID、ドローンの動きを細かくナビ出来るかな?」


『残念ながらこの場所では、ミラノ市内と違って映像を取得出来ないので不可能です』


「それじゃ、訓練中の多重ロックを試してみようかな」


 シンの装着しているアンキレーは独自進化し、今や惑星破壊すら出来るようになっている。対ドローンで威力を発揮する圧縮空気弾はシン本人の能力であるが、もはやアンキレーとの境界は合って無いようなものである。

 おまけにシンは最新鋭の戦闘機すら操縦可能なので、兵器の最新テクノロジーを肌で理解している。アンキレーは装着者の思念で進化するので、逆に多重ロック程度は出来ない方が不自然であろう。


『シン、やりすぎるとフウさんに報告しないといけませんよ』


「大丈夫、レーザー砲はここでは使わないから」


『シン、レーザー砲を開発したなんて、聞いてませんよ』


「……あはは。まぁ今のは聞かなかったと言うことで。

 全機ロックオン、BANG(発射)!」


 主翼の付け根あたりを破壊されたドローンは、錐揉みしながら次々と墜落していく。

 まるで虫除けスプレーを噴霧された、害虫のようである。


『……全弾撃墜、チートですね。

 シン、別働隊?の機体が、基地の敷地に接近しています」


「あらら、まぁルーとアキラが残ってるから、大丈夫じゃない?」


『アキラさんが、特殊能力をお持ちだとは聞いたことがありませんが』


「彼は存在そのものが、特殊能力の(かたまり)だからね。メトセラは身体能力が高いけど次元が違うんだよ」


                 ☆




「ルー、別働隊が接近してるから、これを使って!

 武器倉庫から、スティンガーを引っ張り出す余裕が無いから」


 行軍を終えた分隊は、地対空ミサイルであるスティンガーを装備していない。

 対戦車ミサイルは持っているが、ドローン相手ではほとんど無力である。


 司令からルーに手渡されたのは、追従型自動照準器が装着されたM−4である。

 入手が難しいイスラエル製の照準器は、テスト用にメーカーから貸与されたものであろう。


「相手のドローンがMALEタイプだから、射程が足りないけど宜しく。こんな事態になるなら、ヴァイパーを敷地内にスタンバイしておけば良かった」


「司令、ブートキャンプごときで攻撃ヘリを用意してたら、州軍に怒られちゃいますよ。

 シンが戻ってくるまでの時間稼ぎになら、何とかなるかな」


 ⁎⁎⁎⁎⁎⁎


「アキラさん、何してるんですか?」

 分隊長が、何やらごそごそしているアキラに目を止める。

 射撃ターゲット用の資材置場で、彼は鉄製の素材を物色しているのである。


「ああ、ドローンってレシプロだから低速だろ?

 それならなんとかこれで落とせるかと思ってさ」

 鉄製の細棒は確かに槍の代用にはなるだろうが、オリンピック選手であろうとこれを数十メートル飛ばせるとは誰も想像出来ないであろう。


「はぁっ?、石器時代じゃないんですから。

 槍でドローンを撃墜するなんて、無理に決まってますよ!

 ジュン、貴方からも何か言ってよ!」


 アキラの階級章が尉官のものでは無いので気安い口調で喋っているが、分隊長は彼の事を何も知らない。カイオーテの件も、話半分としか認識していないのであろう。


「アキラには、不可能は無いと思う」

 確信がある表情で頷くジュンを見て、分隊長は駄目だこりゃという表情をしている。

 ここでM−4を上空に向けて構えているルーから、思わぬ一言が発せられる。


「アキラ、初手は譲るよ。

 M−4じゃ照準は出来ても、弾が届かないからさ」


 ドローンはすでに、目視できる高度まで降りてきている。

 対戦車ミサイルが両翼のパイロンに見えるので、攻撃されるのも時間の問題であろう。


了解(ラジャ)


 アキラは無造作に鉄棒の一本を掴むと、助走もそこそこに上空に向けて投擲する。

 彼はやり投げ競技を観戦した経験は無い筈だが、無駄の無い綺麗なフォームはまるでベテラン競技者のようである。


 呆れた表情で状況を見ていた新兵一同は、アキラが投擲した鉄棒の飛翔を見て口をあんぐりさせている。すぐに落下すると思われた鉄棒は、まるでロケット砲のようにドローンにどんどん肉薄している。ついにドローンを直撃した鉄棒は機体の中央部に深く突き刺さり、空力バランスを崩された機体は真っ逆さまに地面に落下してくる。


「「「嘘!そんな馬鹿な!」」」


 新兵達は疑念の声を上げていたが、アキラの二投目、三投目が同じようにドローンを撃墜したのを目にしてようやく現実を認識したのであろう。


「総員、ドローン撃墜に傾注せよ!

 見越し射撃は難しいが、不可能では無いぞ!アキラに続け!」

 ルーの命令に、新兵達の一斉射撃が始まった。

お読みいただきありがとうございます。

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