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038.The Way

 数日後。


 ハワイベースから帰還したアキラとミーナは、既に日常生活に戻っていた。

 自宅での夕食会?ももちろん再開されているので、同じマンションに居住しているノエルたちも勿論日参している。

 

「この間は差し入れしてくれたシーフードに、リッキーが大喜びしてたみたい」

 当日ノエル本人は不在だったようだが、わざわざアキラにお礼をしている。

 ちなみにリッキーもアキラ宅で食事を摂る事もあるが、気まぐれなので今日この場には居ない。


「わざわざ運んでくれたのはユウさんだし、僕は助言しただけだよ」


「リッキーは僕には直接文句を言ってこないからさ。

 これからは持ち帰り弁当とかで済ませる場合も、肉以外の主菜をバランス良く用意するのを心がけなきゃ」


 アキラがユウに言付けして、リッキーが肉料理に食傷気味なのを伝えて貰ったのである。

 差し入れたのは海鮮料理とは言ってもエビや白身魚なのであるが、それでもリッキーは大喜びしたらしい。


師匠(シンさん)のところのシリウスもそうだけど、栄養バランスを本能的に理解しているからね」


「今回もアキラのコミュニケーション能力の凄さを、思い知らされたよね」



 ⁎⁎⁎⁎⁎⁎



 食後のリビング。


 ティアとセーラは、リッキー用に用意されたポキ丼を持って部屋に戻っている。

 ミーナもリッキーに久々に会いたいらしく、ノエルの部屋へ同行している。


「オワフで過ごして、日焼けのお陰か精悍さが増したね」

 ノエルはアキラの冷蔵庫に大量に備蓄させて貰っている、IPAビールを口にしている。

 アキラは特にアルコール飲料に好き嫌いは無いので、同じビールをご相伴している。


「そう?ビーチに行く暇もなかったけど、ハワイの美味しい魚は堪能できたよ。

 ミーナもセスナの免許を取得できたし」

 アキラはオワフで購入した、味付きのマカダミア・ナッツをつまみにしている。


「ああ、そういえばミーナちゃんから車の運転を教えて欲しいって頼まれたよ」


「僕は一応運転は出来るけど、交通法規は教えられないからね」


「アキラが出来ない、数少ない事だね」


「いやいや、謙遜じゃなくて出来ない事だらけだよ。

 そういえば、ジェット講習はカーメリに行けば簡単に受けられるの?」


「うん。士官教育もセットで付いてくるから、教習終了すれば尉官になれるかな」


「ブートキャンプすら参加していないのに、それは無理筋のような気がするなぁ」


「ははは。義勇軍は形式に拘らないからね。

 シンさんも、ブートキャンプは省略してるしね」



                  ☆



 翌日、アキラのアルバイト先のジム。


「新規の会員さんも、大勢来てますね」

 アキラは、会長から渡された会員情報ファイルを見ている。


「何名かは、アキラ目当ての会員だけどな」


「……自分目当てとは?」


「近所の整骨院や形成外科で、ここを薦められたらしいぞ」


「あの、僕は健康の専門家じゃないんですけど、そういうのは良いんですかね?」


「専門医が治せなかった症状を、アキラが次々と治療?しているからな。

 別に医療行為じゃなくても、実際に治ったという実績は無視できないんだろう」


「お義母さん、何か心当たりがあるんですか?」

 アキラの指導で肩関節を動かしていた彼女は、なぜかアキラから目線をそらしている。

 ちなみに『お義母さん』と呼びかけているのは、彼女本人の強い希望である。


「私は特に何も。

 ただ、しつこい肩こりが治ったって、知り合いに話した事はあるけどね」


「影響力がある人の口コミは、凄いよな」

 会長がため息まじりに、呟いている。


 ⁎⁎⁎⁎⁎⁎


 アキラは新規会員に声を掛け、個別のメニューについて相談を続けている。


「……那須山さんから聞いて」


「君は、那須山のジム所属なんだろ?」

 ここでアキラの横から、会長が口を挟んでいる。

 相変わらず那須山が関与していると、神経質になるのは仕方がないのであろう。


「はい。

 私にもあのパンチを……」


「彼があのパンチを打てるようになったのは、ほぼ一年掛けた地道な修練のお陰なんだ。

 貴方はそれだけの期間、地味な鍛錬を続けられるかな?」


「彼女は総合格闘技の有望株で、うちのジムではそういう技術は教えないと言ったんだけどね」

 会長は現在の那須山と同様に、一般会員としては格闘技の技術は教えないという言質は取っているようである。


「私は体も貧弱ですし、高度な技術や駆け引きも出来ていません。

 でもたった一つでも、周りから見劣りしない武器が欲しいんです」

 見るからに口下手な彼女が、アキラの目を見ながら真摯に訴える。


 ここでアキラは会長が小さく頷いているのを見て、側に居たミーナに声を掛ける。


「ミーナ、彼女とスパーリングをしてくれる?

 彼女は格闘家だから、手加減無しで構わないから」


「あの……手加減無しという事は、私もグラウンド技も使って構いませんか?」


「うん勿論。ミーナは僕の一番弟子だから、手加減する余裕は無いと思うよ」


 アキラの言葉を聞いてプライド?を刺激されたのか、彼女の表情が変わっていく。

 

お読みいただきありがとうございます。

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