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018.Believe For It

「この煮付け、見た目がアレだけど美味しい!」

 遠慮を知らないセーラの評価は、実に的確である。


これって(ティラピア)ニホンでは人気が無いので、おまけで貰ったんだ。

 師匠(シンさん)によると、タイワンでは味が良いので普通に食べられているみたい」


 アキラは白ご飯の上に煮付の白身を盛り付けて、リッキーのお代わりとして配膳している。

 淡白な味付けの白身魚なので、彼女もさっぱりした味を気に入ったようである。



 ここで食事が一段落したので、ミーナはデザート?のジェラートを配っている。

 中華料理のシメに予想外のメニューが登場したので、セーラはかなり驚いているようだ。

 盛り付けられた高台が付いているアイスクリーム皿は、備え付けの家具と同様にキャスパーの趣味で選ばれたイタリア製のものである。


「アキラはジェラートの知識もあるの?」


「いいえ、全く。

 このジェラートはリッキーのリクエストなので、僕たちの分は彼女のお裾分け分です。

 Tokyoオフィスの冷凍庫から、分けて貰いました」


「ミャウ!」

 人間用の数倍のボリュームで配膳されたノッチョーラを、リッキーは舌を使って器用に舐め取っている。

 普通の猫には食べられない人間用のメニューでも、惑星外の由来(DNA)を持っている彼女には何の問題も無い。


「ああ、Tokyoオフィスで味を覚えたんでしょ。

 あそこは、店舗用のジェラートの在庫があるから」

 Tokyoオフィスに長期滞在していたティアも、もちろんジェラートが大好きである。


「うん。とっても香ばしくて美味しいね。

 スーパーで売ってる高級アイスよりも、僕はこっちの方が好みだな」


「ミャウ!」

 珍しく味の感想を漏らしたアキラに、リッキーが同意の声を上げる。

 餌付けの効果なのか、彼女はすっかりアキラが気に入っているようである。


「……リッキーは、アキラにすっかり懐いているよね。

 ミーナちゃんがヤキモチ焼きそう」


「いいえ。リッキーの事は大好きなので、それは無いです。

 大きいネコ科に憧れがあったので、リッキーの側に要られるだけで嬉しいです」



                 ☆


 

 場所は変わって、雫谷学園。


 講義の合間にアキラと一行は、カフェテリアに隣接した休憩室に来ていた。

 校内の施設に関してはアキラが入学前にも利用した事があったので、特に戸惑う事も無い。


「公立高校からハーレム環境にチェンジ?」

 ロングソファからアキラを気安い口調でからかっているのは、同じマンションに居住しているリコである。同居しているミーナ以外にもノエルの家族を引き連れているので、ハーレム環境というのはあながち間違いでは無いと言えるだろう。


「ははは。まぁノエルから留守中宜しくと言われてるので。

 特にこの子の事が心配みたいですよ」


 校長から事前に入構許可を得ているリッキーは、もちろんリードをしていない。

 自由に歩き回れるにも関わらずアキラの足元に居るのは、馴染みが無い場所でアキラの事を頼りにしているからである。


「ユウさんと同じくらい懐いているよね」


「同感」


「ミャウ!」

 穏やかな性格であるリッキーはじゃれつくような甘え方はしないが、アキラと付かず離れずの距離感を保っている。普段同居している女性二人は、自分とは接し方が違うのが分かるのである。


 ミーナはリッキーの首筋や額の辺りをマッサージしているが、彼女は撫でられるままで嫌そうな態度を見せていない。触り方が上手なのもあるが、アキラとミーナの関係性をしっかりと認識しているからかも知れない。



                 ☆



 夜半。


 リビングには、Congohが提供しているT4回線が敷設されている。

 超大型画面で世界中のケーブルネットワークが視聴出来るのは、この過剰なインフラのお陰である。


 ちなみにミーナを含めた女性陣は、普段アキラが使っているタブルベットで仲良く川の字で寝ているので此処には居ない。


 アキラがこうしてディスカバリー系の番組を深夜に視聴するのは、趣味というより実益の部分が大きい。

 乏しい一般常識を補うために、こうした番組を視聴するのは立派な社会勉強の一部なのである。


 リッキーはアキラの足下から、食い入るように欧州の街並みを見ている。

 普段はテレビには興味を示さない彼女であるが、トーキョーとは全く違う街並みにはっきりとした興味を示している。


 ここで突然部屋のドアチャイムが鳴る。

 通常ならコンシェルジュ経由で連絡があるのだが、いきなりチャイムが鳴るのは同じマンション内の住民か『それ以外』の来訪者という事になる。


「遅い時間にごめんね」


「ああユウさん、戻られたんですね」

 玄関で出迎えたアキラは、すでに気配で誰が来たかを認識していたようである。


「うん。ノエルが留守だと聞いて、リッキーの様子を見に来たんだ」


「ミャウ!」


「あらら。想像以上に二人は仲良しになったみたいだね。

 リッキー用の食事ボウルを貸して貰える?」


「それはウイスキーですか?」


「リッキーの大好物の、サザンカンフォートというリキュール」

 ユウが持参して来たトートバックには、そのリキュールの瓶以外にもオツマミらしき容器が詰められている。


「ミャウ!ミャウ!」


「あっ念の為に言っておくけど、この子とかピートは特別だからね。

 この惑星の普通のペットにアルコールを与えると、酔っ払う以前に猛毒になるから」


お読みいただきありがとうございます。

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