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017.Canyons

 職員室。


「いきなり転校って?

 二人一緒にこの学校を辞めるのか?」


「はい。編入先の試験は既に終わってますし、あとは事務手続きだけになります」


「先生にはとても感謝しています。

 お世話になりました」

 深くお辞儀をしているミーナは、やり残した事?が達成できたのか?清々しい表情である。


「なぜこのタイミングで転校なんだ?

 この間の事件は、ミーナには何の非も無いし……先生を助けてくれて、その、感謝しているんだ」


 さすがに当事者だけあって、ミーナが不審者から自分を救ってくれたのは理解しているようだ。

 アキラには明確な負の感情を持っている担任教師であるが、ミーナに対しては特に思う所は無いのであろう。


「私は何も大した事はしていません。

 ただ、同級生に被害が出ると、悲しいので」


「お前クラスメートにあんな仕打ちをされてても、そう言ってくれるのか?」


「別にいじめられた訳ではありませんし、敬遠されていたのは自分の所為ですから。

 本当にお世話になりました」


「……」



                 ☆



 雫谷学園校長室。


 転校の挨拶に来た二人と校長(ジー)は雑談?をしている。

 ミーナとも既に面識があるので、実にざっくばらんとした雰囲気である。


「いやぁ、やっとその気になってくれて。

 僕も本当に嬉しいよ」


 校長に勧められた派手なラベルの缶飲料であるが、二人はタブを開けるのはもちろん手に取ろうともしていない。ノエルから事前に聞いて、危険度を学習済みなのであろう。


「それで、公立高校の学生生活はどうだったのかな?」


「この地域の人達の、同調圧力とか土地柄に由縁する気質を学べましたね。

 もともとクラブ活動は禁止されていたので、特に不便な事はありませんでしたけど」


「ミーナちゃんは、学園にも顔見知りが大勢居るんだろ?

 皆君の事が大好きだから、気楽に過ごして欲しいな」


「はい。みなさんとっても良くしてくれるので、心強いです」



「それで校長(ジー)、いきなりクラスを受け持つという提案は、勘弁して欲しいんですが」


「いや、今日明日という短いスパンじゃないんだよ。

 将来的に教える側として、採用したいというのは僕の本心だから」


「はぁ」


「もちろん格闘技も教えてほしいけど、うちの生徒ではレヴェルが高すぎて難しいかなぁ。

 まぁしばらくは興味がある分野で、のんびりと学生生活を楽しんでほしいと思ってるんだ」


「了解しました。

 それじゃ授業もありますので、失礼します」


「おっと、言い忘れるところだったけど、ノエルは同級生になるから彼が困った事があったらヘルプしてくれるかな?」


「彼がそういう事態になりそうな気は、全くしないんですが」


「本人は至って真面目なんだけど、トラブルが追いかけてくるからさ。

 君が居てくれると、ノエルも心強いと思うな」


「……僕よりも、頼りになる師匠(シンさん)が身近に居ると思いますけど?」


「シン君は超多忙で、この惑星にすら居ない場合もあるからね。

 正義の見方は辛いよって感じかな」


「僕の事は、エイミーさんはどう思ってるんですかね」


「ノエルとの相性が良いというのは、エイミーの意見なんだよね。

 君達は同じマンションに住んでるし、本当に身近な友人同士だろ?」


「ええ。お互いに自己紹介する前に知り合いましたから。

 この惑星では、一番付き合いが長い友人ですね」


                 ☆



「あれっノエル、訪ねてくるなんて珍しいですね」


「うん。ちょっと仕事で数日留守にするから、アキラに頼みがあるんだ」


「?」


「うちの家族を、見ててほしいんだ。

 二人とも放置していても勝手に外食するから、そんなに手間はかからないと思うけど」


「ああ、なるほど。

 学園寮に依頼しないという事は、リッキーが心配なんですね」


「そう。彼は人間の食事は何でも食べれるけど、グルメに育っちゃってね。

 今ユウさんも不在だから、Tokyoオフィスにも頼めないし」


「僕は嫌われてないみたいですから、リッキーと相談してメニューを決めましょうかね」


「アキラはリッキーともコミュニケーションできるから、頼りになるよ。

 それじゃ宜しく!」


 ⁎⁎⁎⁎⁎⁎



 翌日、アキラの自宅の夕食。

 ゲストが二人居ても、アキラが作る中華料理のボリュームはさほど変わっていない。

 もっとも炊飯量だけは、ティアの食事量に合わせてセットしているのであるが。


 大皿のおかずが並ぶのはいつもの夕食風景であるが、学園寮にはあまり顔を出さないセーラにとっては珍しい光景なのである。


「うわぁ、どれも美味しそう!

 あれっ、リッキーのご飯だけ別なの?」


 夕食に先駆けて、先にリッキーの食事が配膳されている。

 いつもの大きなボウルには、白ごはんの上にマグロの赤味を含めた魚介類が豪勢に並んでいる。

 平たく言うと、豪華版海鮮丼である。


「本人の希望だからね」


「ミヤゥ!」


「いつもよりリッキーはご機嫌」


「最近肉類とか揚げ物が多かったので、飽きちゃったんだって」


「ティアも言ってる事がわかるみたいだけど、アキラはそこまで理解できるんだ」


「ユウさんに教わった魚屋さんにリッキー用に買い出しに行ったんで、普段は作らないアサリ料理も作ったんだ。この惑星の魚介類は、癖が無くてとっても美味しいよね」


「この魚の煮付けはミーナちゃんが作ったの?」


「はい。アキラがおまけで貰ってきた魚を、煮付けにしてみました」

お読みいただきありがとうございます。

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