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012.Water And Dust

 ハワイベース管制塔。


 今日は米帝空軍との事前協議で、訓練空域を使用出来る日である。

 テストフライトを予定しているF-14は米帝海軍から完全に退役しているので、IFFで機体を識別出来る様に設定済みなのは勿論である。


「あれっ、いつ来たの?」

 いつものヘッドセットをつけたジョンが、管制塔の狭い螺旋階段を登ってきたユウに声を掛ける。


「たった今。

 ベルさんから、レストア後の初飛行だと聞いて」


「いつも忙しいのに、わざわざ足を運んでくれたんだ」


「操縦は事前準備が足りなくて出来なかったけど、興味があるのには変わりないからさ。

 西側じゃ、唯一飛行可能な機体でしょ?」


「シミュレーターにも乗って貰ったし、高機動飛行はしないように言ってあるから見せ場は無いと思うよ」

 離陸許可を出したノエルが搭乗した機体は、既にメイン滑走路で『VR』に移行している。


「それでもフライトしてる姿を生で見るのは、ほとんど初めてだからね。

 私が空防に居た頃は、もう三沢に飛来する機会もなかったしね」

 スムースに離陸した機体をユウはパイロットとしてでは無く、単なる飛行機好きとしての目で見ているのだろう。


 数分間の着陸脚を出したままの飛行の後に、脚の出し入れを数回確認したノエルは水平飛行に移行する。


「こちらJellycat、予定通りアフターバーナーのテストを行う」


了解(テンフォー)


「すごい落ち着いてるね。

 やっぱりレイさんの血なのかなぁ」


「レイ所縁(ゆえん)の子は沢山居るみたいだけど、彼は別格かも知れないね。

 まるでレイ本人がフライトしてるみたい」


「ノエル、格好良い!

 ●ム・クルーズみたい」

 

「でしょ!そう思うよね!」

 双眼鏡を覗きながら、ティアとセーラはお互いに素直な感想を発している。



 ⁎⁎⁎⁎⁎⁎


 テストフライト終了後。

 滑走路に出迎えに向かったジョンと、ノエルは歩きながらミーティング(雑談)をしている。


「いやぁ、最高でしたよ。

 可変翼もAUTOモードで問題無く追従して、操縦性もとっても良かったです」


「あれだけ労って飛んでくれると、こちらとしても安心だったよ」


「ユニバーサル・シミュレーターより、実機の方が操縦性が高い印象でしたね。

 基本的な揚力が高いから、空戦が強かったのも頷けますね」


「エンジンはF110が手に入ったから、ストゥールは起きにくいと思うんだけどね。

 まぁこの機体を実戦投入する事態は、起きない事を祈ってるけどね」


「今日は空域制限してるのに、海軍さんの艦載機が居ましたよ。

 まさかとは思いましたけど、テストフライトを眺めに来たんですかね」


「ユウも着陸を見届けたら、さっさと帰っちゃったし」


「あれっ、ユウさん見に来てたんですか?」


「ユウ君とルーは、ずいぶん前から興味津々だったからね」


「ルーに話したら、私にもスティックを握らせろって煩いだろうなぁ」



                 ☆



 ハワイベースのリビング。

 外食が続いていたノエル達は、今日は出かけずに通常の夕食をご馳走になっている。

 シンが寮で作るバイキング形式のように豪華さはないが、定食スタイルにまとめられたお膳の上にはバランスの良いメニューが並んでいる。


「ひさしぶりにニホンっぽい食卓ですよね。

 小鉢も含めて、手が込んでますね」


 ノエルがニホン食に詳しくなったのは、食べ歩きの所為というよりも須田食堂で頻繁に食事をしていたからであろう。定番になっている常備菜だけでは無く食材を無駄にしない為に作られた小鉢は、無駄を嫌うノエルのお気に入りメニューなのである。


「セーラちゃんの、白ご飯が食べたいってリクエストがあったから。

 細かい惣菜類は、ニホンに居たときに勉強したからね」


「地味にこの豚汁が美味しいですよね。

 糀味噌の甘みが、ほっとする味なんですよね」


「この豚汁大好き!」

 セーラは食べ慣れた味噌味に絶賛の声を上げているが、ティアは無言ながらも豚汁のお代わりをしている。


「豚肉はオワフでも良く食べられてるから、品質の高いのが手に入るんだよね」


「コンニャクとか里芋も手に入るんですか?」


「アラスカベースとは違って、此処じゃニホン食材の調達は簡単だから。

 手に入る魚の種類も、ほとんど同じだし」


「唐揚げもサクサクしてて美味しい!」


「これは、ユウさんの餅粉チキンのレシピですか?」


「へえっ、良く知ってるね。

 このレシピは、今やアラスカベースでも定番になってるんだ」


「僕はユウさんの作る、ニホン食のファンですからね」


「姉としては、ユウにヤキモチを焼いてしまう」


「ははは。

 世界的な料理研究家の母君ほどじゃないけど、ユウもプロメテウスでは料理人として有名だからね」


 ⁎⁎⁎⁎⁎⁎


 食後のリビング。


「バイクでツーリングしたいって?

 ティアはバイクの運転出来たっけ?」


「国際免許も持ってきたから、問題無い」


「まぁティアの運動神経だったら、直ぐに乗れるだろうから心配は要らないか。

 ジョンさん、すぐに動かせる整備済みのバイクってあります?」


「ヴィジター用に、数台用意してあるよ。

 主にワコー技研製のカスタムバイクだけどね」

お読みいただきありがとうございます。

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