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007.All For Love

お読みいただきありがとうございます。

「機体のコントロールは、やっぱり衛星経由ですよね?」


「ああ。

 周辺には高い建物も無いし、学園が入ってるオフィスビルの展望フロアならコントロールは出来るだろうが」


「でも展望フロアからでもTokyoオフィスの敷地はブラインドポイント(死角)になりますから、現実的には不可能なんですよね」


 連れの二人が家族風呂に入っている間、ノエルはフウといつもの業務連絡をしている。

 居間と繋がっている家族風呂で仲良く入浴している二人の姿が見えるが、会話に集中しているのでノエルは美女二人の全裸姿を鑑賞する余裕も無い。


「CIA経由で調べて貰った限りでは、トルコで製造された機体なのを確認出来たそうだ」


「EOPの撮影のために、これだけの事をするなんて、僕には到底理解できませんけどね」


「そりゃ宇宙規模の撮影だと思えば、納得できるんじゃないかな。

 現にティアが活躍するシーンの後に、攻撃がパタリと止んだだろ?」


「随分と贅沢なロケハンですよね」



                 ☆



 翌朝。


 帰路に立ち寄った海浜公園では、波打ち際を散策する事が出来る。

 清掃が行き届いているのか、海水浴場になっている砂浜はプラスティックゴミも少なく綺麗である。


「海の色が……綺麗」

 ヤシの木越しに見える海原は、しっかりとエメラルドブルーの色をしている。

 海水浴の季節では無いが、雲がほとんど無い青空が見渡す限り広がっているのが見える。


「???」

 意味がわからずにセーラは首を傾げているが、ノエルがここで口を開く。


「シンさんから聞いたけど、母星の海の色はくすんだ赤褐色なんだよね?」


「うん。

 昨日の夕食は、この綺麗な海で獲れた魚だったの?」


「そうだね。

 マグロとかは遠洋漁業だけど、他はこの近くの海で獲れたんじゃないかな」


「刺し身を食べる時は意識してなかったけど、生命(いのち)を頂いてるのは理解できたかも」


「この惑星でも合成肉は徐々に開発されてるけど、まだ割高だからね」


「食べるものを選べるのは、私から言うと贅沢な悩み」


 彼女が育った人造食が当たり前の世界では、メニューは選べても原材料を選ぶ事は出来ないのである。


「確かにそうだね。

 周りにはヴィーガンの人は居ないけど、そういう意味では贅沢なのかも知れないね」



 ⁎⁎⁎⁎⁎⁎


「食べ物の話を聞いてたら、お腹が空いた!」


「あっ、私も!

 魚以外のメニューを、食べたいかも」


「ははは。

 あそこにケータリングの屋台がオープンしたみたいだから、行ってみようか。

 近場にはお店も見当たらないし」


 海辺を歩く3人は、駐車場の片隅で営業中の屋台を見つける。

 オーニングの天幕の下には、可動式のテーブルセットが複数設置されているようだ。

 掲示されているメニュー表を見ると、メインはボリュームがありそうなホットドッグ各種である。


「ユウさんが好きそうな、ホットドッグ専門店だね」


「えっ?ユウさんは和食が専門じゃないの?」


「子供の頃から家事と修行で忙しくて、街角のホットドッグスタンドが唯一の憩いの場所だったんだって。

 だから今でも、ホットドッグには目がないみたいだよ」


「そういえば、イケブクロでは街売りのスタンドは見たことが無い」


「ニホンじゃ食品衛生法が煩くて、ああいうスタンドは認可されないんだって。

 最低でも手洗い器が付いたキッチンカーが無いと、許可が降りないみたいだよ」



「ウルトラ・ホットドックを3つ下さい!あと……」


「あれっ、ティアがもう注文を入れてるね」


「大丈夫。この3人なら、どんな分量でも食べ切れるから」


 設置されたテーブルに場所を移して、3人は山盛りになったトレーを囲んでいる。

 ホットドッグは一人1本ずつだが、サイズが大きいのでトレーからはみ出しそうである。


「固いバケットを使ったフランス風かと思ったら、違うんだね。

 バンは見た目より柔らかいし、溶けたチェダー・チーズのおかげで味がしまってるね!」


 巨大なホットドッグを頬張ったノエルは、メニュー写真との印象の違いに驚いているようだ。


「ソーセージも皮がパリパリで美味しい!」


「うまうま!」

 ティアは一人だけちゃっかり注文した、黒生ビールを口にしている。

 ドイツ製品にしては、苦味が少ないのが特徴のビールである。


「この皮付きのポテトも美味しいなぁ。

 昔パリで食べた、フレンチフライと同じ味がするよ」

 羨ましそうに黒生ビールを見ているノエルだが、長距離運転出来るのは自分だけなので我慢しているようだ。


「ベルギー産って、メニューに書いてあった!」


「業務用の冷凍ポテトなのかな。

 ユウさんに頼んで、定期配送便に追加して貰いたい美味しさだね」


「ホットドッグ一本じゃ足りない!

 お代わりしてくる!」


「あっ、私の分も!」



                  ☆


 


 帰路の車内。


「もっとこの惑星の、色んな場所に行ってみたいな」


 助手席をティアと交代したセーラは、後部座席で熟睡している。

 いつもより早起きしたので、睡眠が足りていないのかも知れない。


「母星にも、動物園みたいな場所があるんだって?」


「残っている動物は、此処みたいに沢山居ないけど。

 王宮には、アルパカ?に良く似た動物の飼育所があるよ」


「じゃぁウエノ動物園なんて良いかもね」


「……ウエノなら、動物園よりは博物館に行きたい!」


「ああ、なるほど。

 エイミーもあそこの博物館は良いって、言ってたしね」

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