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007.All My Love

 Tokyoオフィス、リビング。


 仲良し姉妹のような間柄のユウとアンは、いつもの本音トークを炸裂させている。


由来(オリジン)が分からないのに、あの子をすんなり受け入れたのはどうなの?」

 初対面で甲斐甲斐しく世話を焼いていたアンの不満の声は単なるボヤキであり、本心では無いのをユウは知っている。


「ベースの遺伝子の持ち主が、気に入らないだけでしょ。

 それを言ったら私達のご先祖様にしても、由来(オリジン)があやふやだよね?」


「それは……やっぱり『崇高な使命』を帯びて外宇宙から送られて来たんでしょ」


「それは希望的観測という奴で、超文明の持ち主の単なる『暇つぶし』かも知れないよね?」


「うっ、それを言われると返す言葉が無いかも」


「それにナナさんによると、彼女の遺伝子は私達よりもかなり『アップグレード』されてるみたいだよ」


「???」


「そういう改良が出来るのは、『元々の創造主』だけの様な気がしない?」


「……SEED理論については納得出来ない部分があるけど、確かにそうかも知れない」


「アヴァターラボディと違って彼女は自身のゴーストを持って現れたから、結局我々の出来る事は彼女を保護する事だけなんだよね」


「放ったらかしには出来ないから、同胞として扱うしかないのは理解しているけど。

 少なくとも、失敗例(ナナ)を反面教師にして欲しいな」


「ノエル君によると、本人も引き継いだ記憶からそういう教訓を得てるみたい」


「それなら、彼女の行く末は大丈夫かも」



                 ☆



 ホッカイドウから南下した二人は、無事に自宅マンションに帰宅していた。

 多忙らしいアイは二人をレンタカーから下ろすと、立ち寄りもせずに走り去っている。


「とっても楽しかったね。

 次はオキナワ?」

 ミーファはいつものプレッツエルをポリポリと食べながら、ご機嫌である。


「いや、あそこは知ってるから、キタキュウシュウかな」


 ノエルが顔を顰めているのは、塩の結晶粒がまぶされた大雑把な味付けを思い出しているのだろう。

 少量ならば小麦の風味が感じられる素朴な味なのであるが、大袋を食べ続ける事は彼には不可能なのである。


「オキナワに土地勘があるなんて、意外だよね」


「海兵隊絡みの依頼があったから、暫く滞在した経験があるんだ」


「じゃぁ帰りは新幹線で北上だね」


「乗り捨てが出来るレンタバイクが見つかれば、それでも良いかな」



 ⁎⁎⁎⁎⁎⁎


 

 数日後、二人の姿はアオキガハラにあった。


 気ままな経路で北上して来たが、この場所だけはSIDから態々(わざわざ)立ち寄るように指示があった。どうやらニホンに数箇所だけ存在する、特異点とも言える場所らしい。


「ここが有名なフジの樹海なんだ」

 キッズヘルメットを外したミーファは、大人びた仕草で髪を手櫛している。


「さすがのミーファも、ここは記憶に無いんだね」


「自殺の名所を訪問するほど、暇じゃなかったから。

 でも他のマーキング指定された場所と、そんなに違わないよね?」


 駐車場にレンタルバイクを駐めた二人は、奥にある『樹海入り口』から遊歩道へ入っていく。

 道はしっかりと整備されているので、この場所にどういう(いわ)れがあるのか忘れてしまいそうになる光景である。


「ここはDDの頻出場所なんだって。

 森林地帯に出現の傾向が高いけど、ここには計測器も多数設置されてるし」


「ええっ、それらしい機器は見当たらないけど」

 背伸びした姿勢で周囲を見渡しているミーファは、薄暗いこの場所に不似合い極まりない。


「設置場所は、もう少し奥の方なんでしょ。

 監視カメラも付いてるから、自殺志願者の発見にも役に立ってるみたい」


 散歩道が細くなるにつれ『死の気配』が濃くなって来るのを、ノエルは敏感に察知していた。

 特に捜索をするつもりは無かったが、何かに急かされるようにノエルは早足で樹海の奥へ進んでいく。


「ええっ、何かあるの?」


「……」


 ここで突然立ち止まったノエルの前に、金属の光沢感がある物質が苔むした地面に刺さっているのが目に入る。


「SID、近々にDD出現の兆候はあったかな?」


「過去24時間にはありません。まずお手許のカウンター数値を見て貰えますか?」


「オゾンや各種放射能濃度は、普通だね」

 装備品として貸与されている多目的カウンターには、目立った数値は表示されていない。


「形状はファイタージェットの増槽に似てますね」

 コミュニケーターのカメラ越しに、SIDが見解を述べる。


「でもあまりにも小さすぎるよね、サイズが」


「重量はどうですか?」


 ケブラーを特殊コーティングした軍手で、ノエルは物体を持ち上げている。


「結構重いね、あとほんのりと熱が出てる気がする。

 もしかして徹甲砲弾?」

 

「いや、今度は逆に大きすぎるでしょ?」

 地上兵器についての知識も持ち合わせているミーファが、ここで突っ込みを入れる。


「なんか兵器っぽく無いけど、放置すると危険な感じがするなぁ」


「先にジャンプでTokyoオフィスに運んだらどうでしょうか?

 二人がそろって戻る前に、他のメンバーも集まってくるでしょうし」


了解(ラジャ)

 ミーファ、数分で戻って来るからここから動かないでね」


 SIDの助言に頷いたノエルは、その場から忽然と消えたのであった。

お読みいただきありがとうございます。

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