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短編  ざ・ねんまつ!!(6話)

さすがに恥ずかしいですね。

「もう年末かぁ・・・・・・・・今年も一年面白かったなぁ」

店の中で雪美がそうつぶやいた。すると客の彼岸も

「そうだね。今年もまた去年と違う年になってよかったなぁ」

と、共感していた。年末だと言うのに、あの事件以来さっぱり雪が降らない。

すると突然店のドアが開き、

「ねえねえ!これって何だと思う!?」

入ってきていきなり啓昌がそう言った。手には水晶でできた箱があり、中に何か入っていた。


第六話   ざ・ねんまつ!!


「何なんだろうね。この変な楕円のヤツ」

雪美が箱の中をのぞきながら言った。彼岸は楕円を手にとって

「う~ん・・・何だかな・・・・・・・こんなのどこで拾ってきた?」

と聞いた。啓昌は

「なんかね、こないだ遺跡いったじゃん?そこで骨を詰めた時に一緒に入ってきたみたいで」

と答えた。

「ふ~ん・・・・・・・まあいいや。中身は木のみみたいなんだがな」

彼岸はそうつぶやいた。すると啓昌は

「じゃあ、埋めてみようよ」

と、何の根拠も無く言った。まあでもやらないよりはましなので、取りあえず街外れにでも埋めてみることにした。

「さ~て、コレで目が出るか出ないかお楽しみって訳だ」

源三郎が言った。ちなみに異空苑では植物の成長が異常に早い。種は大体一日半で芽がでてくるのだ。

四人はカフェに戻った。すると、カウンターになんとドイルが居た。

「やあ。おじゃましてるよ」

ドイルはそう言った。どうやらちょうど旧友にあったついでに見つけたのでよったらしい。

「どうだ?ここら変に変わったものや遺跡はあったか?」

彼岸がそう聞くと、ドイルは

「いんや。あるのは彼岸花の咲いてる家とあばら屋だけだ。あははは」

と、笑いながら言った。

「要するに何にも無いってことか」

「そゆこと」

「そういえばさ、クロウベアの調査はどうなったの?」

「クロウベア?ああ、あのね、ちょっと飽きてきたから他の所探してみようかな・・・・みたいな?」

「じゃあ、あの扉の向こうはほっときっぱなしなわけだ」

「まあ、そうなるな。あ、そうだ。アレね、雪原京じゃなかったわ」

「ほ~・・・・・・でさあ、あのね、明日の午後くらいになったら面白い物見れるかも知れないんだけど、お前はいつまでここに居るつもりなんだ?」

「そうだね・・・・・まあ、あと二日くらいかな。そしたら桑ノ森に行こうと思ってる。まあ、気分で変わるんだけどな」

その後も、色々な話で盛り上がり、閉店時間でやっと店から出てゆく二人だった。




新しい朝が来た。時間は十時過ぎ、昨日のメンバーがカフェの前に集まってきた。

「あ、そう言えば昨日は一体どこに泊まったの?」

啓昌がドイルに聞いた。彼は

「まあ、なんやかんやで彼岸の家に泊まった」

と答えた。皆が集まるのを待ってから源三郎が

「じゃあ、早速見に行こうぜ」

と言った。すると彼岸が

「まて、まだ一人来てないぞ」

と言った。皆は数を数えると、ホントに一人足りなかった。そして、誰が居ないのか分かった時

「ああ、みんなおはよ~・・・」

と、寝ぼけ眼で雪美がベランダからこっちを見ていた。そしてそのすぐ後、ベランダからおっこちた。


ちょっと時間がたって、一応店の中に皆入った。

「ったく、何でこんなに長く生きてるのにベランダからおっこちるんだろうね」

啓昌が言った。雪美は

「いやぁ、寝ぼけてたモンでね・・・・我ながら恥ずかしいなぁ」

と笑いながら言った。テレ笑い。

「それにしても、あの高さで頭から落ちて死なないってのはすごいな」

ドイルがそう言った。すると雪美は

「あら?言ってなかったかしら。私は死神と契約したから、寿命以外では絶対に死なないようになってるのよ」

と、さらっと言った。

「死・・・死神!一体死神ってどんなヤツなんだ!?」

源三郎が聞いた。彼女は

「どんなヤツって・・・・そこにいるじゃない」

雪美は彼岸を指差した。すると彼岸は

「え?いや、こんなときにそんな嘘をつくのはいかがなものかと思うな。うん」

と返した。どうやら雪美の嘘のようだ。

「なんだ。驚かせないでよ。じゃ、雪ちゃんも起きたことだし、行ってみようか。あの場所へ」

啓昌がそう言うと、雪美は

「ちょっと待って。まだ着替えてないわ」

と言った。実は彼女、おっこちて気絶していたのだ。死んでない代わりに。



一行は昨日楕円を埋めた所へやって来た。しかし、そこには何も無かった。

「あれ?おっかしいな~・・・・木の実だとしたらもう芽が出てもいい頃なのにな・・・・」

啓昌がそう言った。その後源三郎が

「じゃ、とにかく掘ってみようぜ」

といったので、取りあえず掘り返してみた。楕円は楕円のままだった。

「あれ?こんな物を埋めて一体どうする気なんだ?」

楕円を見たドイルがそう言った。啓昌は

「え、じゃあ、コレが何なのか分かる?」

と聞くと、ドイルは

「ん?ああ。コレはな、多分古代の浮遊船の一種だと思う」

と答えた。すると雪美が

「浮遊船って・・・・何?」

と言ったので、彼岸が

「いや、浮遊船は今の飛行船とかそういうやつだよ」

と答えた。

「じゃあさ、これうまくなんか出来たら飛べるのか?こんなに小さいのに」

と啓昌。楕円は椰子のみくらいの大きさしかなかった。それにドイルが

「ああ。きっとな」

と返した。すると源三郎が

「待て待て待て、使い方が分からなかったらもともこも無いぞ」

と言った。ドイルは

「まあまあ、オレに任せなって。え~とね、コレは・・・・・・・・・・・・・・・この素材の表面に・・・・ほおほお。で、楕円の頂点には輪っかの模様・・・・」

とつぶやきながら観察し始めた。十分ほど経って、彼は

「え~っと、じゃあここら辺で一番優秀な機械技師呼んできて。あと、どこでもいいから川の水を汲んできてくれ」

と言うと、ベルトのホルダーからナイフを取りだすと、楕円に切り込みをいれ、そこから真っ二つに割った。

楕円の中は空洞になっていて、中からは小さい怪しげな機械と、部品が出てきた。


「ふ~ん・・・・。で、その機械をあたしに組み立てろと」

茶織がそう言った。雪美は

「そゆこと」

短く答えた。茶織は

「・・・・まあ、店のほうは年末で休みだし、暇潰しにはいっかな」

そう言って快諾してくれた。雪美は茶織に工具箱を持たせ、みんなのいるところに案内した。

「おお。機械技師さんか。どっかでみたことあるんだけどな。どこだったっけか?」

ドイルは茶織をみるとすぐにそう言った。茶織は

「あ、アンタ、確か五十年ほど前にも壊れた時計を直してくれってうちに来たわね」

と言った。と言うことは、ドイルは案外いろんな人に面識があるようだ。

「で、どれを組み立てればいいの?」

茶織がそう言ったので、源三郎は

「この小さな機械だ。そんじゃ、よろしく」

と言った。早速茶織が作業に取りかかったとき、遠くからバケツに水を汲んできた彼岸の姿がみえた。


「ふう。こんなモンかしら」

茶織が完成した機械をみてそう言った。

「コレでも結構複雑にできてるのね」

結構感心しているようだった。自分の技術に。

「よし、じゃあ早速取りかかろうかね」

ドイルはそう言うと、なれた手つきで機械を操作して、バケツの中にそれを放り込んだ。

「あのさ、何でそんなにこの楕円について詳しいの?」

啓昌が不審に思ってそう聞いた。ドイルは

「何でかって?そりゃあオレはコレ使ったの初めてじゃないから」

と答えた。少し様子をみていると、突如機械が水をまとって浮かび始めた。

そして地上から一メートルほどまで浮かび上がると、さっきまでとは比べ物にならないほどの大きさの物体になった。

その物体の大きさは、縦が最高六メートル、横が十五メートルほどのものだった。

「おお。で~きた」

ドイルはそう言った。雪美が

「ねえ、コレは一体何なの?」

と聞くと、彼は

「だからコレは飛行船さ。一昔前のね」

と答えると、入り口らしきところから入っていった。二階建てのようだ。窓が二段になっていた。

ドイルの後を追って、全員が中に入ってきた。中は結構広く、快適だった。取りあえず操縦室らしきところに

皆が集まった。

「おお。皆乗ったね?じゃあ、日の入りを見にしゅっぱーつ」

ドイルはそう言うと、変なレバーを引いた。

船体が浮き始め、見える景色がだんだんと変わってゆく。

「え!ちょ、ちょっと!おろしなさいよ!そんな浮いたら降りれなくなるでしょ!?ちょ、ちょっ・・・・い・・・いやぁぁぁぁ!!」

茶織はそう叫んだあと、目をまわして倒れた。

「あ、そう言えば茶織は超高所恐怖症だったわね」

雪美がそう言った。

「ほお。いい眺めだ。コレさえあれば、他の大陸に行くときとか旅行に行くときとかいちいち飛行船会社に金はらわんでもよくなるな」

と彼岸が言った。

浮遊船は海の上を飛び、船内には窓から大海原へと沈み行く太陽の光と熱がゆっくりと姿を変えながらさしこんでいた。

「こんどさ、一ヶ月くらい使って旅しようよ」

啓昌が言った。彼岸も

「お、それいいね」

と賛同していた。

「そうか。もしも行くんだったらオレも連れてってくれ。世界最古の遺跡の案内ならできるぜ」

とドイル。雪美は

「じゃあ、行くんだったら茶織は置いてかなくちゃね」

と言った。見てみると、茶織はまだ気絶していた。

「それにしても、ホントに素敵な年末ね・・・・・」

沈み行く太陽を見ながら雪美がそっとつぶやいた。





















飛行船の船体が軽快に地面に降り立った。

「はい、とうちゃ~く」

ドイルがそう言って入り口のドアを開けた。

「ん?茶織は?」

源三郎が言った。すぐ後に、茶織を抱きかかえた彼岸が現れた。


それから少しして、茶織がやっと目を覚ました。

「・・・・・・・・あれ?・・・・・・ここは一体・・・・?」

「帰ってきたわよ。丹町街に」

雪美がすかさず答えた。それに

「まったく、茶織はアレなんだから。高所恐怖症なんて克服しなさいよ。船内であんな大声で『いやぁぁぁぁ!!』なんて叫んでたんだから。分かってる?」

と茶織の真似を含めて続けた。

「・・・・いや、まったく覚えてません」

顔を真っ赤にしながら茶織が答えた。

「ほ~。結構クールだと思ってたけど、にっさにも案外可愛いところあるんだな~」

彼岸が笑いながら言った。

「う・・・・ううううるさい!!」

茶織の顔がさらに真っ赤になった。



マジで完














「で、問題はこいつをどこにしまうかだな」

ドイルが巨大な飛行船を見ながらそう言った。




END

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