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朝降る雪は喜びの火、夜降る雪は悲しみの火(4話)

「あ、足元気を付けてね」

彼岸がそう言った。

「ん?・・・・・・・うっ!」

何かを踏んだ気がした映次は足元を魔法で照らしてみた。なんと、彼がふんずけたのは人骨だった。

「すごい数の躯だな・・・・・一体ここで何があったんだ?」

稜馬はそうつぶやいた。啓昌はというと、拾った大量のの頭蓋骨をお札にしまっていた。

「一体その頭で何する気だ?」

彼岸が聞いた。啓昌は

「あ、いや、こんなところじゃなんだからさ、外の日のあたるところにでも埋めてあげようかなと思ってさ」

と答えた。

「お前っていいヤツだな」


続・第四話     朝降る雪は喜びの火、夜降る雪は悲しみの火



「おい、今なんか物音聞こえなかったか?」

映次がそう言った。四人はその場に止まり、耳をすましていると、ガタガタいう音が聞こえた。

「何の音だろう?」

と啓昌。

「う~ん・・・・きっと人骨がこすれたりしたときの音だろうな」

彼岸はそう答えた。

「ほお。ってことは、必然的にヤバい状況になったって事か」

稜馬がそう言った。

四人は、周囲に警戒しながら進んでいった。すると突然、彼岸が足をとめた。

「どうしたんだ?」

映次が聞いた。彼岸はそこまで慌てもせず 

「道が無いや」

と言った。そのとたん、暗闇の向こうから何千という骸骨が現れた。

「わっわっわ!」

啓昌は慌てた。急いで懐からお札を取りだすと、お札にまだ形になっていない骨を吸い込ませた。

「さて、こっからどうする?」

と彼岸。目の前には大きな地割れがぽっかりと口をあけて待っているし、後ろは骸骨がわんさかいる。

「あ!」

稜馬は何か思いついたようにそう言うと、彼岸を地割れへと突き落とした。

「うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

彼岸の姿が見えなくなるにつれ、叫び声も小さくなっていった。

「お、おおお、お前!何してんだ!」

映次がそう言った。すると稜馬は

「よし。次はお前だな」

と言って、今度は映次を突き落とした。映次の姿も見えなくなっていった。

「啓昌!俺が何言いたいか分かるか?」

稜馬がそう聞いた。

「もちろんさ」

啓昌はそう答えると、二人同時にその大きな大きな亀裂へと飛び込んでいった。


「やっぱりな。思った通りだ」

稜馬はそう言った。彼ら四人は今、大きなホールらしきところにいた。

「何でアレが術の一種だと分かったんだ?」

彼岸はそう聞いた。稜馬は

「そんなの決まってるだろ。勘だよ。勘」

と答えた。もしコレが本当の亀裂だったら、全員あの世逝きだろう。あ、彼岸は大丈夫かもしれない。

「あのさ、あの台座に置いてあるのが、阿国雲裂剣ってやつ?」

映次がそう聞いた。それに啓昌は

「うん。あの形はあれ以外見たこと無い」

と答えた。

剣の向こうには三つの影があった。どう見ても精霊ではなく、妖魔だった。最終形態の妖魔。

このとき、時間は午前五時半をまわっていた。



「この調子で雪が降り続けば、夜までにはこの街も終わりだな」

俊典がそうつぶやいた。

「街の皆はだいたいがパレスに避難したらしいわ」

茶織がそう言った。すると雪美が

「ふ~ん・・・・・でもさ、妖怪パレスってそんなに丈夫だったっけ?」

と言った。

「まあ、おそらくはな」

と俊典。

妖怪パレスはもともと学校なので、結構丈夫に作ってあるらしい。

「今から避難するとか言わないわよね」

紀慧が言った。雪美は

「もちろんよ。ここの方がよっぽど安全」

と自信たっぷりに言った。どうやらここはまあ丈夫にできているようだ。

雪が積もってドアから外に出られなくなると、皆暇なのか掃除をし始めたり雪を見ていたりしている。

すると、ベランダから外を眺めていた俊典が

「なんだ・・・・・あの雲は・・・・・・・・?」

と言った。三人もベランダにかけより外を見てみると、巨大な黒い雲がこちらに向かってきていた。

「どうやら、桑ノ森もこっちもヤバいみたいだ」

時間は、午前五時ごろだった。



「さ~て、その剣を返していただこうか」

彼岸がそう言うと、妖魔の一人が

「そう簡単に返す訳が無かろう」

と答えた。その後啓昌が

「なぜこんなことをするんだ?」

と聞くと、別の妖魔が

「決まってんだろ?退屈だからさ!」

と、笑いながら答えた。

「あ~あ。こんな奴らにつき合ってる暇ね~や。さっさと始末して剣を持ってこうぜ」

映次はそう言うと、魔法の炎を三人の妖魔に向かって放った。

三人の妖魔はいっせいに襲ってきた。というか、一気に飛びかかってきて三人別々の相手に襲いかかった。

彼岸はそれをさっと避け、小爆竹を投げつけた。すると、爆風にのって加速した妖魔が襲ってきた。その爪が彼岸の肩からかけてあった鞄の小さなポケットを切り裂き、そこに入っていたみかんが宙を舞い、地面で弾けた。

すると、彼岸の目つきが恐ろしくなった。

「やれやれ。いつもなら命ばかりは助けてやってたんだがな、お前はわしのみかんを飛ばした。だからもう殺す!」

彼岸はそう言うと、腰の刀に手をかけ、一気に振り切った。

その瞬間、空間が裂け、次元すら裂け、無の空間が一瞬だけ現れた。

彼岸と戦った妖魔がその裂け目に吸い込まれ、姿を消した。

稜馬も、愚かにも間合いに飛び込んできた妖魔の胴と頭を一撃で別れさせた。

残る一人は、啓昌と戦っているように見えた。接近戦かと思いきや、よく見てみると、啓昌はその妖魔を食っていた。

「うまいか?」

彼岸が聞くと、啓昌は

「ん?・・・・まあまあかな。足の一本でもやろうか?」

と返してきたので、彼岸は記念にその足をもらっておいた。そして、すぐ捨てた。

「うっわ~・・・・・・お前よくそんなモン食えるなぁ・・・・・・・・・・・・」

映次が気味悪そうに言った。

「お前も食ってみればいいじゃん」

啓昌が笑いながら言った。少し離れたところでは、稜馬が

「あ~あ・・・・・・刃こぼれしちゃったよ」

とつぶやいていた。

とにかく四人は剣を抱えて引き返そうとした。が、急に止まった稜馬が

「そう言えばさ、あの妖魔は始末したじゃん?さっき追って来た骸骨はそのままじゃね?」

と言った。

「あ」「おお」「うん」

三人が続けてそう言った。

「じゃ、どうする?魔道開いて帰る?」

啓昌が言った。すると映次が

「別にさ~、このまま行っても大丈夫でしょ。向かってくる骸骨どもはなぎ倒せばいいんだからさ」

と言った。



「あの四人、遅いなぁ。このままだと桑ノ森も滅びちまうよ」

健司が言った。律は

「午前五時二十一分・・・・・・・桑ノ森の埋没推定時間まであと一時間弱、丹町街埋没推定時間まであと六時間半ほどか・・・・・・」

と言った。

「ん?なんか階段の奥から聞こえる」

舞がそう言った。此岸も

「ん?・・・・・・・ホントだ。何か聞こえる」

と言った。

「・・・・・・・・・だ・・・・でぐ・・・・・・・・ 急げ!」

小さく聞こえていた声がはっきり聞こえるようになったかと思うと、階段からいきなり四人が出てきた。

「おい!早く逃げるぞ!みんな乗れ!」

彼岸は即席大型魔法陣の札を地面に投げつけた。全員は急いでその魔法陣の中に飛び込んだ。

彼岸が指をならすと陣ごと浮きあがった。と同時に、階段から大量の骸骨が出てきた。

「うお!なんだありゃ!?」

源三郎が下を覗きこみながら言った。

「おい、落ちるんじゃないぞ!」

そう言って彼岸は陣を礼拝堂の外に移動させると、高度をあげた。

太古の都市、クロウベアの姿が一望できた。街の中心のほうに、誰か人影が見えた。その人影はこちらに手を振っていた。稜馬はその人影が見えなくなるまで、手を振り返し続けた。


「さて、じゃあ健司。お前、その剣を使って雲を裂いてくれ」

此岸がそう言った。健司は

「え?オレ!?やり方分かんねぇよ」

と言った。

「簡単さ。剣を抜いて、雲を裂く。それだけだよ」

彼岸が口をはさんだ。

「まあ、とにかくやってみなよ」

舞がそう言った。健司が剣の柄を握り、鞘から引き抜いた。白銀の刀身には、何か文字が彫ってあり、辺りは真っ暗だと言うのにまばゆく輝いていた。

「そうそう。それを雲にかざして、裂きたいように切っ先を動かせばいい」

啓昌のいう通りにすると、空を厚く覆っていた雪雲が、裂けたというか、渦を巻いて消滅していった。

「すんげぇ・・・・・・」

健司はこの剣の凄さに驚いていた。


雲も晴れ、一行が桑ノ森の上空にさしかかると、この街の住民達の歓声が聞こえた。

「どうやら、間に合ったみたいですね」

律がそう言った。映次は

「まだ分からんよ。ここが大丈夫でも、丹町街が駄目と言うことも無いわけではないからな」

と言った。

午前九時半ごろ。ある程度日が昇ったときに、一行はやっと丹町街に到着した。

彼岸が丁寧に魔法陣を平らな雪の上に着地させ、その後すぐに解いた。

「ふう。ま、とりあえずここも無事みたいだな」

映次がそう言った。

街の人達は自分の家の雪をおろしたり、周りの雪を川に流したりしていた。

「あ、やべっ!花畑が!!」

彼岸はそう言うと、自宅へとダッシュしていった。



「ん?あら!お帰りなさい!」

雪かきをしていた雪美がこちらに気付き、うれしそうにそう言った。

「ただいま。全員無事だよ」

啓昌がそう返した。

「お、丁度いいところに生きのいいのが七人いるな。この雪を川まで運んでくれ」

俊典は帰還したばかりの一行にいきなり仕事をさせた。


それから数時間後・・・・・・・・


「終わった~!!」

啓昌がそう言った。

「それにしても、あの此岸のヤローは何処へ行ったんだ?」

映次が気にしているように言った。すると源三郎が

「アイツなら閻魔邸に今回の騒動の報告に行ったぞ」

と答えた。

「ふ~ん・・・・」

と映次。少ししてから雪美が

「そう言えばさ、どうやってこの雪をとめたの?」

と聞いてきた。それに健司は

「そりゃあもうこの剣でスパっとね・・・・・」

と答えた。役目をおえた剣は、また静かに眠っているようだった。



それから一週間が経った。



街に積もった雪はほとんど解け、いつもと変わらない日常に戻っていた。

だが、誰もヤベアの都市のことを話そうとはしなかった。

「おっひさしぶりで~す」

軽快に彼岸がカフェに入ってきた。

「お、来た来た。おせーぞ」

健司が言った。その後、店に今回の事件にかかわった数名も集まり、何があったかを事細かに説明した。

ちなみに、大閻魔と天神にも同じ事を言ってあった。

「・・・・・・・・・・・・・・というわけさ」

稜馬がそう言って、説明は終わった。

「あのさ、で、この剣はどうすんの?」

突然健司が言った。そう言えば、あのとき使ってからずっと彼が持っていたのだ。

「あ、じゃあ、わしが神社に返してくるよ。クロウベアに行く予定だしな」

彼岸がそう言って、健司がら剣を受け取った。

「え?何しにまたあんなところまで?」

啓昌が聞いた。すると彼岸は

「アイツとの約束を果たすためさ」

そう言った。稜馬は

「え?アイツって・・・あのドイルとか言う奴?」

と聞いた。

「そ。この事件が解決したら、調査につきあってやると約束したんだ」

彼岸はそう言うと、店から出ていった。

「あ、そうだ。雪ちゃん。うどんある?」

啓昌が聞いた。

「え?うどん?まあ、あると言えばあるけど」

「じゃあさ、皆でうどんパーティーやろうよ」

「別にいいわよ。でもそれは、アカが帰ってきてからね」

雪美は微笑みながらそう言った。

「そう言えばさ、此岸さんはどうしたの?」

稜馬が聞いた。だが、ここにいる人達は皆知らなかった。

「あ、そうだ!コレを使ってみましょ」

雪美はそう言って髪にさしていた彼岸花をとって、花びらを一枚ちぎると、

「もしも~し・・・聞こえてますか~」

と、その花びらにむけて言った。すると

『ん?何?急用?まだ店見えるんだけど』

と、彼岸から返事が返ってきた。雪美が此岸のことを聞くと、彼岸は

『ああ。アイツならヤベアの方の調査に行ったよ。ホラ、途中で色々あって結局ヤベアに行かなかったじゃん?』

と答えた。その後、

『じゃ、そう言うことで』

と通信が入ると、花びらは枯れてしまった。

「おお。それって結構凄いな」

源三郎がそう言った。

「あ!やべっ!これどこか埋めてこなくちゃ!」

啓昌は懐から一枚のお札を取りだすと、ダッシュで店から出ていった。





  












「あのさ、何で大雪が降ったの?」

啓昌がそう言った。それに稜馬が

「ああ。アレの理由は妖魔が剣を持ってったのが一つ。あの剣は神社にあるときだけ、人為的な異常気象をなくす物だからな。で、もう一つが、今年が氷の都、雪原京の成立八百周年だからだ」

と答えた。

「え?雪原京?」

「そ。雪原京と言うのは、昔のおとぎ話に出てくる伝説の都さ」

「へ~・・・・それって何処にあるの?」

「分かんない。でも、どこか扉の向こうにあるのは聞いたことがあるな」

そう言って、稜馬はコーヒーをすすった。





































「・・・・・・・やっぱ、滅びた国だけあって静寂だな・・・・・」

ヤベアを一番高い塔のてっぺんから見下ろした此岸が言った。

「雪が解けりゃぁ普通の国なんだけどなぁ~」

ヤベアはまだ半分近く雪が解け残っていた。

「さ~て、調査といきますかね」

此岸はそう言って、塔から飛び降りた。

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