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魔界の姫と緑園の王子

「陛下から早馬がきてね。君が湖に落ちて風邪を引いたと聞いてね。飛んできたんだよ。」

息を絶え絶えしながらも言葉を発するロナルド。

「ところでー・・・」

と言いながらロナルドはルーンのベッドの枕元にある椅子に腰かけているヴィルの方に視線をやった。

「え?・・・あ、そっか。ロナ兄は知らないんだ。」

「ルーン。こちらの方は?」

ヴィルがルーンの方を見やり質問したらロナルドが怒るようにヴィルの方を睨んだ。

「お前に聞いていない。今は私がルーンに質問をしている。それで?ルーン。この男は誰なんだ?」

ロナルドはそう言い視線をルーンに戻した。

そしてルーンは1月前まで自分が人間界にいたことを話し、そして婚約者でもあることを話した。

そして、ロナルドの返事を待たずにルーンは今度はロナルドの事をヴィルに話した。

「ヴィル。この人は私の従兄弟でね。ロナルド・クルフっていうの。小さい頃良く一緒に遊んでくれた私のお兄ちゃん的存在なの。」

「そうなんだ。よろしく。ロナルド・クルフさん」

そう言い。椅子から腰を上げたヴィルはロナルドの方まで行き手を差し出した。

ロナルドはそれを無視しルーンの近くまで歩み寄った。

「陛下から一応話は聞いてはいたが・・・まさか本当だったんだね。」

そしてルーンの頭を愛おしそうに撫でた。

「父様ったら・・・ただの風邪なのにロナ兄をわざわざ呼ぶなんて!」

「心配なんだよ。許しておあげ。」

そう言いながらロナルドはルーンを撫でる手を止めようとはしない。

そんなロナルドを扉付近から見ていたヴィルは何かに気付いたように少し目を見開いてみせた。

「へくしゅ!!!!」

ルーンが大きなくしゃみをすると

「「大丈夫!?」」

とロナルドとヴィルの声が重なった。

「っつ!」

ロナルドは忌々しい物を見るような目でヴィルを見た。ヴィルはそんな視線には気付いてもいないのかそのままルーンの寝台に駆け寄りロナルドとはまた逆の方へと回ってルーンの顔色をうかがっている。

「二人の声重なった~!大丈夫だよ。心配してくれてありがとう、二人とも。」

ルーンはそう言いながら鼻をススった。

その時

コンコン。

「姫様お食事をお持ちいたしました。」

扉の向こうで侍女の声が聞こえた。侍女がそう言うと扉を開け寝台近くにあるテーブルに食事を乗せたお盆を置いた。

「ありがとう、イリアナ。」

「さあ、早くお食事を済ませお薬をお飲み下さい。陛下が心配なさっておられましたよ。ロナルド様ちょっと失礼いたします。」

そう言うとイリアナはロナルドの横を歩きルーンの枕元に立った。そしてルーンの背に手を添え支え起してくれた。

「今日のお食事は人間界でいう「お粥」という食べ物でございます。先ほどヴィル様が直接厨房にいらっしゃいまして、風邪を引いた者にはお粥のほうが食べやすく消火にも良いと教えていただいたのでコックに作らせてみました。」

「っつ!そんな物・・・・!」

―――――そんな物ルーンに食べさせるな!人間が食すものなど!!とロナルドが言いかけると。

「わあ!本当に!?ありがとうヴィル!」

満面の笑顔でヴィルに礼を言うルーンを見てロナルドは言葉を飲み込んだ。

「いいえ。お粥食べて薬飲んで早く元気になってね。そしてまたどこか出かけよう?魔界の色んなところに連れて行っておくれ。」

ヴィルも笑顔でそう言うと「うん!」とルーンが元気良く答えた。

その後ルーンはおいしそうにお粥を全て平らげ薬の中に入っている眠り薬のせいかすぐに眠気が襲ってきて目をこすり始めた。

「ルーン眠いのだろう?無理しないでお眠り。たくさん寝ないと治らないよ?」

「う・・・ん・・・・。ヴィル・・・また傍にいてくれる・・・?」

「うん。いるよ。大丈夫だから、ね。」

「ロナ兄も・・・いてくれる・・・帰っちゃう・・・?」

ルーンは寝台の端に腰を下ろしているロナルドの方を見やり質問した。

「・・・ああ。大丈夫だ。ここにずっといてやる。」

「じゃあ寝る!」

そう言うとルーンは布団で顔を半分隠して目を閉じた。

数分後静かな室内にルーンの寝息だけが聞こえ始めた。それと同時にロナルドが口を開いた。

「どういうつもりだ。」

「はい?」

ヴィルがそう答えるとロナルドは今にも殺してしまいそうなほど鋭い目つきをヴィルに見せた。

「ルーンの婚約者とは一体どういうつもりだと聞いている。狙いはなんだ?魔界の王の座か?」

「いいえ。私は魔王の座など興味はありません。」

ルーンの頭を撫でながらヴィルがそう言うと、ロナルドはヴィルを睨む瞳を少し細めてまた問いただす。

「では何が狙いだ?魔界ででしか取れぬ宝石か?それとも魔石か?」

「いいえ。ルーン以上に欲しい物などありません。」

ヴィルがルーンの頭を撫でながらにそう言うとロナルドは歯ぎしりさせた。

「ルーンは魔界の宝石だ。宝石を人間のような薄汚い者などにくれてやる気はさらさらない。ルーンの事は諦め人間界に帰れ。帰り方がわからぬのなら私が道を開いてやろう。」

ヴィルはルーンを撫でる手を止めロナルドの方を見た。

「申し訳ありませんが。私はルーンを手放すつもりはありません。なので帰り道を開いてもらう理由はありません。」

「っつ!魔族の中に人間の血を入れるわけにはいかんのだ!貴様はそっこく人間界に帰れ!ルーンにはそれ相応の結婚相手が設けられるはずだというのに貴様が邪魔をしているのだぞ!」

とロナルドは小声ながらも少し怒鳴るようにして言葉を噤む。


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