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第二十一話 外つ国の祭りに触るること
神無月の終はる頃、翁、商ひの集ふ所歩むに、店の装ひ、橙を基に黄、茶、黒などに彩らるるを見て、「あな、何ぞ祭りのあるや」と、見回したり。しばしして街に出づれば、行き交ふ人の寄り寄りに、物の怪の化粧したる者ら見ゆるに、これを尋ぬれば、男、「外つ国の習ひにて、かの地にありては、新嘗祭と盂蘭盆会を合はせたやうな祭りなり。然れど近頃、こちらに伝はるに様変はりて、物の怪などの化粧して集ふのみの催しになりたり。」と、答へり。翁、これに、「なぞ、物の怪を装ふや」と、尋ぬれば、男、「常世と現世の境弱まりて、祖先らの来たるに、悪鬼らもまた来ると言はれ、物の怪を装ひて、「我は人ならざり」と身を守るが元なり。」と、答へり。翁、「むべ、追儺や庚申待にも似たるか」と、ひとりごつ。男さらに、「また、稚児らの祭りともありて、家々を訪ね、声をかけ、菓子など賜る催しなり。これ、こちらにありても似た催しも見ゆるものなり。」と、言ひたり。翁、「稚児らの笑みをうつくしと思ふは、いずこも同じや」と、菓子賜りて、らうたき笑み浮かべたる稚児らの様思ひて目細したり。




