表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/25

第9話:千年の眠りから醒めた時、目の前に居たのは、白無垢を着た愛らしい少女だった。

 千年の眠りから醒めた時、目の前に居たのは、白無垢(しろむく)を着た愛らしい少女だった。


 利発(りはつ)そうな健やかな瞳が、伊与(いよ)によく似ている……そう思った。


 同時に、胸がちくりと痛む。


 千年前と同じだ。


 この少女もきっと、無理矢理村から連れてこられたのだろう。

 伊与と同じように、村には想いの通じ合った恋人がいるに違いない。


 哀れなことだ……。

 瑞守家に生まれてしまったがために、龍神の供物(くもつ)となるために捧げられるなんて。


 ところが、泣き喚いたり、逃げ出そうとしたりするかと思ったら、少女は白夜の背中の傷を見て顔をしかめ、丁寧に手当てをしてくれた。


 その少女がたしかに瑞守の乙女であることは、すぐに分かった。

 肌に触れられるだけで、心が洗われるように清々しい気持ちになる。


 迷わず自らの衣を裂き、巻いてくれた時には、少女の霊力によって、激しく()んでいたはずの傷が癒され、痛みが引いていった。


 傷が癒えれば、充分だと思った。


 自分の龍神としての本能は、喉の乾きを癒したくて(たま)らないように、瑞守の乙女を欲していたけど、無垢な少女を犠牲にしてまで、力が欲しいとは思わなかった。


 自分が、持てる力の範囲で黒龍を倒せば良いだけのこと。


 そう思ったのに……。


 逃げ出すことだっていくらでもできたはずなのに、晴と名乗ったその少女は、手傷を負った白夜を抱き締めて(かば)ってくれた。

 自分の衣が血に汚れるのも(いと)わずに……。


 正直なところ、晴には隠れていて欲しかった。


 「隠れていて」と言ったのは、黒龍から隠れろといった意味もあったけど、同じぐらい、自分から離れていて欲しいと言う意味もこめられていた。


 龍神である自分にとって、瑞守の人間は『ご馳走』だ。


 力を欲している時に不用意に触れられたりしたら、自制が()かなくなってしまう。


 そう思った時……


「隠れていることなんてできません。白夜様。私、覚悟はできているんです。私の力が必要なら、どうぞ使ってください。お願いですから……」


 そう口にした晴の言葉に、嘘偽りはないようだった。


 (けが)れのない黒い瞳。


 この少女は、伊与(いよ)とは違うのだと言うことに気が付いた。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ