第22話:新しい姿
黒龍の姿を追って、瑞守の屋敷にたどり着いた時――晴は見た。
闇夜を照らす月の光のような、優しく温かい光を放ち、純白の、美しい龍が姿を現すところを。
「あれは……白夜様……?」
「すごい、呪縛が解けたんですよ……!晴様と見合ったわけでもないのに、なぜでしょう……」
「さくちゃん、言い方……」
「それに、あの姿……力を取り戻したと言うよりは……」
さくちゃんは、感無量という表情で白夜様を見上げると、次の瞬間、女の童の姿に形を変えて、言った。
「新しい姿を手に入れた、という感じですね……!晴様と想いが通じ合ったからでしょうか?」
――はる……。
晴の姿を認めた白夜様の声が、愛しげに晴を呼んだ。
「白夜様……!」
晴は両手を広げ、美しい龍を腕の中に抱き締めた。
温かい。
陽だまりのように温かい光が、晴を包んでいた。
晴は、愛しい想いを込めて白い龍の額に口づけをした。
途端――口づけた場所から、まばゆいほどの光が辺りに広がった。
まるで、全てを浄化していくような、力強い光。
光が収束し、大地の揺れがすっかり収まった時、荒ぶる黒龍の姿は、跡形もなくなっていた。
「あ……っ!待ちなさい、この……っ!!」
さくちゃんがするすると逃げて行こうとする黒い蛇をぎゅっと捕まえた。
「こ、これが……徨夜様……?」
佐知子お嬢様はがっかりしたように、へたりこんでいた。
「だから言ったでしょう?ご主人が本来の力を取り戻せば、こんなやつ、簡単に倒せてしまうって。神様であらせられるご主人とは、『格』が全然違うんですから!」
さくちゃんは暴れる蛇を手の中で押さえ付けながら言った。
「ご主人、こいつどうしましょう?」
「そうだねえ……」
「さくちゃん、ちょっと貸して」
「え……っ」
晴はさくちゃんの中で暴れる黒い蛇の首根っこ辺りを掴むと、諭すように言った。
「赦してあげるから、もう悪いことはしないのよ。徳を積んで、さくちゃんみたいな立派な神使になるといいわ」
晴の言葉を理解したのかしていないのか分からないけど、暴れていた蛇は大人しくなった。
「晴は本当に優しいね。僕だったら絶対に赦さないけど」
「さてと……」
白夜様は人間の姿に戻り、仕切り直すように言った。
気付けば、周りには村長をはじめ、大勢の村人達がぞろぞろと集まってきていた。
地震から逃れ、黒い龍と白い龍の闘いをつぶさに見ていた人たちだった。
地震に驚いて屋敷から出てきた響子奥様もいる。
佐知子お嬢様は村人達に囲まれて、俯いてへたりこんだままだった。
白夜様は、佐知子お嬢様に向かい、静かに口を開く。
「本来はこの村を守るべき瑞守の巫女ともあろう者が、荒御魂に力を与えてしまい、村を危機にさらしてしまったことは、悔い改めるべきことだ。……分かるよね?」
白夜様は幼子を諭すような口調だった。
佐知子お嬢様は、ふて腐れたような顔で、何も言わない。
「でもまあ、甘い言葉に騙されてしまったと言う酌量すべき事情もあることだし……」
白夜様の判断で、佐知子お嬢様はかくりよにある神社に住み込んで、しばらく心身の浄化のための修行をしてもらうことになった。
さくちゃんの話によると、とてもおっかない女神様がいらっしゃるらしい。
黒い蛇さんも、それに付いて行ったとか行かないとか……。
白夜様は、村人たちに妻を得た自分に生け贄はもう必要ないこと、そしてもう祠には二度と生け贄を捧げないようにと、固く約束をさせていた。
「さあ……!かくりよの我が家へ帰りますよー!白夜様がいつまでもお預けを食らってたら、哀れですからね……!」
「さく……」
「さくちゃん、言い方……」
晴と白夜様の声が重なった。
ここまで追い掛けてくださっている皆さま、本当にありがとうございます!!
可愛い二人のお話。いよいよ明日で完結です。最後までお楽しみいただけたら幸いです。




