第19話:祝言
「ふふふ……ほんとうに、いじらしいお二人ですね、母君様」
さくちゃんの声に我に返った二人が、振り返ると、晴の母も二人の姿を見守りながら静かに涙を流していた。
「嬉しい……」
母は涙をぬぐいながら呟いた。
「母君……」
「お母さん……」
「晴が、これほど強く想い合える方と一緒になれるなんて、母は本当に嬉しいです。……まさか、神様のお嫁様になるなんて、思いもしなかったけどねえ」
***
袴姿の白夜様は本当に美しくて、隣に並ぶのが申し訳なく思うほどだった。
「私なんて本当に貧相……」
「何を言ってるんですか、花嫁衣装の晴様も、とってもお綺麗です……!」
「ほんとほんと、とっても綺麗なお嫁様……!」
着付けを手伝ってくれたさくちゃんの神使仲間たちが、口々に誉めてくれる。
狐さんや兎さん、鯰さんなど、婚礼料理の準備のために、さくちゃんが集めてくれた色々な神様たちの神使仲間だった。
母は黒留袖。
晴はあの日以来の白無垢だった。
生け贄として白無垢を着せられ、山を登った時は本当に惨めな気持ちだったけど、今日は本当に、正式に白夜様と結ばれる日だ。
隣に並んで座る白夜様は、そっと、晴の手を握ってくれた。
ほんのり頬を染めている白夜様が、今日も愛らしかった。
盃に、御神酒が注がれる。
神様の一人が媒酌を務めてくださり、三三九度をして、晴は白夜様と正式に夫婦となった。
かくりよの祝言は、それは賑やかなものだった。
お屋敷の広間に、尾頭付きの鯛や、お赤飯、お造りや汁物、海幸山幸、目に鮮やかな色とりどりの婚礼料理の膳が並ぶ。
白夜様は神様たちの間でも可愛がられているようで、彼の晴れ姿を一目見ようと、老若男女様々な姿をした八百万の神様たちが勢揃いだった。
千年以上生きている白夜様も、神様の中では新米みたい。
白夜が人間の娘を娶るとはねえ……!
徳の高そうな娘さんだこと。
でも痩せっぽちだわ。たくさん食べさせなきゃ。
晴と白夜様の周りでは、お酒を酌み交わしながらいろいろな言葉が飛び交っていた。
婚礼の夜は、もちろんさくちゃんが真っ白なお布団を二つ並べて準備してくれていた。
「晴様、覚悟しておいた方がよろしいかと思いますよ」
さくちゃんが晴に耳打ちする。
「か、覚悟って……なんの?」
「そりゃあ決まっているでしょう。ご主人、いままで散々お預けを食らってたんですから……」
「えっ、ええ……っ!?」
晴は悲鳴をあげた。
全然そんな風に見えないんだけど。
晴にはどうしても、あんなに可愛らしくてあどけない雰囲気の白夜様が、『そういうこと』を考えているとは、とても思えないのだった。
遠くから宴の余韻が聞こえてくる。
晴は楽しそうなその声を聞きながら、静かに白夜様を待っていた。
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