表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/25

第16話:ご主人は神様としては少し、優しすぎるんです。

 部屋に二つの布団が並べて敷かれていた時、白夜はぎょっとした。


 無理だ……。


――はあ……。(さく)のやつ、余計なことを。


 白夜は晴を(にえ)として扱うつもりはなかった。


 晴には、ただ傍に居てもらえるだけで良いのだ。

 それだけで心強く、充分力になるのだから。


 別の部屋を用意し直させようか。


 明日は絶対に、そうさせよう。


 ひとまず、白夜はぴったりとくっ付けてあった布団を引き離すことにした。


「はる、おやすみ」


 なるべく晴の方を見ないように、背を向けて布団に入る。


 そして、固く目を閉じて耐えていたと言うのに……。


 こともあろうに、晴が体に触れてきたのだ。


「だめだよ晴……お願い、僕に触れないで」


 白夜は飛び退()くように晴から身体を離し、懇願(こんがん)した。

 理性が飛んでしまうから、とはとても言えなかったけど。


「かわいい……白夜様」

 晴の明るく澄んだ声が、耳をくすぐる。


「失礼だな……かわいいなんて」

 

「だって本当に、かわいいんですもん。白夜様。お顔が赤いです」

 

 晴の手がほほに触れて、完全に限界だった。


 頬に触れる晴の手を掴んで、その身体を引き寄せる。


 晴は、身を縮こまらせるようにして、目を(つむ)っていた。

 自分を恐れるかのような晴のその姿を目にして、白夜の心に、ある言葉が(よみがえ)った。


——龍神様。私はあなたを許しません。あなたに身を任せるぐらいなら、私は死を選びます。

 

 飛び散る鮮血。

 今でもその感触(かんしょく)を、まざまざと覚えている。

 伊与いよがわざわざ、自分の目の前で喉を突いて死んだのは、龍神への深い恨みを示すためだったに違いない。


「白夜様……?」

 晴の声に、我に返る。


「晴……。やっぱり僕は、嫌なんだ。生け贄の少女と引き換えに村が救われるなんておかしい」


 こんなことを、繰り返していてはいけない。


 こんなことをしていたら、人間は天災が起きるたびに、生け贄を差し出して、神に祈ろうとするだろう。


――僕は贄の力に頼らず、自分の力で黒龍を倒さなければならない。

 

 晴には浮き世へ帰ってもらおう。

 

 それなりの住処すみかを用意してやって、母君と、そして、誰か晴を想ってくれる人と一緒に、幸せに暮らすんだ。



 ***



「はあ……」


「晴様、朝からため息ですか?昨夜はいいこと、ありました?」


 翌朝、晴はさくちゃんと一緒に台所に立ち、朝食の準備をしていた。


「いいこと……」


 昨夜のことを思い出すと、胸がどきどきと(さわ)いだ。


 白夜様に引き寄せられて……思わず目を瞑って……次に目を開けた時、白夜様はとても(つら)そうな顔をしていた。


 まるで、泣いているみたいに見えた。


「さくちゃん。千年前、何があったか、聞いてもいい……?」


「千年前ですか……」

 さくちゃんもため息をついた。

 よほど、思い出したくないようなことがあったのだろう。


「ご主人は何も悪くないんです。ただ……ご主人は神様としては少し、優しすぎるんです」


 千年前、荒御魂あらみたまとなってしまった力ある黒い蛇が、黒龍の姿となって村を襲った時。

 今と同じように村で霊力のある乙女が生け贄に選ばれた。


 乙女の名は伊与いよと言ったが、彼女には相思相愛(そうしそうあい)の想い人がいた。


 伊与を深く愛していた想い人の男は、彼女が生け贄として連れていかれる際、彼女を守ろうと、たった一人村人たちに抗議して、惨殺された。


 哀しみにくれた伊与は、生け贄を求めた龍神を深く恨んだ。


「そして、ご主人の目の前で、まるで自らの恨みを見せつけるみたいに、刃物で自分の喉を突いて、命を絶ったんです。優しいご主人は、罪もない少女が目の前で死んでしまったこと、それはそれは哀しんでいらっしゃいました」


「だから……白夜様は、あんなに頑なに、生け贄を拒んだのね。荒御魂に立ち向かうには、姫巫女の霊力が必要だけど、そのせいで犠牲になってしまった命があったから……」


 白夜様の気持ちを考えたら、晴は心が痛んだ。

 悪いのは、白夜様ではないのに……。


「姫巫女様の力を得られなかった白夜様は、黒龍と刺し違えるように、大きな傷を負いました。そして……呪詛(じゅそ)のこもったその傷を、晴様に癒してもらうまで、千年、祠の中で眠ることとなったのです」


ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!!!

第二章はここで終わりです。


星評価、ブックマーク、感想などいただけると、作者の励みになります。

よろしくお願いします!!


第3章で、いよいよ完結です。

二人の攻防を、最後まで見届けていただけたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ