表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/25

第13話:村にこんな綺麗な男子はいなかったはずだけど、晴ったら、いったいどこから連れてきたのかしら。

 晴は、隣に銀髪の美しい男性を連れていた。


 年の頃は晴と大して変わらないぐらいに見える。

 目の色は不思議な青緑色で、色白の、どこか幼く(はかな)げな雰囲気を持つ人だった。


 村にこんな綺麗な男子はいなかったはずだけど、晴ったら、いったいどこから連れてきたのかしら。


 しかも、晴は花嫁装束から、上等そうな桜色の着物に着替えている。

 こんな上等な着物、晴には全く似合わない。


「よくもおめおめと顔を出せたものだねえ、晴。龍神様の生け贄になって食われたんじゃなかったのかい?まさか逃げ帰ってきた訳じゃないだろうね。母親がどうなるか、分からないわけじゃないでしょうに」


 母が苦々しげに言う。

 ところが、晴は(ひる)みもせず、真っ直ぐにこちらを向いて言うのだった。


「響子奥様。そのことで、お願いがあって参りました。人質はもう、必要ありません。母を返してください」


「はあ……?あなたいったい、何を言っているの。私はあなたが素直に龍神様の生け贄になるのなら、これから先も母親の面倒を見てやると言ったのよ。そんなことを言ってる暇があったらさっさと……」


「この方が、その龍神様なのです。奥様」

 晴は母の言葉を(さえぎ)って言った。


 この方が龍神様……?


「で、でも、龍神様って言ったら、真っ黒な龍だったわ。姿が全然違うじゃない!」

 

 こんな綺麗な人が龍神様だなんて。

 龍神様って言ったらもっと(いか)めしくて恐ろしくて……晴なんてとっくに手篭(てご)めにされて頭から食われているところだろうと思っていたのに……!


「そうですよ、晴。もしその方が本当に龍神様だと言うなら、証拠を見せてごらんなさい」


「証拠……?」


 晴の隣にたたずむ人が静かに口を開いた。

 無表情のままだったが、氷のように冷たい声だった。


迦具伊加土(かぐいかづち)随分(ずいぶん)(あなど)られたものだね……。君たちそれで本当に瑞守家の人間なの?」


「そうですよ……っ、黙って聞いてれば、さっきから失礼なことばっかり……!」


 そこで初めて、青年の傍らに羽の生えた白い蛇が浮かんでいることに気づいた。

 しかも気味の悪いことにその蛇は、人間の言葉を喋っているではないか。


「面倒だね……晴、この人たち、(いかづち)で撃ってもいい?」

 青年の冷ややかな声が、(こと)()げに言う。


 穏やかな青緑色だった瞳が、怒りを現すように、金色の光を帯びていた。


 龍神様、もしかして怒っていらっしゃる?

 これってかなり、まずい状況なのでは……?


「だ、ダメですご主人……!罪もない人たちに神力(しんりき)なんか使ったら、(とく)が下がってしまいます……っ!」


「何を言ってるの、(さく)。罪なら山ほどあるでしょう?大切な瑞守の姫巫女とその母君を(しいた)げ、あまつさえこのような卑怯な方法で無理矢理生け贄にさせるとは……」


 ピリピリとした空気が辺りを満たし、今にも(かみなり)が落ちそうだった。


「ひっ……ひぃ……っ!!」


 佐知子はあまりの恐ろしさに思わず母の腕にしがみついていた。

 瑞守の人間として多少の霊力を持つ佐知子にも、目の前の存在が恐ろしい神力(しんりき)を持っていることはひしひしと感じられた。


「待ってください、白夜様……!」

 ひりつくような空気を(さえぎ)って、晴の声が響いた。


「白夜様、この者達も、村を守るお役目を持った瑞守家の人間です。この者達が死んでしまったら、瑞守家が途絶えてしまう……」


「殺すとまでは言っていないよ。自分たちがどれほど罪深いか分からせるために、痛め付けるだけだ」


「ダメです!今のご主人がそんな器用な力加減、できるとは思えません……っ!」


 白蛇が告げた物騒(ぶっそう)な事実に、ますます(きも)が冷える。


「お願いです白夜様……、私はいいんです。母さえ無事に解放してもらえるのなら」


 晴の言葉に、少しずつ怒りが(しず)まるように、金色に光っていた龍神様の瞳が元に戻る。


「晴は優しいね。僕なら絶対にゆるさないけど。……晴の母君はどこにいるの?僕の気が変わらないうちにさっさとした方がいいと思うよ」


「お母様……!」

 佐知子は必死に母の腕を揺さぶった。

 このままでは本当に、母ともども殺されてしまう。


「わ、分かりました、分かりましたから……!晴、土蔵の鍵よ。凪子さんは土蔵にいるわ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ