表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

今年も楽しんだで賞・大賞!

作者: 縞々杜々
掲載日:2025/12/26


 クリスマスは、るぅちゃんにとって1年で一番きらきらしている日でした。


 左右に並んだ木の枝々がチカチカと星座のように光る通りを、お父さんと手をつないで歩きます。

 二人はお買い物の帰り道。

 お父さんの反対側の手には大きな白いふくろがさげられていて、中には大きなフライドチキンがつまった箱が入っていました。

 つないだ手を前後にふって、二人はトナカイの歌を歌います。

 お家に着くまで、思いつく限りのクリスマスの歌を歌い続けました。


 お父さんとお母さんと、お姉ちゃんとるぅちゃん、4人で競うようにごちそうを食べた後は、お母さんが作ってくれたケーキの出番です。

 今年のケーキは、チョコレートのスポンジとバニラのクリーム、黒と白がくるりと巻かれた切り株のロールケーキでした。

 あんまりおいしくて夢中で味わっていると、お姉ちゃんにほっぺたをつつかれました。

 クリームで真っ白になっていると笑われましたが、お姉ちゃんのほっぺたにもクリームがついていました。

 お母さんはゆっくりケーキを食べながらにこにこしていました。


 特別な夜の後には、特別な朝が来ます。


 るぅちゃんが目を覚ますと、ベッドの横に大きなネコさんのぬいぐるみがどしんと座っていました。

 うれしくて思わず飛びつくとふかりと受け止めてくれます。

 新しいお友達をすぐにでもだれかにしょうかいしたくて、手をつないでお姉ちゃんのお部屋までいきました。

 お姉ちゃんは頭まですっぽりとお布団に包まれて、ベッドの上で丸くなっていました。

 るぅちゃんはネコさんの両手をとって、ぽすんぽすんとお布団のてっぺんをたたきます。


「お姉ちゃん、お姉ちゃん、おはよう」

「うぅん……あと5分……」


 お布団の中からはくぐもったうめき声が聞こえます。

 めげずにぽすぽす続けていると、やっとぴょこりと頭が出てきました。


「……おはよ……るぅちゃん」


 お姉ちゃんは手をのばして、るぅちゃんとネコさんの頭をなでてくれました。

 しばらくねむそうに目をぱちぱちさせていましたが、まくらもとの緑の四角い包みに気がつくと、はっと目を覚ましました。

 お布団からはい出して包みを解きます。

 かけられていたきれいな黄色いリボンが落ちます。


「お姉ちゃん、このリボンちょーだい」

「いいよー」


 るぅちゃんのお願いに、手元のプレゼントを見つめたまま答えます。

 そして、絵本みたいに固い表紙の、でも絵本よりずっと厚みのある大きな本をかかげて目をかがやかせました。


「おおー! ついに続きが! サンタさんありがとう!」

「よかったねぇ」


 お姉ちゃんがあんまりうれしそうだったので、るぅちゃんはネコさんの手でお姉ちゃんの頭をなでてあげました。


 ***


 町中が星空になったような特別な日はもうおしまいです。


 ツリーにつるした赤・青・黄色のピカピカな丸いかざりを1つずつ外していきます。

 ドアにかざった白いリボンがかわいいリースも。

 るぅちゃんが作った折り紙のサンタさんとトナカイも。

 全て外して、ていねいに箱にしまいます。

 るぅちゃんとお姉ちゃんが箱のふたをパタンと閉じたころ、お父さんとお母さんはホウキやぞうきん、バケツを取り出して大そうじの仕上げを始めていました。


 お母さんがるぅちゃんに聞きます。


「るぅちゃんももう、お部屋を自分でおそうじできるかな?」

「できるよ!」


 るぅちゃんが元気に答えると、お母さんはゴミぶくろを1つくれました。


 ***


 さて、るぅちゃんのお部屋です。

 ネコさんにはベッドの上から見守ってもらいます。

 まずは残すものと捨てるものを分けなくてはいけません。

 たなに並んだ大きなカゴの1つを引っ張り出すと、横にたおして中身をざぁっとゆかに広げました。

 コロコロと転がっていくビー玉をあわてて集めてカゴにもどします。


 ウサギさんの小さな人形は、カゴへ。

 お誕生日のプレゼントについていたピンクのリボンも、カゴへ。

 おもちゃの箱の千切れたふたは、ゴミぶくろへ。

 お花のブローチは、ベッドにいるネコさんの胸元へ。

 クマさんの小さな人形は、ウサギさんのとなりへ。

 クシャクシャになった赤い折り紙は、ゴミぶくろへ。

 チョコレートの箱についていた青いリボンは、カゴへ。


 1つ目のカゴの仕分けが終わると元通りにたなの中へおしもどして、次のカゴを引っ張り出します。

 同じように横にたおします。

 クレヨンセット、黄色いハサミ、丸いケースの工作ノリが転がり出て、それに続いてバラバラとピンク、緑、オレンジ、水色などなどが色とりどりに広がりました。

 ウサギにカメに、ツル、ツル、ツル……。

 るぅちゃんが作った折り紙の動物達です。

 自分でも何を折ったのか分からないようなクチャクチャなものや、ほっぺたが熱くなるほど下手っぴなものはゴミぶくろへ入れてしまいます。

 それでも、ほとんどは特別を選ぶことも難しくて、そのままカゴにもどすことにしました。

 たくさんいるツルもです。


 中身を入れるためにカゴを起こすと、カタンっと固い音がしました。

 まだ何か残っていたようです。

 上からのぞくと、とうめいな折り紙ケースが入っていました。

 取り出してパカリと開きます。

 まだ開けていない新品の折り紙セットが1束。

 バラバラに灰色が1枚、黒が2枚、あい色が3枚。

 そして、今まで大事に取っておいた金色と銀色が3枚ずつ。

 それらがケースの中にきれいにそろえられて入っていました。


 るぅちゃんは金色の折り紙を1枚手に取ってじっくりとながめました。

 部屋の明かりにきらきら光って、とってもきれい。

 うんうん、と満足しながらケースにしまおうとして、ゆかに落ちているものに気が付きました。

 1つ目のカゴにもどすのを忘れてしまったのでしょう、お姉ちゃんにもらった黄色いリボンがくるりと輪をえがいていました。


 ぱちりぱちりと光がはじけるように、るぅちゃんはひらめきました。

 とっても特別なひらめきです。

 金色の折り紙を3枚とも取って、リボンを拾って、机に向かいます。

 折り紙の白い方を上にして。

 ドキドキと胸が鳴ります。

 紙の角と角をしっかり合わせて、半分に折りました。

 さあ、もう後もどりできません。

 金色の折り紙は折り目がつきやすいのですから。


「わぁっ? 千羽づる!?」


 部屋の中を見るなり悲鳴をあげたのはお姉ちゃんです。

 工作に夢中になっている内に、ゆかに広げたままの動物の群が見つかってしまったのです。

 でも、おそうじを手伝ってもらえました。


 ***


 大そうじが終わってリビングにはのんびりした空気が流れていました。

 お姉ちゃんはこたつ布団に首元までもぐりこんで、天板にほっぺたを乗せながらテレビをながめています。

 お母さんは四角い包みを解いてクッキーの箱を開けています。

 目の前にひらりと落ちたオレンジ色のリボンへ、お姉ちゃんはふーっと息をふきかけました。

 ひらっとリボンがおどります。

 お父さんがマグの4つ乗ったおぼんを持ってやって来ました。

 カフェオレを自分と向かいのお母さんの前へ、ホットミルクをお姉ちゃんの前とその横に置きます。

 そこへ、るぅちゃんがかけこんで来ます。


「あつまれ! みんな!」

「もうすでに集まってますけど」

「今日のおやつはおじいちゃんがくれたクッキーだよー」

「わぁーい! ……じゃない!」

「るぅちゃん、いらないの?」

「いるけど、食べるけど、後で!」


 るぅちゃんはゴッホンとわざとらしくせきばらいしてから、改めて声を張り上げました。


「ただいまより、”今年も楽しんだで賞・大賞”の授賞式を始めます!」

「今年も楽しんだで賞・大賞?」


 お姉ちゃんとお父さんは首をかしげましたが、お母さんがパチパチとはくしゅすると自分達もおくれて手をたたきました。

 るぅちゃんは手にしていたものを3つ、こたつの天板に並べました。

 真ん中にお花が開いたような、折り紙の金メダルです。

 リボンでペンダントになっています。

 るぅちゃんは黄色いリボンの金メダルを手に取ると、お母さんの前に立ちました。


「まずはお母さん!」

「はぁーい」


 お母さんはにこにこ笑って応えてくれます。


「お母さんは、ココアのスフレケーキをふわふわにおいしく焼き上げました。そのことをたたえて、おかしをたくさん作ったで賞・金賞を授与します!」

「ありがとうございます。来年はマカロンにチャレンジしたいです」


 黄色いリボンをお母さんの首にかけると、金メダルが胸元でゆれました。

 るぅちゃんはピンクのリボンを手に取ると、こたつを回ってお父さんへかけ寄りました。


「次はお父さん!」

「おー?」


 お父さんは、まだとまどっている様子でしたが、ひざをずらしてこちらに体を向けてくれました。


「お父さんはおぼんのカラオケ大会で100点を取りました。そのことをたたえて、お歌をたくさん歌ったで賞・金賞を授与します!」

「ありがとうございます。えーと、これからも精進いたします?」


 ピンクのリボンをお父さんの首にかけると、金メダルが首元でゆれました。

 るぅちゃんは青いリボンを手に取ると、お姉ちゃんの方へ向きました。


「次はお姉ちゃん!」

「はいはい」


 天板にほっぺたをくっつけたままだったお姉ちゃんは、体を起こしてるぅちゃんへ向かい合ってくれました。


「お姉ちゃんは本をいっぱい……今年は本どれくらい読んだ?」

「今読んでるのが167冊目」

「お姉ちゃんは本をいっぱいいっぱい読みました。そのことをたたえて、本をたくさん読んだで賞・金賞を授与します!」

「ありがとうございます」


 青いリボンをお姉ちゃんの首にかけると、金メダルがおなかの辺りでゆれました。


「これにて授賞式を、」

「ちょっと待って」


 るぅちゃんが満足気に閉会を告げようとすると、お姉ちゃんがそれをさえぎりました。

 るぅちゃんはぱちりと目をまたたかせます。


 お姉ちゃんは手をのばして、クッキーの箱から小ぶくろを1つ手に取りました。

 丸いバニラクッキーが1枚入っています。

 先ほど遊んでいたオレンジ色のリボンも取ると、大きく輪っかにして、交差させたはじっこをふくろの裏でおさえます。

 それをお父さんに差し出すと、心得た顔でセロハンテープを取って、ペトリとふくろとリボンをくっつけてくれました。


 お姉ちゃんはひざ立ちになって、るぅちゃんに向かい合います。

 オレンジのリボンを両手で広げながら、うーんと首をかしげました。


「折り紙、折り紙、何がいいかな……」

「この金メダルとか?」

「やっぱりツルじゃないかしら」


 お父さんはリボンをつまんで金メダルをゆらします。

 お母さんは両手を合わせてにこりと笑います。

 その助けぶねを受けて、お姉ちゃんはうなずきました。 


「るぅちゃんは、折り紙できれいにツルが折れるようになりました。そのことをたたえて、折り紙をたくさん折ったで賞・金賞を授与します」


 るぅちゃんの首にオレンジのリボンをかけます。

 まぁるくて、黄色くて、お月様みたいなクッキーがるぅちゃんの胸元でゆれました。

 自分の金メダルを一度見下ろして、るぅちゃんはぱぁっと顔をかがやかせました。


「ありがとうございます! 来年もいっぱい折ります!」


 ***


 おやつを食べ終わった後、るぅちゃんはさっそく新品の折り紙を開けて、金メダルをもう1つ作りました。

 クッキーがとってもおいしかったので。



 END

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ