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5.悪役令嬢とヒロイン

【遭遇(小説の中)】


魔法部隊詰所を後にしたアリシアはロードス殿下に「会わせたい人がいる」と、王宮の書庫に行く事になる。

沢山の本が貯蔵されている中で一人の女性が真剣に読書をしている。


アリシア達が書庫に入って来ても読書に夢中で気付かない。そんな彼女にロードス殿下が「シンシア~」と手を振ると彼女もロードス殿下に気付き手を振り返す。


アリシアは突然ロードス殿下と親しく話す令嬢が現れ何が起きたのか解らず目を丸くして佇む。


ロードス殿下がアリシアの側にシンシアを連れていく。

ロードス殿下の乳母はシンシアの母親であり、二人は幼馴染みだと紹介された


密かにロードス殿下に好意を抱き始めたアリシアはロードス殿下と親しく話すシンシアが婚約者でなかった事にホッとする一方、親しく話す二人に嫉妬し始める。


書庫を後にしたアリシアはロードス殿下とお茶の約束をする。だが、その約束の場には何故かシンシアがいた。

ロードス殿下と二人になるチャンスを邪魔されたアリシアは思わず「何でおりますの?」と聞いてしまう。


ロードス殿下が二人の間に入り、どうにか三人でお茶をする事になるのだが、アリシアは明らかに不機嫌な態度であった。


ロードス殿下からシンシアが書庫に通い詰めている理由を教えて貰う。シンシアは女性初の文官を目指していたのだ。


本来なら同姓が頑張っていることに応援するのだろう。

だけど、文官になると言う事はシンシアは王宮内で努める事になる。


ロードス殿下の優しさを独占したいアリシアはシンシアに文官になって欲しくなく、「無理じゃなくて、貴女は身の丈のあった殿方と婚姻を結ぶ方が運命だと思うわよ」と告げてしまう。

これにより、お茶会は暗い空気が漂い終わることになる。



【遭遇(現実)】


私達は王宮の書庫に行く、やはりこの物語の主人公であるシンシアいた。

小説の通りロードス殿下とシンシアが話し出す。


「あら、ロードス珍しいわね。字を読むと頭が痛くなるんじゃなかったかしら?」


「いつの話をしてるんだい?其に今日はこちらの令嬢に付き添っているだけさ」


「初めまして、私はシンシア・フローレンスと申します」


(何だろう。リーフアとは違うような・・・)


アリシアはシンシアに前の世界でヒロインであったリーファと重なり合わせていた。

前の世界ではヒロインに苦い目に遭っていたため、ヒロインに苦手意識を感じていたが、シンシアは小説の通りの人物であった。


アリシアは思う。

前の世界ではヒロインと仲良く出来なかったが、前世の記憶がある今ならヒロインと親しく出来るかもしれない。


「初めましてアリシアです。こちらの世界の事が知りたく書庫に案内して頂きました」


「こちらの世界?」


「アリシアは私達が召喚した聖女様なのだよ」


「いえ、聖女ではありません。まだ何が出来るか解らないのに期待されても困ります。属性も『闇』と出ましたし聖女との違うと思います」


(危ない、危ない。ロードスが聖女と言うワードをいきなり使うとは思わなかったわ。あまり巫女戯た事言うと、その黄金に輝くサラサラとした髪を私の能力で枯らして上げようかしら?)


「闇属性とは珍しいですね。その属性を扱える方は珍しいですので能力に期待されてしまうかもしれませんが無理されませんようにして下さい。ましてや聖女と言う言葉に縛り付けて彼女へプレッシャーを掛けるなんてもっての他ですよ!」


シンシアが語尾を強くしながらロードス殿下を睨む。ロードス殿下にこのような態度がとれるのは幼馴染みであるシンシアだけだと思う。ロードス殿下もシンシアに叱られて申し訳なさそうにしているが、どこか二人のやり取りが惚気にも見えてしまう。


アリシアはほんの少しのやり取りであったが感じていた。シンシアは本当に主人公的な性格なのではと。リーファは何処か計算染みた所があったがシンシアにはそれが感じられないのであった。


「そうそう、シンシアの母が私の乳母で私達は一時一緒に育てられた姉弟みたいなものなんだ。シンシアが王宮の文官を目指していると言う事でこの書庫の利用を許可している」


(知っているわ。ロードス殿下読者への説明お疲れ様)


「同じように目指す者達からしたら狡いと思われてしまいますが、これも私が母から頂いた財産だと思い、おもいっきり甘えさせて頂いてます」


(眩しい。眩しすぎるわ。こっちの世界の主人公は凄まじいほど眩しいわね。書庫なのに後光が差しているかのようだわ。これは誰からも好かれるんだろうなー。

っていけないわ。これ以上絡んでいると私がシンシアの勉強の邪魔をしているなんて噂がたてられても困る。直ぐに退散しなくちゃ)


「それでは、私は何冊か本を借りましてお部屋で読みたいと思いますので借りても宜しいですか?」


「別に良いが、ここで読まれれば良いのではないか?」


「私一人が来て滞在するなら良いかもしれませんが、こんなにも大勢で(特に貴方が)滞在致しましたらシンシア様に申し訳御座いません」


「そんな、私なんかに気を使わないで下さい」


「いえ、このような大勢で寄る場所ではなかったです。配慮を欠いてしまい申し訳御座いません。次にここへ訪れる時はロードス殿下抜きで訪れたいと思いますので、その時は一緒に読書を楽しみたいと思います。今日はロードス殿下のせいと言う事で」


「わ、私が一番悪いのか?」


「ええ。お断りしましたのに着いて来られましたから」


突然の悪者にされて困った顔をするロードス殿下にシンシアが笑う。どうにか最初の出会いは良い印象で終える事が出来たようであった。これも悪役を勝手出て下さったロードス殿下のお陰である。

ロードス殿下の髪の毛は本人が知らないところで危機に陥り、知らないところで救われた。


アリシアは書庫から幾つか本を取り出し部屋で読むことにした。アリシアはこの時を楽しみにしていたのだ。好きな小説の世界の裏設定を知ることが出来るのだから。


暫く読書に浸っていたアリシアが本を閉じ扉の方を見つめる。その姿を見た侍女のメイはこれが噂に聞く予知能力と言わんばかりに侍女も扉の方を見つめる。


するとロードス殿下付きの侍女が現れロードス殿下からお茶のお誘いをと知らせに来てくれた。メイは『やはり』と目を輝かせながら私の方に向き直した。


やっと王子様から解放されホッとしていた所だけど仕方がないと、ロードス殿下付きの侍女に直ぐにお伺いすると伝えた。

さっきまでロードスオーラを浴びせ続けられていたのにまた浴びないと行けないのかと溜め息が思わず出てしまった。


「ハァー」


(ヤバイヤバイ、思わず溜め息が出てしまったわ)


使いの者が私の溜め息を聞いて驚いている。

皆からしたらロードス殿下からお誘いが来るなんて幸せな事なのだ。なのに溜め息を吐く令嬢が目の前にいるのだから驚いてしまうはず。


でも私からしたらどんなにロードス殿下が見目麗しくてもロードス殿下を疑似餌にした魔物が大きな口を開けて待っているようにしか思えない。


だけど行くしかない。

その場に来ると思われるシンシアに会いに。

嫌々、ロードスがいるお茶会の場所に向かうとやはりシンシアの姿もあった。


「ご免なさい、私帰ろうとしたらロードスに一緒にどうだと誘われて。アリシア様ともっとお話をしたかったしお邪魔して申し訳ありません」


「いいえ。寧ろいて下さり助かりましたわ。殿方と二人でお茶など困り果てておりましたが折角のロードス殿下のご好意をお断りする訳にも行きませんので来ることに致しました。ですがシンシア様がいて下さりあらぬ噂の心配をすることがなく助かりました」


(本当に助かったわ。こんな場面を他の人に見られていたら主人公の敵確定してたじゃない)


「そうか。そうだな。その辺りの気遣いが出来なく度々シンシアに怒られていたのだが、また同じ過ちをしてしまったようだな」


シンシアがいてホッとするアリシアであった。アリシアはロードス殿下には興味がないような発言を繰り返し変な噂が立たないようにしていた。


それはもう少しで不敬罪と問われても可笑しくないものまであった。

だが、ここで二人で食事をしてしまえばその努力も無駄になってしまう。

そんな中でのシンシアであった。

小説で来るとは知っていたとはいえ、シンシアには感謝しかない。


ロードス殿下を疑似餌にして誘う魔物の口をシンシアが閉じてくれたようであった。



【シナリオの変化】


「実は来週に第三騎士団と共に近郊の森へ魔物を間引に行く予定でね。騎士団の練習を兼ねて行うのだがアリシア令嬢も一緒にどうだろうか?」


ああ、小説のあの展開ね。私が一人の騎士に奇跡を与えた展開になろうとしているのね。もしかしたら断れるかしら?


「まだ、自信の能力が何か解らない私に魔物がいる森に行けと言われるのですか?」


「そうよロードス。アリシア様には危険過ぎるわ。せめて、ご自身の能力がはっきりと解るまで控えるべきよ」


(シンシア~~~ありがとう!!)


最早、アリシアにとってシンシアは悪役令嬢の敵ではなく強い見方にしか見えなかった。


(だけど、ロードス殿下は諦めないわよね。だってお父上のご指示ですものね)


今回は討伐は事前に決定していた事は確かであった。だが、そこにアリシアを参加させよとビスマルク国王陛下が決定した。ロードス殿下は反対したがビスマルク国王陛下に命は覆る事はなかった。


「だが、レイドス魔法部隊長殿が是非にアリシア令嬢も連れて行くべきだと言うものでな」


「えっ!レイドス様がですか?」


「どうだろうか、レイドス魔法部隊長殿が離れず守ると言われているし討伐の騎士からも護衛として側にいるようにするから心配はいらないと思う。一緒に行って頂けないだろうか?」


(可笑しいわね。話ではレイドスは討伐に参加しなかったはず・・・)


ここで突っぱねても良かっけど、これ以上拒否するとロードス殿下に申し訳ない。正直いってロードス殿下の事はどうでも良かったが将来のシンシアの夫となる者を困らせる訳にはいけない。


「解りました。宜しくお願い致します」


私の返事を聞き屈託のない笑顔を浮かべるロードス殿下にシンシアが頬を赤らめながら見つめている。


(魔物がいる森に行くことになったのだけど心配してくれないのねシンシア・・・)


私は心の中で泣くことにした。

暫くしてアリシアは悩む。小説では参加しないはずのレイドスが参加する事になったのはどうしてだろうかと。


しかもレイドスは私の護衛役。レイドスの目を盗んで奇襲を仕掛けてくる魔物が想像つかなかった。

はたしてシナリオはどのように修正されてしまうのだろうか?

~おまけ~


第三部隊に詰め寄るレイドス


「王命でアレが参加するらしいな。俺も行くぞ!」


「はぁ?今回は魔法部隊に招集は・・・」


「俺だけでいいから加えろ!調査だの何だの適当に理由付けられるだろ?」


「まぁ~出来るが」


「任せた」


それを言い終わるとレイドスは姿を消す。


「どうしました部隊長?」


「いや、あのレイドスはどうやら例の異世界人に夢中らしい」


ここからレイドスがアリシアに一目惚れしたと言う話が広がった。



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