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2.悪役令嬢は聖女ではありません!

【悪役令嬢は聖女ではありません】


アリシアは落ち着いたので今一度謁見をお願いしたい旨を侍女に伝えると、王家専用の応接間に案内された。


「お体の方は大丈夫ですか?」


セフィーロ王妃が心配そうにアリシアの方を見る。


「はい。一晩休ませて頂き落ち着く事が出来ました。申し訳御座いませんが、今一度この国についてお聞かせ願えますでしょうか?」


「実はこのラッドフィールド国の遥か北にはこの国を作られたシソ様の結界によって恐ろしい魔物から守られおる。だが最近になって結界にヒビが入ったのか強い魔物が現れ始め魔物による被害が増えつつある。

シソ様の予言ではもうすぐに結界が壊れると言われているため関係があると見ていている。そのシソ様の言葉に『封印が解かれし時、聖女が再び封印せし』と伝えられている。更に『召喚によって力ありし者が現れる』とも伝えられている。

我々は力ありし者が聖女ではないのかと思い、我が責任によって召喚の儀式を行うこととなった。そして、現れたのはお主であったのだ。突然に呼び出されたお主には申し訳ないが我が国の民を苦しみから救いだしてくれぬだろうか?」


『はい。』と言いたいがアリシアにはそんな能力はない。

いや、小説の話を知っているのでアリシアにも確かに能力はある。

しかしアリシアの能力は『見返り』が必要であり、王家が求める能力ではなかった。

だから、期待されてしまってはとアリシアとしては困るのであった。


「申し訳ございません。私個人としてもお助けしたい気持ちはあるのですが、何せそのような力がございません。期待はずれの返事を致しまして申し訳ないのですが、こればかりは無理かと思います」


「シソ様もこちらの世界に来られるまでは何も能力を持ち合わせていなかったらしい。おそらく、アリシア殿にも何かしらの能力を賜ったかもしれん。能力調査だけでもしてもらえぬだろうか」


「解りました。ですが、私は聖女と言われるような事をしてきた事もございませんので期待されても困ります。それと先程の始祖様のお言葉の『召喚によって力ありし者が現れる』と言うお言葉ですが、もし力ありし者が聖女であるならば、ここは聖女が現れるとせれていたかと思います。

ですので、私は聖女ではなく、私のその能力と言うものが聖女となる者を見付け出すのかと思います。なるべくご協力して行きたいと思いますが、聖女であると誤解を招きたくありませんのでご理解を頂きたいと思います」


「解った。アリシア殿の推察も検証していこう。明日には魔力測定の準備が整うかと思う。それまでゆっくり休まれよ」


「お心遣いありがとうございます」


アリシアは第一王子の婚約者として鍛えられた渾身のカテーシーを行いその場を後にした。



【悪役令嬢は王子の好意をお断りします】


アリシアは侍女に部屋まで案内されるとアリシアはソファーに座るとドアの方を見つめる。


「どうかされましたか?」


「そろそろね」


侍女は何がそろそろなのか全く解らない。

だが、次の瞬間に侍女は理解と共にアリシアに対し恐怖を感じていた。

アリシアが見つめるドアの方からノックされ男性の声で入室の許可を求められたからであった。


彼女からしたら私が予知したように思えたと思う。

だが、アリシアとしてはただ小説の内容の通りだったでけであった。


部屋に入って来たのは小説に書かれていた通りロードス王子であった。

ロードス殿下は入室の許可を求めて来たため、ドアの開放と侍女を複数名室内に待機して貰う事にした。


「先程は挨拶出来ずすみません。私はラッドフィールド国第一王子ロードスと申します。この度は突然の召喚による非礼を王家の者として謝罪せずには入られず突然の訪問をお許し下さい」


「いえ、気にしないで下さい」


「そのように言って頂きありがとうございます。突然にこの国に来ることになってしまい、色々と勝手が違い困惑されているでしょうから私の方で誠心誠意サポートをしていきたいと思います」


「あっ、いえ、本当に気にしないで下さい」


「えっ・・・」


「えーと、私が元いた世界と差程変わらないですので大丈夫です。それに身分あるお方が常に側におられますと心落ち着かず休まる事が出来ません。もし、私の事を心配して下さるのなら専属の侍女を着けて頂けるだけで大丈夫です」


「それは・・・」


「それに私が本当に聖女とは思えません。ですが、得られた力でどのように皆様のお助けとなれるか解りませんが出来る限り国に貢献していきたいと思っております」


「有り難きお言葉感謝致します。専属侍女につきましては明日にはご紹介出来るかと思います」


「ありがとうございます。申し訳御座いません、昨日の疲れがまだ残っているようで、そろそろ横になろうかなと思っております」


私は『早く帰れ』と言う言葉を究極にやんわりとロードス殿下に告げる。


「これは申し訳ない。私としたことが失礼致しました。それでは続きは明日にしたいと思います」


ロードスはお辞儀をすると退出した。


(うん!?)


(いま、『続きは明日』って言った?明日も来るって事?

確かに小説でも翌日もロードス殿下と一緒と書かれていたけど返事が違っても小説と同じ流れになるのね。

と、言う事はもしかしたら彼女とも会うことになるのかも)


私のロードス殿下の印象は天性のすけこましであった。あのような容姿で甘い言葉を掛けられれば誰だって勘違いをする令嬢が出ても仕方がない。小説の中でもアリシア以外の女性がロードス殿下に好意を抱いていることが書かれていた。私だって小説の話を知っていなかったら惚れていたかもしれない。


アリシアはベッドに横になる。

2日続けてゆっくりと横に寝れる日など今までにない。

この世界にはアリシアを叱責する者も蔑む者もいない。

この世界に来てまだ2日目であるが、アリシアはこちらの世界に来て良かったと思っている。

そして、願わくば運命を回避し楽しく暮らしていきたいと思っていた。


(そう言えば向こうの世界はどうなったのかしら?)

~おまけ~


侍女達の休憩室にて


「凄いわ。アリシア様の能力は予知能力よ!」


先程までアリシアの側にいた侍女がアリシアの行動を仲間の侍女に話す。

この日より侍女達から『エスパーアリシア』と呼ばれていることに本人は知らない。

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