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18.冒険によって悪役令嬢は変化する

【悪役令嬢は聖女に土下座する】


ここは王宮の何でもない普通の廊下。

もし、名を付けるとするならばシンシアが王家の妃教育を受けるため毎日通う廊下である。

その廊下でシンシアは狼狽えていた。

狼狽えるシンシアの前には土下座しているアリシアがいた。


「ア、アリシアさん、何をされているのですか?」


「ご免なさい、シンシア!私、自己犠牲が自己満足な事だと今まで解っていなかったわ。私はあなたの気持ちを一つも考えていなかった。今度からは皆の気持ちを考えながら行動する。こんな私なんて許せないのは解っているわ。だけと、あなたに謝る事だけさせて欲しいの!本当にご免なさいシンシア」


「アリシアさん・・・」


アリシアの謝罪に切ないと言うか、申し訳ないと言うか、感極まりそうと言うか、なんとも言葉に表せない感情がシンシアの心を覆っていた。


「何かしら、あれ?」


だが、通りすがる王宮の使用人や文官のひそひそとした声にシンシアは我に返る。


「わ、解りましたから止めて下さい!」


シンシアはアリシアの体を支え立たせる。


「アリシアさん、謝らなければ行けないのは私の方です。私が不甲斐ないせいなのに、私はアリシアさんに酷いことを言ってしまいました。あの後、王宮に戻ってからどんなに後悔したことか。実はアリシアさん達が戻って来られたと聞いて私も謝罪したく伺ったのですがアリシアさんに先越されてしまいました」


「えっ!今日も王妃教育で来られたのではないの?」


「今日はお休みです。何やら歴史的な発見をしたとかで中止になりました。それで今日はアリシアさんにお会いしたくお伺いしました」


シンシアがアリシアに笑顔でそう告げると、アリシアの目が涙で滲む。


「シンシアみたいな子を怒らせるなんて私はやっぱり・・・」


再び土下座をしようとするアリシアの体を掴み「だから座るのは止めて下さい!」と、再びシンシアを怒らせてしまった。



【悪役令嬢は一人暮らしをご所望する】


その日の午後、私達は王宮の庭でお茶をすることにした。紫蘇さんの隠れ家が見つかった事で城の中は慌ただしい。シンシアの王妃教育がないのも、それによってであった。私達のお茶会に息抜きと言ってロードス殿下とレイドスが加わって来た。


「それにしてもアリシアさんの部屋は大丈夫なのですか?」


大丈夫かと問われれば大丈夫ではない。レイドスの魔法によって木っ端微塵となった壁の瓦礫が部屋中飛び散り足の踏み場もない。

それどころか、朝から城の文官や魔道士達が紫蘇さんの隠れ家の調査と言って私の部屋に踏み入っている。

もはや、瓦礫だらけとなったせいか、彼等にはレディの部屋だと言うことを忘れているらしい。


「もはやあそこは部屋ではなく通路となりましたわね。ですけど、あの部屋は私の部屋と言うより王家から用意して頂いたお部屋ですから、これを機会に自身の住まいを探そうかと思っております」


「えっ!王宮から出られるのですか?」


「ええ。と言っても、先ずは仕事を探さなくてはならないのですが」


アリシアは衣食住を王家に甘えている状況である。流石にこのままと言うのは気まずい。『治療師』などもいいが、神樹の葉を多く用意する必要がある。


アリシアは神樹の葉の事を考えていたら、自然と魔法のポーチを触っていた。


「それにしても、このポーチって便利ね」


「ポーチか・・・」


「どうしたのレイドス?」


「いや、君の住み家として丁度良い建物がある。おそらくだが、君なら大丈夫だと思う」


私なら大丈夫?

どう言う事か解らないけど、「あそこか?」とロードス殿下は知っているような口振りだったことから、やや有名な建物みたい。


そして、ロードス殿下が最後に告げた「国王陛下には私から許可を貰おう」と言う言葉。国王陛下の許可がいるところが私の家に丁度良い!?

今回のお茶会は何だか不安が残るお茶会となってしまった。



【悪役令嬢は職を得る】


「謁見?」


「はい。本日の午後2時に国王陛下の元にとの事です」


あのお茶会から翌日、ロードス殿下から使いの者が謁見の知らせに来た。

まさか新居の件で呼び出されたのかと思うと、新居を探していると言う発言が大事になって来てしまい、今更であるが、言ってしまった事を後悔した。

使いの者に返事をして帰って貰うと、メイに謁見の準備をして貰う。


「突然の呼び出しをすまない。実はアリシア殿に仕事を頼みたい」


謁見は王家からの仕事の申し出であった。

仕事の内容はおおよその予測が着いていた。


「仕事と言うのは紫蘇様の隠れ家にあった書物についてでしょうか?」


「うむ。我々には解らぬ言葉で書かれたものを訳して欲しい」


「弱輩な私がどこまでお役人立てるか解りませんが、一生懸命ご協力したいと思います」


「おお、そういって頂けると助かる。それでは、宰相よ頼む」


国王陛下がそう述べると国王陛下の側で立っている宰相が手元にある書状を読み上げる。


『アリシア・ローデンブルク殿、そなたは王墓の洞窟の未踏地を突破し、シソ様の屋敷とそこに眠る書物を発見された。この功績を讃えアリシア・ローデンブルク殿に男爵の爵位を授けるものとする』


アリシアは何の前触れもなく男爵の授爵となり、戸惑ったが、国王陛下に感謝の言葉を述べる。

男爵となったアリシアの領地は紫蘇さんの隠れ家となり、納める税金は研究で出入りを自由にする事で免除された。


また、王宮書庫や隠れ家の書庫にある日本語で書かれた書物の翻訳がアリシアの仕事として与えられ、給金を得ることが出来た。


「また、王都内での住まいだが、現在グレマエイス国に申し出をしているところであるため暫し待って欲しい」


グレマエイス国。

どこかで聞いた事があったような・・・



【翻訳業に励む?】


男爵となり、国王陛下から正式に依頼され悪役令嬢は翻訳家に転職した。


新居については国王陛下から報せが来るまで待つことにし、王宮にある別の部屋から今まで過ごしていた部屋を通り、アリシアの領地となった紫蘇さんの隠れ家に通勤する事となった。

毎回、今まで過ごした部屋を通るときは、何とも言えない気持ちになる。


屋根裏部屋の書庫にはたまにレイドスが来ている事もある。私が日本語で書かれた書物を翻訳すると共にレイドスが自国の言葉で書かれた書物の調査を行っていた。

尚、紫蘇さんの隠れ家の発見により、その調査が魔道部隊の管轄となったことで、部隊の予算が大幅に増えたらしい。レイドスはかなり上機嫌に違いない。


「と、思っているのだろ?」


少し息抜きをと紫蘇さんの隠れ家の庭先でお茶をする事にしていたが何故かレイドスもいる。


「違うの?」


「お前、増員もなく研究対象が未知数なものを与えられたのだぞ予算が増えたくらいで喜べると思うか?」


「そんな忙しいのに大丈夫なの?こんなところにいて」


「・・・」


(逃げて来たわね。フルーレも可哀想ね)


「アリシア様、もし邪魔なら摘まみ出しましょうか?」


「大丈夫よフェイリル」


「おい、何でフェイリルがここにいる?」


「簡単よ。フェイリルを私の従者にしたのよ。ロードス殿下にも許可を貰ってあるわよ。『未来の死を少しでも回避したいの』って言ったら許可してくれたわ」


フェイリルにはアリシアの護衛とシンシアの近くにいさせてあげる事を交換条件としている。フェイリル自身も「面白い」と言っていたので、満更ではないと思う。


尚、フェイリルとアリシアの横で一緒にお茶を啜っているメイは授爵されてから男爵様と呼ばれたが、アリシア自身が男爵と言う呼び名が好きでないため、今まで通り呼んで欲しいと頼んである。


「フェイリル、お前はそれでいいのか?」


「はい。私はアリシア様の事が気に入りました。それにアリシア様の側におりますとシンシアにも会うことが出来ますので私としても利に叶っております」


「まーフェイリルがいいならいいが」


「それで?それだけで来たのではないのでしょ?まさか忙しいから逃げ出して来たわけではないわよね」


「実は地下の転移魔方陣があった部屋があったろ。あの部屋は転移の事で頭がいっぱいで探索していなかったから調べてみたら、あの部屋から隠し部屋が見つかった」


「!!」


確かにあの時は、帰ることしか考えられずにいたから、あの部屋の探索はしていなかった。


「それで?何があったの?」


「ああ、挿し絵だらけの書物があった。どうやら、第二の書庫と思われる。だが、そこに書かれている言葉は全て日本語で書かれていて我々では解読できないでいる。すまないが、屋根裏部屋の調査より先に隠し部屋の書庫を一通り見てくれないか?」


レイドスからしたら屋根裏部屋の書庫より、隠し部屋の書庫の方が大事なものが置かれていると思っているらしい。アリシアは休憩を終わらせ隠し部屋の書庫に向かう事にした。


そう言えば、今の時点で何か驚くようなものは見つかったのか?


(驚くもの・・・)


「ええ、あったわ。浦○太郎って実はドライアイスによる窒息死が原因だったらしいわよ」


「誰だそいつは?」



【紫蘇様は漫画好き】


アリシアはレイドスに新しく見つかった隠し部屋まで案内して貰った。


日々通っている転移魔法と螺旋階段。その奥の壁に窪みみたいなものがあるが、レイドスがその窪みに指を入れグルンっと、円を描くように回す。すると、扉が開き隠された部屋が現れた。

日々の通勤路にこんな秘密があったなど全く知らなかったし、気にも止めていなかった。


部屋の中には沢山の書物が置いてある。

アリシアは何気なく一冊の書物を取り出すと、アリシアは驚くべき真実を知ることとなった。


レイドスが言った沢山の挿し絵。確かにこれは沢山の挿し絵だ。寧ろ挿し絵がメインとなっている。そしてアリシアはこの書物の事を知っている。それどころか、この書庫に置いてある殆どの書物が、アリシアの知るものであった。


「どうだ?何か解ったか?」


「漫画よ」


「まんが?」


「残念だけど、この部屋にあるのは娯楽のための本しかないわね。だけど、料理を題材にしたものや生活を題材にしたものなど、中にはこの世界に生かせるものもあると思うから、探してみるけど・・・」


「どうした?」


「私、この部屋に入り浸りになってしまうかも・・・

だって、あれもこれも懐かしいものばかりよ!ほら、来れなんて前世の私が子供の頃の作品よ!あー、これもあるのね、懐かしいわー♪」


アリシアは長い時間、懐かしい作品に胸を弾ませてレイドスの存在を完全に忘れてしまった。

部屋の隅々まで見て少し違和感を感じる。


「この部屋には何処にも小説がないのね」


「前世の君が読んでいたものか?」


「ええ。小説って、文字だけでストーリーを伝えるものなのだけど、そういったものが一切ないのよ。可笑しいと思わない?だって、紫蘇さんって私が関わる二つの世界の小説を書いた人よ。その人が小説が嫌いだとは思わないのだけど・・・」


「・・・同族嫌悪」


「えっ!」


「いや、違うな。『劣等感』と言う方があっているかもしれない。『小説』と言うものに悩んでいて、同業者の作品を読むと自分との才能の差が露となるからと、避けていたのかもしれない」


「・・・」


ここ最近、少しずつ紫蘇と言う人物の性格が解りつつある。最初はどれだけ偉大な方なのかと思ったが、知れば知るほど近所にいる普通の人のように思えてきた。


~ 4時間後 ~


アリシアとレイドスは、まだ隠し部屋にいる。

と、言ってもアリシアは懐かしい漫画をメイが淹れてくれた紅茶を飲みながら読み漁っていただけであった。レイドスはアリシアの後ろで腕組をしながら貧乏ゆすりをして立っている。


アリシアはそんなレイドスの事を構うことなく漫画を読み続ける。アリシアにとってここは漫画喫茶みたいで天国であった。

レイドスも4時間立ちっぱなしで疲れてきたのか、我慢の限界を迎えたようだ。


「なるほど、この部屋に入り浸ってしまうと言うのも嘘ではなさそうだな。アリシアのこの部屋への入出は禁じよう」


「そ、それはちょっと酷くない!」


「後で一冊ずつ、君の部屋に届けるとしよう」


まあいい。

この部屋の場所や扉の開き方は解ったから、後で内緒で来ればいい。


「君の事だから、ばれないように後で来れば良いと思っているかもしれないが、シンシア嬢に頼んで君だけを拒絶してもらう結界を張って貰う。『君がここに入り浸り会えなくなる』とでも伝えれば喜んで張ってくれるだろう」


「そ、そんな・・・」


レイドスの推測は正しく、シンシアの『アリシア』だけを拒絶する結界は成功に終わった。

少しだけ、シンシアの拒絶の精度強化をしてしまった事を後悔した。本当に少しだけ。



【王宮火災事件】


王宮内のある一室に煙が立ち籠る。

皆が家事だと騒ぎ始めた。


「煙の場所は何処だ?」


「調理室だそうです」


「調理室?煙と一緒に焦げた油の臭いがする。まさか誰かが油に火を着けたままにしてたのか?だとしたらヤバイぞ!」


油による火災はなかなか火が消えない。火元がそことなると鎮火は難しい。


「文官や使用人の避難を!油による火災だとすると水系の魔法だけでは駄目だ。土魔法を使える者も私と共に調理室にこい!」


レイドスが部下に指示を出す。

フェイリルとメイがレイドスの元に駆け寄って来た。


「すみません。アリシア様の姿をお見掛けしませんでしたでしょうか。私達がお部屋に伺った時には既に何処かに出られた後だったみたいで、方々探しているのですが何処にもおりません。」


「くそ!急ぐぞ!」


レイドスは魔法で移動速度を上昇させ、数秒で調理室までたどり着く事が出来た。レイドスは調理室の扉を勢いよく蹴破ると煙の奥にドレスらしきものが見える。


「アリシア!大丈夫か!」


「ふぁい?」


情けない声が聞こえたがアリシアの声に間違いない。

レイドスは調理室の換気が作動していない事を確認すると換気を作動させ、部下達は調理室の窓を全開にした。

すると、煙は徐々に薄まり、布を口元に当てたアリシアが何かを揚げている姿が見えて来た。


「ふぉひたふぉ、みんひゃ(どうしたの、皆)?」


アリシアがこの世界に来て一番の騒動となった王宮火災事件は皆の迅速な行動により、何事もなく終わった。

そして、アリシアは魔法部隊の詰所に呼び出されている。


「前にも見たことがある姿だが?」


「土下座です」


「俺は説明をしてくれと行ったのだが君はその体勢で説明出来るのか?」


レイドスより立つよう指摘され私は申し訳なさそうに立ち上がった。レイドスのリズムよく机を叩く指の音がレイドスの怒りのバラメーターのように聞こえる。


「それでは説明して貰おうか。なぜこのラッドフィールド王宮を燃やそうとした?」


「も、燃やそうだなんて失礼ね。私はただ料理をしていただけよ!来週、シンシアと料理を一緒に作る約束したから少し練習しようかなーと思って・・・

ほら、足を引っ張る訳にはいかないじゃない。だから岩芋(ジャガイモみたいな芋)を油で揚げていただけで・・・


「ほー、君にはこの黒い物体が料理なのか?」


レイドスはまるで汚いものを触るかのように人差し指と親指で摘まむようにアリシアの料理と思わしき黒い物体を持ち上げていた。


「油で上げるだけなら簡単そうで私でも出来ると思ったのよ。油に入れた途端に爆発するかのようなもの凄い音がしたけど料理ってそういうものかと・・・

確かに前世で見た料理番組にはあんなシーンなかったけど・・・個人差の範囲かな-と・・・」


「本当に料理だったのか・・・」


レイドスは自身が摘まんでいる黒き物体が料理である事が信じられないと、苦虫を噛み潰したかのような顔で黒き物体を見つめている。


「上手く出来たらレイドスにも食べて貰いたいなーと・・・」


「これをか・・・」


レイドスは目の前の黒い物体を見つめる目が更に厳しくなる。あわやこれが自分の口に入ると思うと恐ろしくなり、背筋に寒気がしてきた。


「と言うことだが宰相様どうする?」


レイドスの隣で話を聞いていた宰相にレイドスは判断をあおる事にした。王宮のボヤ騒ぎだ。魔法部隊だけの判断で済む訳がない。


「この度はあくまでも調理の失敗と言うことでしたので今回は罪を問うことはしないものとしましょう。

ですがアリシア様、貴女が行った事はラッドフィールド王宮を火事にさせる事だったのですよ。

しかも油による火事は鎮火しにくく大きな被害が出たかも知れません。此が何かに引火してボヤでも起こしただけで放火罪適用され最低でも10年は牢屋に入れられてしまいます。

これは悪意があるなし関係なくです。それだけ火の扱いは重要視されているのです。

其れにそのドレスで料理などもっての他です。引火でもしましたらどうなったことか。少しでも火種が衣服に飛んでいたらアリシア様がそこの黒い物体のようになっていたことでしょう。それだけドレスは引火しやすいものなのですよ」


「はい・・・」


「アリシア様には今後、お一人で調理室に入ることを禁止致します。宜しいですね?」


「はい・・・」


宰相は、事の顛末を国王陛下に伝えなければならないため、控え室から出ていった。


「だが普通するか?護衛や侍女の目を盗んで調理しようとするなど」


「失敗するとこ見られたら恥ずかしかったから・・・」


「だが、お前の失敗した料理だったらしいこの物体は皆に知られる事になったぞ。事が事だから王家にも報告と同時にお見せしなければならない」


「はい・・・」


この話は王宮中に知れ渡る事になり、ラッドフィールド国内の学園内で貴族令嬢に対し調理実習が授業に加わることになった。また、魔道部隊では耐火性のドレスが開発された。

これはある意味でアリシアの実績と後世で語られる事になる。



【地獄のクッキング】


王宮火災事件から時が経ち、シンシアとの料理作りの日を迎える。

シンシアは事前にロードス殿下から呉々も気を付けるようにと、忠告を受けていたらしい。シンシアは大袈裟なと笑っていたが、ロードス殿下から黒き謎の物体の料理と思われしものを見せられると、眉間にシワを寄せて物体を見つめていたと言う。あのシンシアが眉間にシワを寄せるなんて・・・


「おはようございますアリシアさん、今日は頑張りましょうね」


「ええ。宜しくね。ただ、それにしても凄い人の集まりね」


アリシアは後ろを見るとバルフレアとレイドスが壁際に立っている。また、ドアの向こうには水魔法と土魔法が使える魔道士が大勢控えていた。


「そんなに私達の手作りが食べたいなんて、期待され過ぎちゃって緊張しちゃうわね」


シンシアがアリシアの言葉を聞いて後ろをチラッと見るとバルフレアとレイドスが首を横に降っているのに気付いたがアリシアには内緒にする事にした。


当初の予定では今日はプリンを作る予定であった。だが、『サラダにせよ』と、王命が出されたことにより

サラダを作る事になった。まさか、こんな事で王命が出るなんて、皆が私達に注目していると思うと恥ずかしく思うアリシアであった。


「それではアリシアさん、そこの野菜を千切りにしてみて下さい。ゆっくりでいいですし太い細いは気にしないで大丈夫です」


千切り。

テレビで見たことあるわ。ゆっくり切れば私でも出きるはず。

アリシアは包丁を握り野菜めがけて振り下ろすも、野菜は切れる事がなかった。

アリシアの手にあった包丁がなくなっていたのだ。


???


あれ?


包丁が消えた!?


下を探しても落ちていない。辺りを探しても見当たらない。可笑しいと、包丁を探すアリシアに後ろから声を掛けられる。


「おい!」


「えっ!」


「これは何の真似だ?」


「あっ!」


私が持っていた包丁が手からすり抜けたようで、レイドスの顔をかすめ後ろの壁に刺さっていた。


「ちょっと、包丁ってこんなに軽いとは思わなくて思わずすり抜けてしまっただけよ」


「お前、短剣は扱えるだろ?」


「短剣は私に合わせて軽くしてあるって言ったじゃない。だから、包丁は重いと思ってたのよ」


気を取り直して千切りをと、ゆっくりであるが今度は包丁をしっかり握って野菜を切る。

アリシアが野菜を切るのに集中しているなかで後ろから集中を乱す話し声が聞こえる。


「な~レイドス、もしかして俺達、出来上がった料理を喰わされるのか?」


「・・・」


「俺、好き嫌いないが、流石に謎の黒い物体は食え・・・」


バルフレアが何かを言い終わる前にバルフレアの顔を霞め再び包丁が壁に刺さっていた。


「今のはわざとだろ?」


「失礼ね。狙ってれば霞めるなんて芸当出来るわけないじゃない。ずれて顔に刺さったはずよ!」


「あ、アリシアさん・・・?」


「あっ!ごめんなさい。後ろが煩くて。直ぐに野菜を切るわね」


こうして、サラダ作りは順調に進む・・・

はずであった。

アリシアは何故か魔道部隊の詰所で正座をしていた。


「で、何でサラダが黒く焼け焦げている?」


「生だと危険かと思って火で軽く炒めた方がいいかな~と・・・」


「シンシア嬢に何故聞かなかった?」


「シンシアが洗い物していて忙しそうだったから・・・」


「それで、あの火柱か?」


「勢いよく一気に炒めた方がいいかな~て・・・」


「ふーっ、此度の件により王家は君が料理を行うことは棄権であると判断された。ついては本日より1年間料理を行う事を禁ずる」


「ええーー!」


「ええーじゃない!先ずは1年間、常識を身に付けてからだ」


「折角、シンシアと一緒に料理を作れると思ったのに・・・」


「それでしたら、私に前世の料理を教えて下さい。そしたら、私がアリシアさんから教えて貰った調理方法で料理を作ります。これも共同料理でしょ」


渋々、シンシアの提案にのる。

アリシアの記憶にある料理をシンシアなりに再現すると、その料理の美味しさが好評となり『アリシアが考える創作料理』が大ヒットとなり数年後には創作料理のカリスマとして世間に讃えられる事になる。


世間は知らない。

この料理本を出した本人が料理を作れないことを・・・

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