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13.悪役令嬢はコンパを開く

【悪女は悪女に勝てない】


王妃との謁見から数日後に王家より全国民にシンシアを正式に聖女として認めロードス殿下との婚約を発表した。

件の男は病室に運び目が覚めるのを待ったが、男は目が覚めた途端にお礼と謝罪を述べ逃げるように帰っていった。

そのため最後まで彼の名前を聞く事が出来なかったがこれ以降、この男性がシンシアに近付く事はなかった。


めでたし、めでたし。


・・・


「ではないわ!」


私がとつぜんに声をあげたことにより隣にいたレイドスが驚いている。


「突然にどうした?」


「まだ三人の令嬢がいるわ」


「シンシア令嬢がロードス殿下の婚約者として王家から正式に発表されたのだ。これ以上は大丈夫じゃないのか?」


「甘い、甘いわレイドス!貴方シェイクにガムシロップ入れるくらい甘いわよ」


「そもそもシェイクってやつが知らん」


「女性の妬みがそんな簡単に解消される訳ないじゃない」


「それじゃどうするんだ?」


「実はレイドスにお願いがあるんだけど・・・」


あの三人の苛めは必ず起きる。レイドスにそれとなく頼み彼女らの行動を監視して一週間が経とうかとしたところに令嬢が怪しい行動をとろうとしていた。

私は報せを受けその令嬢の元に向かう。


「何をやっているのかしら?」


三人が手に持っていたのはシンシアの私物であった。どこで手に入れたのかその私物を噴水の水の中に投げ込もうとしていた。


「貴女達、ちょっと来て下さる?」


最早、彼女達は言い逃れる事は出来ない。周辺には魔法部隊の団員が数名取り囲んでいた。彼女達は諦め私の跡を着いてくる。


「それで何でシンシアさんに対してこのようなことをするのかしら?解っているかと思うけどシンシアはロードス殿下の婚約者となったのよ。

解っているわよね?そんなシンシアに対してこのような事をすればどうなるのか?」


「・・・」


「今更だけど無言が通せるとは思ってませんよね?」


彼女達アリシアの言葉に漸く観念したのか互いに目配せすると一人の令嬢が話し始めた。


「わ、私達だってロードス殿下の事をお慕いしてます。なのにロードス殿下の幼馴染みと言うだけで婚約なんて狡いわ」


「一応言っておくけど、シンシアは幼馴染みだから選ばれたのではなく聖女だからよ」


「解ってます!解ってますが赦せないのです!」


「何がそんなにいいのか解らないけどそんなに王子と婚姻を結びたいの?」


「えっ!?」


「だって大変よ。私は召喚される前は向こうの世界で第一王子と婚約していたけど礼儀作法だけでも公爵令嬢としての礼儀作法より1つ2つレベルが違うわ。

現に今シンシアさんは朝7時に王宮入りしてから帰られる夕方6時までずっと妃教育を受けているのよ。しかも、課題が与えられ家に帰っても自主的に復習して翌朝はどれだけ復習出来たかチェックされるの。

今のセフィーラ王妃は帝国の王家出身よ。

生まれた頃から王家の教育を受けているの。だから王妃教育が大変だと言う事が忘れられているけど、良く考えて見なさい。数年で王妃様レベルまで持って行かなくてはならないのよ。私なら絶対に御免だわ。それにシンシアは更に聖女として修行も行わないと行けないのよ。そんな苦労してまでロードス殿下は素敵かしら?」


「えっ!」


「目を瞑ってよーく考えてなさい。そんなの地獄のような苦しみの先にあるのがロードス殿下だけど、会えるなんて数日に1度、しかも半刻程度よ。

そこまでして貴女達は望むほどかしら?確かにロードス殿下は容姿端麗で優しいけど、そんな男性他にもいるわよ。貴女達は『王子』と言う言葉に踊らされているだけじゃない?

王妃なんて自由に喋る事も笑うことも許されないのよ?そんなに憧れるものかしら?それに貴女達がやっていることが明るみに出れば貴女達は即平民よ。下手したら死刑よ。そんな危険性を侵してまで望むもの?」


三人の令嬢は目を瞑り想像出来たのだろうか三人揃って首を降った。

少しだが、解ってくれてたみたいでよかった。

だけど、安心出来ない。

念には念をとアリシアは最終手段を取ることにした。


「それじゃ、やるわよ!」


「えっ!何をですか?」


「婚活パーティーよ!」



【合コン開催】


数日後、三人の令嬢以外に噂を聞いた他の令嬢が数名参加する事になった。また、何故かその中に侍女のメイもいる。


「ちょっと貴女何しているの?」


「本日はお暇を頂いておりますのでプライベートでございます」


確かに許可を出したけどまさかこんな所で会うとは思いもしなかった。


(まーいいわ)


男性陣もレイドスが集めてくれた。だが、集まり過ぎて女性陣の倍はいるように思える。


「ねぇレイドス、結構集まったわね」


「ああ。王宮内にこんなにも婚約者がいない者がいたとわな」


「まさか変なの参加していないわよね」


「それは大丈夫だろう。彼がちゃんと審査している」


レイドスの視線の先にいるのはバルフレア・オーウッド。

オーウッド伯爵家当主で王宮騎士団長である。

今、この場にラッドフィールドの二大英雄が並んでいる。


「初めまして、バルフレア・オーウッドだ。今回は部下が婚姻を結べるチャンスだと思っている。相手のご令嬢にも迷惑が掛からないよう厳選してあるから安心して欲しい」


「アリシア・ローデンブルグです。今回は参加者を集めて頂きありがとうございます。バルフレア殿のお墨付きなら安心出来ますわ」


レイドスに人材集めを頼んだ所、レイドスはそのままバルフレアに頼みこんだらしい。聞くと文官や魔道部隊は婚約者がいる場合が多い。

そこでバルフレアさんが率いる王宮騎士に目を付けた。  


彼らは普段から社交パーティーに参加していない。

そもそも彼らは警備・警護があるからパーティーにはなかなか参加出来ない。


それに彼らは己を鍛えるために鍛練を行ってきた結果、

異性との出会う事を失った。

そもそも、本来なら貴族の殆どが若い頃に婚約したりするのだが、こう言ったタイプはそう言った事が煩わしく思い、拒み続け異性に興味を持ち始めた頃には異性との接触する機会を失ってしまっている。 


女性陣側は子爵家以上のご令嬢が集まっているため、男性陣側も同じく子爵家以上か副分隊長クラス以上を望んでいた。

その為、5~6名程度しか集まらないかと思ったが、ここまで集まるとは思わなかった。

ただ、男性陣側が多い事で女性陣に恥をかかせる事がなくなった。思わぬ誤算である。


「それでは、合同パーティーに入る前に先ずは、異性のプロフィールを見ながらお手元の紙に一番気になる異性の番号をお書き下さい」


皆が書き終わったのを見計らって紙を回収する。

回収された紙は全てアリシアの元に届けられた。


「それでは皆様お待たせしました。合同パーティーを始めたいと思います。女性陣は指定の席に着いて下さい」


女性陣は言われた通り各々の番号が書かれた席に座る。


「それでは男性陣の方々につきましては好きな場所でパーティーを楽しんで下さい。既に気になる異性の席が埋まっている場合は椅子を持って参加して頂いても構いません。ご令嬢の承諾があれば、ペアー席に移動して頂いても構いませんので、時間が許される限りパーティーをお楽しみ下さい」


アリシアの合図でパーティーが始まると、男性陣は気になる異性の隣へと積極的に話かける。

パーティーが盛り上がっているなか、アリシアは先程の紙を並べて其々の両想いがいないかと探している。


「その紙は何か意味があるのか?」


「えっ!私が楽しむだけよ♪」


「「・・・」」


(前世で再放送で見た○○ねるずの合コン番組が面白かったけど、まさか自分が主催者側になるとは思わなかったわ)


「あっ!3番の男性陣と7番の女性が両想いだわ♪」


(3番の男性は1番隊副隊長ね。1番隊と言うと主な仕事は国王陛下の護衛だから将来かなり有望かも、女性の7番は・・・嘘、シンシア苛め隊の真ん中じゃない)


アリシアはパーティー会場を見ると二人は楽しく話し合っていた。他の人達も彼女の側に座っていたが、二人の世界に入り込む余地なしと諦めてしまっている。

おそらく、この二人は上手く行けそうだ。


会場を見渡すと一人だけどの令嬢の側にも寄らず落ち着いた様子でパーティーに参加している男性が一人いる。年齢からしても30代前半と他の男性陣と少し違う。


「バルフレアさん、13番の彼は?」


「ああ。アイツか、アイツは5年前に奥さんを病気で亡くしてな。跡継ぎもいないから今回強制的に参加させた」


彼のプロフィールを見ると、騎士団副隊長と書かれている。バルフレアさんの次に偉い人らしい。

そして、バルフレアさんの被害者でもある事が解った。

が、パーティーに参加しているからには全員に楽しんで貰わないと主催者失格になってしまう。

アリシアは13番の男性を呼び出す。


「リューバッカ副隊長どうしましたか?先程の紙には5番のご令嬢が気になると書かれておりましたが?」


「アレはどことなく前の妻に似ていたから書いただけで、今は・・・」


「今は違うお方が気になるのですか?」


「ああ。今はその隣にいる6番が・・・」


5番の女性は第一印象で一番人気のご令嬢である。

あそこに座る男性陣の皆が5番狙いであるため、同テーブルの4番は明らかに不機嫌そうに食事をしている。

同じく同テーブルの6番は一生懸命会話に参加しようと相槌を打っていた。

アリシアは6番の女性を呼び出す。


「どう?話が合いそうな男性はおりましたか?」


「そうですね・・・誰も私の事は見ておりませんので、残念ながらおりませんわ」


「そう。でも、女性の皆様には幸せになって頂きたいわ。そうだ、リューバッカ様はこちらの方が気になっておられましたので、あちらでお話をされて見てはどうですか?」


二人は驚きお互いを見つめると顔を赤らめながらアリシアの言うカップル席に移動した。


「アリシア嬢よ感謝する」


バルフレアさんに感謝されたけど、アリシアにはまだやることがある。もう一人の被害者を救わなくては。

先程の紙を見て7番の男性を呼び出す。


「貴方、第一印象では4番の女性を選ばれておりましたが、違う席におりまして宜しいのですの?」


「それが、あの席の溢れようを見たら引いてしまって。私はこの中で一番身分が低いですので選ばれないだろうし」


「よく見てみなさい、4番の彼女は一人で寂しくされておりますわ。貴方の事を選ばないかも知れませんが、気になる女性を助けたいとは思いませんの?」


7番の男性が4番の女性を見る。

すると、7番の男性は「失礼します」とアリシアの元を離れ、4番の女性に話し掛け二人で席を移動した。


パーティーは盛り上がり2時間があっという間に過ぎていた。


(そろそろ頃合いね)


アリシアは使用人達に合図を送ると使用人達は準備を始める。準備が整うとアリシアは席を立ち皆に手を叩き注目するようにした。


「盛り上がっているところ申し訳御座いませんがそろそろお時間となりました。この後の事についてご説明したいと思います。

まず男性陣はこのパーティー終了から1月以内に婚約の申込をご令嬢の方に出して下さい。ご令嬢方は申込の返信を1週間以内に行うようにお願いします。期日過ぎても返信がない場合はご縁がなかったと思って下さい。

また、返信の手違いが起きる場合もありますので同一の令嬢に再度申込む事を許可しますが三度目は規則違反とします。それでは皆様の帰りの馬車の支度は此方で用意しておきました。本日は参加して頂きありがとうございます」


婚活パーティーは無事に終了した。バルフレアさんは帰る方向が違うと別の馬車に乗り、私とレイドスは一緒の馬車で帰ることとなった。馬車の中でパーティーの間もほぼ無口であったレイドスがアリシアに質問してきた。


「君が最後にした男性陣の1ヶ月以内と言う条件に対しご令嬢には1週間と短い期間での返信は何か意図があるのか?これではご令嬢達は気に入った令息から返事が来るまで待ってしまい先に申込を出した者は良い返事を貰えないのではないのか?」


「そのために男性陣には再度申込を許可したのよ。女性陣のプロフィールが書いてあるパンフレットの注意書きにもあるでしょ。『男性陣は同時に複数の女性に申込を出してはいけない(但し断れた場合はその限りではない)』それと『同じ女性に2回まで申込をしても良い』ってあるでしょ。

気に入った異性がいるのにじっくり待つ者なんていないわ。そんな事していたら他の男性と婚約結ばれてしまいますもの。おそらく皆さん1週間以内に意中の令嬢に申込でしょうね。女性陣が1週間以内に返信をするとして少なく見ても2回、上手く行けば3回の申込が可能となるわ。女性達はまさか他の女性に断られてから自分が選ばれたとは思わないでしょうから、この方が上手く行くと思ったの」


「なるほど・・・」


「・・・」


「何だ?」


「協力してくれてありがとう。こんなことレイドスは苦手でしょ?なのにここまで協力して貰えるなんて正直思わなかったわ。最後まで付き合ってくれてありがとう」


「ああ、約束したからな」



【結ばれた縁と結ばれなかった縁】


婚活パーティー後、王宮内は大騒ぎをしていた。


「どうしたのかしら?」


「・・・」


メイに聞いても返答してくれない。

メイは無表情でいつも通りに仕事をしているが、どこか不機嫌そうである。

おそらくだけど、メイに釣書が未だ届いていないみたい。

パーティーでは一人のご令息と料理の大食いをして楽しんでいたように思えたが、その令息から何も届かなかったらしい。

因みにその令息はロードス殿下の護衛副隊長と言う事だから、今後ロードス殿下に会うのが気まずい。


アリシアは通り掛かりの次女に何を騒いでいるのかと聞いてみた。


「副部隊のリューバッカ様が婚姻を結ばれたそうなんです」


成る程、成る程。

今まで、王家やバルフレアさんの紹介を散々断って来たリューバッカさんが婚約したのだから、騒がしくなるのもしょうがない。

因みに婚約したご令嬢はパーティーの6番の女性であった。


一月後、結果7組が婚約を結ぶこととなった。

その中には3番の男性と7番の女性、7番の男性と4番の女性が婚姻された

例の三人のご令嬢は全員婚姻が結ぶ事が出来た事の報告とシンシアに謝罪をしにきた。


尚、今回縁がなかったのは一番人気の5番の女性とメイの二人であった。

『息の根を止めに行く』と言い出したメイを止めるのは大変であった。


シンシアが苛められる可能性はゼロではない。

他の者達の嫉妬や例の男からの逆恨みなど可能性はまだあるけどアリシアが知る限りでの苛めは解決した。

そしてアリシアは何故か謁見の間に呼び出されている。


「実は騎士団の婚約率の低さが近年問題視されていたのだが、アリシア嬢のお掛けでめでたく婚約を結ぶ事が出来た。今回、残念ながら縁が結べなかった者達には引き続き王家より今回のようなパーティーを主催したいと思っている。ついてはアリシア嬢にはこたびの貢献に対し金冠勲章を授与する事となった。アリシア嬢よこたびの働き感謝する」


金冠勲章・・・

どんなものか解らずレイドスに聞いて見た。

前回に授与されたのは10年以上前だと言う。


「売ったらいくらかしら?」


「売るな!」

~おまけ~


○ある令息の災難


意中の女性と大食いをして、負けたくない一心でひたすら食べた結果、彼は帰路中の馬車の中で意識を失う。


病状は「急性虫垂炎」であった。

手術により事なきを得たが麻酔により寝たきりとなってしまい、意識が戻る頃には釣書を出す一月が過ぎてしまっていた。


折角、気になる異性との縁がなくなってしまった彼は、肩を落としロードス殿下の護衛に復帰する。

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