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20.船上の戦場

「うん、コートよりかは全然涼しいな」

 

 大型砂海船(サンドシップ)、サンドーラ号の甲板の上で呟いた。

 

「……そうですね、マスターのそんな露出した淫らな格好もまた……」

 

 変態なことを言いながら頬を僅かに染める少女―――アイン=フィード。

 てか露出はしてるが淫らな格好じゃないだろ!

 改めて自分の格好を見る。

 バイザーを取ってゴーグルを掛け、上はダークグリーンのジャケット、中は黒のタンクトップ、下は短パンだ。露出してる所といえば腕、お腹、足ぐらいのものだ。

 

「頬染めながら言われると、エロい格好のように思われるだろ……それよりそっちはいつものドレスの色違い?」

 

「……はい、やはりこちらの服装が最も落ち着きます。それとも過激な格好の方が好みで?」

 

「それは遠慮しとく。寧ろ今の白のドレスでお願いします!」

 

 そんなやり取りを行いながら砂海船が多く泊まる場所を見やる。

 そこには昨日ギルドの酒場で見た連中や町にいた傭兵といった奴らが集まっていた。

 

「……あそこにいるのは『砂漠の大蛇』の異名を持つトーガ。向こうにいるのは『砂嵐』の異名を持つアバン」

 

 突然語り出すアインに、一瞬訳が分からなかったがどうやらデザートワーム討伐に加わってる連中のことを言っていたみたいだ。

 

「……この辺では名の通った者達ですがそれは飽くまで一般的なCランククラスの冒険者の中では少し腕が立つ連中というだけのようです」

 

 淡々と言うアインの表情は相変わらず無表情だったが、僅かに懸念の表情が窺えた。

 

「嫌な予感がするな」

 

 私がぽつりと言うと、彼女もまた小さく頷いたのだった。

 

 

 

 

 

 サンドーラ号が出港の合図の鐘を鳴らし始める。

 すると討伐隊の砂海船(サンドシップ)達も動き始めた。

 港には町の住人などが集まってそれぞれを送り出すように手を振って言葉を投げかけてくる。

 討伐隊には冷やかしや激励といった言葉が飛び交い、賑やかな出発となった。

 甲板にも何人かの人間が見送りに集まっていた。

 

「さて、私達はどうしようか?このまま外にいても熱いだけだし、食堂にでも行くかな」

 

「……そうですね、朝早くだったのでお腹がすきました……シャリ…シャリシャリ……」

 

 何だろう、シャリシャリという音がする。

 

「なっ!?」

 

「……どうしました、マスター?」

 

「ど、どうしたも何も、その手に持っているのは……」

 

「……かき氷です。魔法で氷を作って、シロップは食堂から頂いてきました。マスターもどうですか?」

 

 そう、彼女が食べていたのはかき氷だった。

 なるほど、シャリシャリ音はこれを食べる音だったか。

 しかし、この暑い中かき氷とは……

 

「是非とも欲しいです」

 

 欲に負けた私だった。

 こんなに暑いと冷たい物が食べたくなるのは当たり前だ。

 アインから受け取って一口食べる。

 

「あむ……う~ん!キーンと来る!でも冷たくて美味しい♪」

 

 久しぶりだ、かき氷なんて!

 特にこのレモールのシロップなんかレモンとは別の美味さだ。

 

「…あ、主よ……妾にも恵んで欲しいのじゃ」

 

 するとぐったりしたレイシスが出て来る。

 なんか久しぶりに見た気がするな。最後に見たのは五日くらい前の様な気が。

 まぁゴスロリのドレスじゃこの気温だと辛いのだろう。

 今まで私の中にいたとはいえ、かき氷が欲しくなるのも頷ける。

 それにお菓子にはがめついのがレイシスだ。

 

「はむ………のぉ~!冷たい!なのに美味いのじゃー!」

 

 かき氷を口にして感嘆の声を上げるレイシス。

 うん、相変わらず見てて癒される光景だ。

 ま、私の財布の中身に多大な被害を被らなければの話だけどね。

 かき氷を食べながら延々と続くような漠然とした砂海を眺めていたりしている内に大分時間が流れていた。

 青天の空に浮かぶ太陽は相変わらず容赦なく照りつけていた。

 

「そろそろ中に行こうか。レイシスもまたダウンしたし」

 

「……そのようですね」

 

 そう思い、船内に戻ろうと踵を返した瞬間、何か得体の知れない感覚が体を駆け巡った。

 

「……マスター?どうし………!」

 

 私の表情を見て足を止めたアインも何かを感じたみたいだ。

 真剣な表情で聞いてくる。

 

「……マスター、この気配……」

 

「気づいてる。何かが来る」

 

『主よ、大きなものが接近しておる。この感じ、魔物の気配じゃ』

 

 レイシスが親切に気配の相手を教えてくれる。

 

「おい、砂海船が数隻こっちに向かって来てないか?ほらあそこ」

 

「あ、ほんとだ。砂賊(さぞく)じゃないだろうな?」

 

 甲板にいた乗船客の一部が遠くを指差しながら話していた。

 その方向を見やるが熱による光の屈折でぼやけて見える。

 

「補助魔法、千里眼!」

 

 視力を一時的に高め、通常以上のものを見ることができる補助魔法だ。

 それでも多少はぼやけていたが確認することはできた。

 

「あれは………討伐隊の船だ。でも大分船の数が減ってるな……確実にこっちに向かって来てる」

 

 暫らくして船の鐘が鳴る。

 どうもサンドーラ号も砂海船に気づいたんだろう。

 その頃には砂海船も直ぐ傍まで来ていた。

 

「後ろの貨物室の扉を開けてくれ!怪我人が多いんだ!」

 

 一隻の砂海船から呼びかけてきた男は満身創痍といった感じに傷ついていた。

 船長や一部の乗組員、野次馬として集まった乗船客に傭兵や冒険者の人間が次々に貨物室に収容されてくる砂海船を見に、集まってきていた。

 さっき言っていた通り、殆んどの全員が怪我人だった。

 船長達がまだ口の聞ける者達を集めて事情を聴き出していた。

 

「一体何があった?デザートワーム討伐に向かっていたんじゃないのかね?」

 

「そんなことはどうでもいい……!早く、早くこの領域から逃げるんだ!」

 

「どうしてだ。この船はサンドネールに向かっているんだぞ。それにワームは君達が倒したから此処にいるんじゃ……」

 

「あぁそうだ!だが違う!確かに俺達はデザートワームを倒した……皆で喜び合った。だが……!デザートワームは一体だけじゃなかったんだ!急に下からもう一体のデザートワームが現れて…仲間を呑み込みやがった……!」

 

 もうすでに恐慌状態に陥ってるのか、そこから先の言葉は出てこず、ひたすらに体を震わせていた。

 船長はこれ以上の情報は聞き出せないと判断したのか、彼を医務室に運ぶよう指示を出した。

 するとそこへ見覚えのある二人がやって来た。

 

「…船長さん、続きは俺が話す………」

 

 そうだ、港で見た確か『砂漠の大蛇』に『砂嵐』の二人だ。

 

「俺達は情報では一体と思っていたデザートワームがもう一体いたことに最初は混乱したさ。だがすぐに応戦した。けどな、本当は二体でもなかったんだよ………三体いたんだ。俺達が一体倒したことによって二体のデザートワームが怒っちまった。おかげで俺達は壊滅、おめおめと敗走さ」

 

 独白のように語る砂漠の大蛇のトーガ。

 二人の顔はげっそりとしていた。

 

「船長!!大変です!一時の方向から何かが接近してきてます!」

 

「逃げろ……!い、いや今からじゃ間に合わない………くっ、応戦するしかない!」

 

 叫びながら船長に迫るトーガ。

 船長は一度目を閉じ、それから決断したのか目を見開いて指示をテキパキと飛ばす。

 

「船員戦闘配備!非戦闘員は船内に退避させろ!戦闘員は武器を取れ!他の者は砲撃準備、パイルバンカーも用意しとけ!使うことがある筈だ!」

 

 警鐘が船内に鳴り響き、人が激しく行きかう。

 怒号が飛び、慌ただしく駆け巡る足音があちこちから聞こえ、武器を持った者達が甲板に向かう。

 船の上は既に戦場と化そうとしていた。

 

「奴らは必ず来る。二体いるはずだ」

 

『敵はデザートワーム。数は二体、目の前の敵だけに気を取られるな!どこかに潜んでいるはずだ!索敵怠るなー!その内の一体は先の戦いで傷ついている、何としてもこの戦いは切り抜けるぞ!でなければ我々は砂海の藻屑となるだけだ!』

 

 伝令管によって船内中に響く怒号。

 

「アイン、私達はどうする、戦うか?」

 

「……マスター、そんなこと言いながら既に戦闘モードに移行してるじゃないですか」

 

「アインも何気に手甲や腰鎧とか装備してるし。どこから持ってきたの?」

 

「……それでは私達も甲板に向かいましょう」

 

 スルー、まるで何事もなかったかのように、いやほんとになにもなかったと思わせるほどのスルー!

 さては勝手にどこからか持ってきたな。

 甲板に向かおうと階段を上ろうとした瞬間、強い衝撃が船体を激しく揺らした。

 な、何?

 

『デザートワームと接触!右舷損傷軽微です!直ちに迎撃に当たってください!』

 

 伝令管から聞こえてくる情報を整理する。

 今の衝撃はサンドワームとぶつかった衝撃か。

 もう上でも戦闘が始まってる。

 甲板に上がると激しい戦闘が起こっていた。

 大砲による砲撃、魔法による数多の攻撃が繰り広げられている。

 だがそれをものともせずに悠然とそびえ立つ巨大な物体。

 

「デザートワーム……!大きいなこれは……」

 

「……私も交戦はこれが初めてです」

 

 姿はまるでジ○リの王蟲(オーム)みたいだ。

 十数節の体節にゴツゴツとした甲殻、そして巨大な口。

 口と言っても、それは余りにも大きい。

 頭が左右と上に三つに割れて、その内側には幾万もの牙が生えていた。

 

「攻撃を休めるなー!奴の側面部の傷を狙うんだ!」

 

 確かによく見ると甲殻の一部に(ひび)のようなものがある。

 

「紅蓮の炎よ、万物を滅し、全てを焦土に帰せ、煉獄の劫火球!」

 

 言葉(スペル)を紡ぐことで、術は安定し、より強力なものになる。

 対人戦では詠唱は向かないが、こういった魔物戦では強力だ。

 右手に発生した劫火球を円盤投げの要領でぶん投げる。

 

「……氷よ、鋭き物となりて砕け、氷の杭(アイスピック)!」

 

 氷の杭が罅を突き、そこに劫火球が爆発して杭を爆風でさらに刺し込む。

 紅蓮の炎が包むが目立った傷は殆んどない。

 固すぎるだろ、おい……

 ほかの連中も『火の矢』や『雷の槍』をぶつけているが大した成果にはなっていない。

 そうこうしてる間にもタックルを喰らい、船体が揺れる。

 このままだとただ沈むのを待つだけだ。

 

「これなら、どうだ……!」

 

 (ディメンション)から取り出したのは『ダネル NTW』だ。

 全ての武器には蒼い魔鉱石を組み込んである。

 

「シュートっ!」

 

 20mm口径から弾が撃ち出される。

 反動がショルダーストックから伝わってくるが内蔵されてるショックアブソーバで軽減される。

 ボルトハンドルを引いて薬莢を排出、次弾を薬室に送り込んで引き金を引き撃ち出す。

 

「やっぱり駄目か」

 

 少しほど亀裂が走ったくらいだ。

 

「なら特殊弾、アタックバレット装填、魔力注入……チャージ、ショット!」

 

 魔鉱石が蒼く輝き、引き金を引く。

 魔力によって爆発的に放たれた弾丸は空を飛翔しながらデザートワームの甲殻の亀裂に命中する。

 瞬間、亀裂がさらに大きくなり、外殻が一部崩れ落ちた。

 周囲から大量の魔力の流れが発生し、一気に放たれる。

 罅割れしていた甲殻が崩れて内側の肉を曝け出し、魔法攻撃がそれを抉って徐々にダメージを蓄積させる。

 大砲の砲撃が集中し、爆風が呑み込み、視界が遮られる。

 それでも攻撃は止まない。

 ひとしきり攻撃を浴びせた後、ぴたりと攻撃を止める。

 魔力を一気に使いすぎたのだ。魔力の枯渇は命に係わる。

 

「やったか……?」

 

 誰かがそう漏らした時、黒い爆煙を切り裂きながらデザートワームが突っ込んできた。

 船体が大きく左に傾き、転覆しかける。

 さらに追い打ちを掛けて来るように突進が船を襲う。

 

「くぅ…!まずい、このままじゃ一方的にやられて沈むぞ……!」

 

『右舷損傷拡大!危険です!』

 

 ほんとにまずくなってきた。

 

「おい!パイルバンカーを右舷に運べ!奴の突進に合わせて打ち込むぞ!」

 

 傭兵の一人が思いついたように叫び、ほかの連中に指示を出し始める。

 対大型モンスター用のパイルバンカーなだけあってかなりの大きさだ。

 これを露出させてる部分に打ち込めば何とかなるかもしれない。

 次の突進までには時間が掛かる。

 その間にパイルバンカーを運び設置する。

 

「慎重に狙え。外すんじゃねぇぞ!敵は一体だけじゃないんだ。パイルバンカーだって二本しかない」

 

 デザートワームが砂の中らから出て来るに連れて砂海が大きく盛り上がる。

 体当たりが来る!

 

「てぇーーーー!!」

 

 ボスゥーンッ!

 

「今度こそやったか!?」

 

 甲高い発射音に続いてデザートワームの断末魔が大気を揺らして響き渡る。

 デザートワームは大きく動き回りながら暴れる。

 そして最後に一吠えすると、事切れたのかそのまま動かなくなった。

 

「や、やったーーー!」

 

「潰したぞーーー!!」

 

 そこら中から歓喜の声が沸き上がる。

 だがまだ終わっちゃいない。

 おかしい……あと一体が出てきていない。

 討伐隊の話しじゃ三体の目撃情報がある。

 その内の一体は討伐隊の手で片付けられて、もう一体は今そこでくたばった。

 でもあと一体は?

 逃げた、いや或いは追ってきたのはこの一体だけだった……?

 でも何でだろう、嫌な感じが消えない。

 普段群れることのデザートワームが複数体同時に出現した。

 なのに今は単体で行動を開始するのはそれはそれで変だ。

 

「……マスター、何か様子が変です」

 

「え?」

 

 思考の海に沈んでいると、アインが急に呼びかけて来る。

 様子が変?何の?

 とりあえずアインが指差す方向を見る。

 

「………!!」

 

 倒したデザートワームの外殻の破損個所からもぞもぞと何かが動いていた。

 よく見れば一か所だけじゃない、あちこちからだ。

 何かがデザートワームの体内で動いている。

 それも今は内側から外に出ようとしていた。

 ついに突き破って出て来たのは小さなワームだった。

 

「サンドワーム……!もしかして子持ちのデザートワームだったの!?」

 

 途端、一気にそこから湧き出るようにサンドワームが這い出て来る。

 

『なるほどの。あやつが子持ちということは、もう一匹は親の片割れじゃな。産卵期じゃから殺気だっておったのだろうな』

 

 なんですとー!?

 つまりは自ら蛇のいる藪を突いたようなものじゃないか。

 ってことは……

 

「まずいっ!全員第二戦闘配備に―――」

 

 気づいた時には既に遅かった。

 船体の底が何かにぶつかり、大きく浮かび上がる。

 衝撃で数人が砂海に投げ出され、そこを下に群れ出していたサンドワーム達が餌を貰う金魚のように口を開けて待っていた。

 

「う、うわぁーーー!!た、たす、助けてくれー!!!あぁーーーーー!!!」

 

「や、やめろ!!喰うな、喰うなーーっ!!

 

 船の下の方から落下した傭兵の無残な断末魔が聞こえてくる。

 四肢を噛み、引き裂かれ、生きたまま体を喰われる恐怖は無事に生き残っている彼等にも伝播していた。

 皆顔を悲痛なものにしていた。

 歓喜に満ち溢れていたさっきとは変わって今は恐怖と絶望に似た雰囲気が満ちていた。

 

『全員第二戦闘配備!繰り返す、第二戦闘配備!敵は現在、船と地中で並行している!迎撃してくれ!さらに後方からサンドワーム接近中、船体に取り付いて来ている!早く迎撃を!繰り返す―――』

 

 伝令管からは現在の状況が流れ、切羽詰まっていることがわかる。

 

「……彼等は産まれたばかり。それも母親が途中で死んでしまった為に栄養が少ない。普通は母親の骸を食して栄養を得ることもしますが、それ以上に魅力的なものが私達なのでしょう。逃げ切ることは出来ませんね」

 

 冷静に現在の状況を分析して淡々と言うアイン。

 つまりは戦うしかないということ。

 どうする?砂の中じゃ如何することも……いや、さっきのが母親なら、今下にいるのは父親のようなものじゃ。

 なら子供とも言うべきサンドワームを潰していけば、出てくるかも……

 

「シャァー!」

 

 作戦を考えようとした瞬間、船の側面部をよじ登ってきたサンドワームが口をぱっくりと開けて飛びかかって来て

 いた。

 

「……っ!?」

 

 バシシシッ!

 

 サンドワームが黒い壁に阻まれ、感電したように絶命した。

 やば、反射的に闇の結界魔法をつかっちゃったよ。

 アインにはある程度のことは伝えてあるものの、ほかの人にはあまり見られたくないんだよな。

 辺りを見回してみるが、皆甲板に上がってくるサンドワームの対応に追われていた。

 

「ふぅ……セーフ。それよりさっさと掃除を行いますか」

 

「……はい、マスター」

 

 どこに隠してたのか分からないナイフを構え、次々にサンドワームを下ろしていく。

 料理も上手そうだな。

 場違いな考えをしながらも片手剣を右手に、左手に『H&K MP7』を持ちながら薙ぎ払って行く。

 飛びかかってくる奴はそのまま縦に切り裂く。

 すると死角の後ろから襲いかかってくるが、倒れ込むように回転しながらMP7を撃ち、蜂の巣にする。

 冒険者達もそれぞれの得物を振り回して駆逐していく。

 

「う、うわぁーーっ!」

 

 一人が剣を振り切った隙を突かれて足を噛まれ、倒れたところをサンドワームが群がるように襲う。

 

「く、くそ!」

 

 群がるサンドワームを冒険者の一人が切り伏せていくが、そこには肉塊になった物しかなかった。

 

「ぐあぁっ!」

 

 傭兵の一人が左腕を持っていかれていた。

 まずい、そろそろ限界が来てる。

 

氷の六面体(アイスキューブ)!」

 

 サンドワームの頭上に幾つもの氷の六面体のブロックが落下して潰す。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 魔力を大分使っているのだろう、息が上がっている。

 それにこの暑さじゃ、体力や集中力もそう持たない。

 いい加減私もきつい。

 

「はぁっ!」

 

 さらに襲い来るサンドワームを突き刺し、至近距離でMP7を打ち込む。

 アインもまたナイフを器用に使いながら切り刻んでいく。

 白かったドレスはサンドワームの血で紫色に染まっていた。

 大分殺したとこあたりで変化が生じた。

 今まで砂の中に潜っていたデザートワームが動き出したのだ。

 

「とうとう動き出した……はぁ、はぁ、遅いぞこの野郎………」

 

 砂中から大口を開けて出来たデザートワーム。

 子供をあれだけ()ったんだ、そりゃあ誰だって怒る。

 

「全員気ぃ引き締めろぉ!親玉のご登場だ!パイルバンカーを用意しとけ」

 

「アイン、奴に取り付くぞ」

 

「……了解しました、マスター」

 

 甲板の上を助走をつけながら思いっきり蹴って飛ぶ。

 甲殻の凹凸(おうとつ)部分にワイヤーを引っ掛けて取り付く。

 このままじゃこっちが一方的に消耗するだけだ。

 皆の魔力量もそれほど多くないはず。

 なら一気に片をつければ良いだけの話。

 

「闇よ、影となりて忍び寄り、彼の者を貫き殺せ、影の黒槍(シャドウスピア)!」

 

「……氷よ、鋭き物となりて砕け、氷の杭(アイスピック)!」

 

 体節の間に拳を叩き込み、そのまま魔法を展開する。

 いくら殻が丈夫でも、そこを繋ぐ節は脆いはずだ。

 闇の魔力をかなり練り込んだ一撃だ、相当なダメージのはず。

 すかさず『氷の杭』の追撃で穴をこじ開ける。

 そこに『ダネル NTW』に換装し、ぶっ刺す。

 対物ライフルによる零距離射撃だ。

 引き金を引き、薬莢を排出を繰り返し、箱型弾倉の3発全てを撃ちこむ。

 途端に暴れ出すデザートワーム。砂の中に潜る気だな。

 急いでデザートワームの上から退避する。

 するとさっきまでいた場所に集中砲火を浴びせかける。

 デザートワームはそのまま砂の中に身を潜めた。

 

『敵影、船から遠ざかっていきます!繰り返します。敵影、遠ざかっていきます!』

 

『気をつけろ!確かに奴は逃げたが、死んだわけじゃない。目的地のサンドネールまではまだ掛かる。つまりはまた襲撃がある可能性があるということだ。このあと一度見張りを決めよう。食堂に集まって欲しい』

 

 伝令管からは希望の情報が伝わってくる。

 だが、船長の言葉に皆喜ぼうとした空気が冷め、静まり返る。

 奴がこのまま逃げたと考えたいけど、一時的な休戦ということも考えられる。

 またいつ襲ってきてもおかしくはないのだ。サンドネールまでは最低でも後一日は掛かる。

 戦いが終わっても、気が休まることはまだない。

 

 

 日は西に傾き始め、砂海を血のように紅く染めていた。

 まるで今日流された血によって染められたかのように……

 

 

 

 

 

 

 

 

 


どうもunkonownです。

ここ最近は頑張って短期間での投稿をしてみました!

正直書き溜めてないんで辛いっす……

ま、まぁそれはさておき、今回はデザートワーム×2+サンドワーム、といった具合ですかね。

次の話ではデザートワームとの決着をつけて、サンドネール首都入りです。

それとなんですが、今度は投稿が遅くなるか早くなるかは未定です。

いやー当初は一週間に一話を目指してたんですが、これがなかなかハード……

英語だと“hard”でいいんだっけ?

とりあえず、自分のペースで頑張ってくので気長にお待ちください。

だからって凄く遅いわけじゃないんだからね!!

…………ゴメンナサイ、何となくです、出来心だったんです。

ま、冗談はさておき、真面目に出来るだけ早くしますのでよろしくです。

因みにサブタイトルなんですけど、こういうの考えるの好きな割に自分、あまりセンスがないんですよね……

今回も何となく思いついたのですし、しかも『船上の戦場』てダジャレ?

せんじょうのせんじょう、明らかにダジャレに思えない!

ほんとは偶然なんです!信じて下さい!

いい加減収集がつかなくなりそうなので強制的に終了します。

まだ言いたいこと……じゃなくて書きたいことあるけど。

それでは次回また会いましょう~!

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