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19.サルトの町

「それじゃ、打ち合わせ通りに行こう」

 

「……はい、マスター」

 

 磁器の様な白く整った顔の少女の口から小さくも澄んだ声が答える。

 今のこの場では不釣り合いな膝丈程のシンプルな漆黒のドレス姿に、両手にはナイフを持っている少女―――

 アインは真っ直ぐ前方にある洞窟へと歩いていく。

 洞窟の前には二人の武装した男達が居た。

 

「ん?貴様、止まれ!」

 

 一人がアインに呼びかけるとそれに応じて歩みを止める。

 

「おい、何故そんな格好でうろついている?それにその手に持ってる物はなんだ!」

 

「…………」

 

 男達はアインに歩み寄っていく。

 私はそれを木の上から見下ろし、下に来た瞬間、飛び下りてH&K MP7を二人の男の頭に突き付ける。

 

「「……!!」」

 

 男達がビクッっと反応し、慌てて振り返る。

 だが既に遅い。

 私は口元だけ笑むと同時に二人の後ろからアインが男達の喉笛にナイフを当て引き裂く。

 喉から血を噴き出しながら倒れ伏していく男にさらに後頭部に一撃を入れる。

 

「……片付きました」

 

「よし、それじゃあ中の連中も片付けますか」

 

 私は彼女の手際の良さに感嘆しながらも次の仕事に取り掛かる。

 ここ数日を通してアインのことを見てきたがただの変態ではないらしい。

 とりあえず水浴び、就寝、着替え、ありとあらゆる場所に突然出てきては抱きついて変な方向に持っていくのだ。

 そういう意味でただの変態じゃない。

 まぁそれに戦い方も常人を逸している。

 ナイフを使わせたら私以上の実力かもしれない。

 

「……奥に五人、情報にあったサーベルレオ三頭を確認。先行し駆逐します」

 

 アインは静かに告げると地を蹴って駆け出す。

 

「な、何だ!?」

 

 一番手前にいた男の死角に潜り込むや、左手に逆手で持ったナイフで腹部を切りつける。

 その勢いのまま右のナイフで胸を突き、抜いた勢いを更に利用してそのまま男の喉元を裂く。

 

「がはっ…!」

 

 口から血が零れ、遅れて血が噴水の如く噴き出す。

 アインは気に留めずに次の標的に狙いを定め疾走する。

 

「くっ!サーベルレオの檻を開けろ!それとアレを持ってこい!」

 

 む、大丈夫かな?

 それにアレって何だろう。

 私はとりあえずMP7を構えて何時でも援護できるように待機する。

 その間にもまた一人白銀の刃に切り裂かれ、辺り一帯に血の海を作り上げる。

 

「この女……!気をつけろ!こいつ相当ヤバいぞ!!」

 

 男達は警戒して距離を取る。

 アインはそれを無機質のような眼で見つめている。

 

「ガルルッ…!」

 

 その後ろをサーベルレオが忍び寄り飛びかかってくる。

 アインはそれを見向きもせずにくるりと踊るように身を翻し、その一瞬の間にサーベルレオの首にナイフを滑り

 込ませて絶命させた。

 サーベルレオ。

 ライオンのような姿を持ち、牙や爪はそんじょそこらの剣以上に強度があり、鉄をも切り裂くほどの切れ味もある。

 また牙が二本だけ長く、それは本当に剣でできていた。

 ランクとしてはCランクに位置する中級モンスター、そう簡単には調教できない。

 私達が受注した依頼はS(サーベル)レオを使役する盗賊の駆逐。

 荒野に拠点があるらしく、目的地に向かう道中にあったので受けたのだ。

 説明はこの辺にしとこう。

 残るはSレオ二頭に、武装した男が三人、その内の一人は頭らしくほかの連中とは格好が違う。

 

「う、うわぁあーーー!」

 

 自棄になった男が構えた剣を高く振り上げながら斬りかかってくるがアインは無感動にそれを眺める。

 剣が振り下ろそうと剣を高らかに持ち上げようとする刹那、アインは素早くナイフを順手に持ち替えて男の腹を

 数回刺し、左右に切り裂く。

 そして逆手に持ち替えて首を切る。

 アインの動きはまるで舞の様で、でもどこか洗礼された動きだった。

 立ち尽くすアインにさらにSレオ二頭と残りの一人が襲いかかっていく。

 私はゆっくりと左右のMP7の銃口を持ち上げ、引き金を引いた。

 フラッシュハイダーから発射炎が噴き出て、薄暗い洞窟を照らし出し、連続した銃声と排出される薬莢の音が洞窟

 内に響き渡る。

 くぅー、五月蠅すぎる!

 これならサプレッサーを付けてればよかった。

 こないだのエルタニアの古代遺跡で盗ってきた逸品の一つだ。

 銃弾は飛びかかろうとしたSレオの体を4.6mm弾が貫いて、体の内を引き裂いて貫通し、蜂の巣にする。

 男は凍り付いたかのように固まり、こっちを見てくる。

 アインはそんな男の背後から近づき、血に濡れた刃が男の首に触れ、容赦なく引かれた。

 

「く、くそ、くそ!くそぉ!!何だってんだ!?」

 

 錯乱したかのように喚き散らす頭と思しき男。

 みっともないぞ、男なら最後まで堂々と構えろ。

 それが死を目前にしてもな。

 

「ふざけるなよ?ふざけんじゃねぇ!俺はな、こんなとこで死ぬような人間じゃねぇんだよ!!」

 

 頭は大声を出して叫ぶと、懐から一挺の回転式拳銃を取り出し、アイン向けて発砲する。

 私はギョッとするもアインは至って冷静だった。

 持ったナイフをただ目の前で一線した。

 その瞬間、甲高い金属音と共にアインの後ろの壁に二つの弾痕が穿つ。

 嘘?

 マジですか?

 

「銃弾を……斬った?」

 

 私が驚愕している間にも時は動き続けていた。

 アインはナイフを構えながら突撃していく。

 男は恐慌状態になりつつも、撃鉄を起こして引鉄を引く。

 だが全てことごとくアインに届くことなく弾き落とされていく。

 

「嘘だろ……?」

 

 それが盗賊の頭の最後の言葉だった。

 

 

 

 

 

「コルト・シングルアクション・アーミー、正式名は確かM1873。通称ピースメーカーだっけかな」

 

 頭が持っていた回転式拳銃を拾って過去の記憶を掘り返す。

 シングルアクションで装弾数は6発の骨董品のようなものだ。

 でもこれはこれで。

 

「ふふふ、コレクションが増えた♪」

 

 私は一人ブツブツ呟きながら(ディメンション)の中に仕舞う。

 

「……戦利品としてこの辺の宝は頂きましょう。挙式の元手に……」

 

 向こうも向こうで何やらやっているがまぁどうせそう大した事でも……ありそうではあるが、触れてはならない

 気がする。

 何かが警鐘を鳴らしている。でも止めなければ止めないでいるのもいけない気がする。

 何だろうこのジレンマは?

 

「さて、町に行こうか?」

 

「……そうですね、ギルドから報酬も頂きましょう」

 

 洞窟を出て町に行く為に馬車に乗り込む。

 荒れ地に馬車を走らせること小一時間、ようやくサルトの町が見えてくる。

 サルトの町。

 この町はサンドネールに続く砂海(さかい)への入り口とも言える町なのだ。

 サルトの町を含めて砂海はサンドネールの領土になっている。

 

「それじゃまずはギルドに報酬を取りにいって、それからエルタニアで紹介してもらった造船技師を捜すか」

 

「……それではギルドに向かいましょう。この町は流石に私も初めてです」

 

 ギルドは案外すぐに見つかった。

 この町の中ではそれなりに大きな建物だった。

 さっきも言った通り、この町はサンドネールへの入り口。

 そして砂海にはここ最近大型の魔物が出現するようになった。

 その所為か町のあちこちを傭兵や同じ冒険者達がいた。

 彼等にとっては良い稼ぎになるのは間違いないだろうな。

 商人達はそんな戦士達を商売の対象として露店を並べている。

 保存の効く食糧品や武具、旅に必要な雑貨品など様々だ。

 それに造船技師達の工房も多数ある。

 砂海を渡るには特殊な船が必要になる。

 そういった船を彼等造船技師達が依頼を受けて船―――砂海船(サンドシップ)を造る。

 この町には港もあり、サンドネールまでを行き来する大型の砂海船も造船技師達によって造られているそうだ。

 大型の砂海船は主に一般の人が多く利用する。

 ほかにも傭兵や冒険者も自らの砂海船を積んで乗る者もいる。

 小型の砂海船だと小型モンスターに襲われやすく、大型タイプに出会った時の対処が難しいからだ。

 大型の砂海船ならば、小型の魔物はあまり寄り付かない上に大型と出会っても対処しやすい。

 船には常にある程度の傭兵に冒険者が雇われて乗船している者達もおり、迎撃用のパイルバンカーや砲台も積んで

 いるらしい。

 詰まりは危険が少ないのだ。

 ギルドに入ると、驚いたことに多くの人間が集まっていた。

 

「うわ、かなりの人数がいるな……」

 

「……何の騒ぎでしょうか」

 

「とりあえず報酬金を貰おう」

 

 カウンターに向かって行き、受付に依頼内容の詳細が書かれた紙を渡す。

 

「ギルドカードを確認いたします。…………アサギ様にアイン=フィード様ですね。確認しました。

 ではこちら、報酬の10万G(ゴールド)です」

 

「あんた、雪風(せっぷう)の舞姫のアイン=フィードか?」

 

 報酬を受け取ろうと手を伸ばすと、隣から男がが声を掛けてくる。

 因みに『雪風の舞姫』とはアインの二つ名だ。

 これもただの変態ではない理由の一つ。

 彼女はCランクの冒険者では名の通った冒険者で、その容姿、戦いぶりからその名がついたらしい。

 

「……確かにそうですが、何か?」

 

「やっぱりそうか。あんたも今回の依頼に参加する為に来たのか」

 

「……依頼?参加?」

 

 何だろう?気になるな。

 

「何だ違うのか?じゃあ偶然此処にいるのか」

 

「その依頼とは何だ?」

 

 男に尋ねると、男はこちらに気づいたのか、私の顔を見て戸惑った表情を見せるが気にせずに話しだした。

 

「あぁそれがサンドネールが冒険者ギルドにデザートワームの討伐依頼を近辺のギルドに依頼したんだよ。

 とうとうサンドネールも無視出来ないところまで来たって話だ。あいつが現れてから相当の被害を受けてる。

 それでもって今ここにいる連中の七割はその討伐に参加する奴らだ。この辺りじゃ名の通った奴らもいる。

 明日出港の砂海船と同時に開始するらしい。確か報酬は200万Gだったはずだ」

 

 デザートワーム。

 砂海に生息する大型のワーム型モンスター。

 小型種のサンドワームが子供ぐらいに対してデザートワームは大型砂海船並みの大きさがある。

 まず間違いなく出会ったら閃光などの目眩ましを行って逃げるのが当たり前の大きさで下手をすれば丸呑みにされ

 ることもある。

 だけどデザートワームはサンドワームの成体名だ。

 だが成体になるのはまずなかなかいない上に、デザートワームはその姿を現すことはそんなにない。

 

「しかし魔王の出現で各地で魔物の活性化が起こってる上に、突然変異種や新種まで……一体何が起こってるんだ?

 サンドワームなんて滅多に出てきやしねぇのに、ここんところは頻繁に出てきては船を襲いやがる。それにコルト

 王国が不審な動きを見せてるって言うじゃねぇか。大丈夫なのかねぇ、ほんとに」

 

 男は酒を呷りながら愚痴をこぼしだす。

 興味を失ったのか、はたまた元から興味が無かったのかアインがこっちを見つめていた。

 

「別に加わる気はない。それより造船技師に頼んで、明日のサンドネール行きの船のチケットをとらなきゃね」

 

「……わかりました、マスター」

 

 軽く口だけ微笑んで言うと彼女は静かに頷いた。

 バイザー越しに見たアインの表情は少し紅潮していた気がするのは気のせいか……?

 何とも言えぬものを感じたんだが……まぁ今は造船技師だ。

 私達はとりあえずギルドを後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 泊まる部屋を借りてサルトの町を練り歩くこと数十分。

 サルトを照らす灼熱の太陽の下の所為で服は汗でびしょびしょだった。

 あ、あづい……熱すぎるぞこの太陽め……!

 

「……ねぇアイン。何故にこんな場所でドレス?しかも黒の……」

 

 隣を歩く彼女に呟く。

 どういう訳か、このクソ熱い中黒のドレスを着ているアイン。

 シンプルな短いドレスだが、黒はないだろ、黒は……

 

「……マスターこそ黒のレザーコートじゃないですか」

 

 確かに……流石にこのままだと脱水症状になりそうだ。

 仕方ない、後で涼しい格好に着替えるかな。

 そろそろ紹介状の造船技師がいる場所なんだが……

 

「……マスター、ここではないでしょうか?」

 

 アインが目の前を指さしながら聞いてくる。

 そこには『造船ギルド』と書かれた看板が掛けられた建物があった。

 場所的にも合ってるから多分ここ何だろう。

 扉を開けて中に入ると、そこは至って普通の場所だった。

 

「おーーい!だぁれだあんたら?」

 

 奥の部屋から大きな声が聞こえてきた。

 随分特徴ある喋り方だな。

 奥から出て来たのは若い男だった。

 金髪で左の前髪で顔の左半分を覆い隠している。

 格好はブルーの作業着で今まで仕事をしていたのか、真新しい汚れが付いていた。

 

「造船技師のニールか?それなら紹介状が来てると思うが。砂海船を一隻」

 

「ん?……あ~おっさんからのかぁ~?そぉれならもう出来てーる!」

 

「仕事が早くて助かる。金はそこに置いとくぞ」

 

「あいよー。また何かあったらみてやらぁ~!おっさんからの紹介じゃあどうしようもねぇからなー。船は?」

 

「明日の朝に取りに来る。それまでは預かっておいてくれ」

 

 必要なことだけ後は言って私達は露店を回ることにした。

 明日の朝にはサルトを出てサンドネールに向かう船に砂海船を積んで向かう。

 とりあえず水とかの必需品を手に入れなくてはいけない。

 そろそろ切れるところなのだ。

 必要な事を澄ましたら今日は宿に戻って汗を流そう。

 それから武器の手入れに出港時間のチェック、それから暫らくの格好を決めなくては……

 この暑さじゃ、コートは自殺行為に等しい。下着も張り付いて気持ち悪いし。

 

 大型砂海船―――『サンドーラ号』が大変なことになろうとはこの時の私達に知る由もなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


どーもunkonownです。

次はとうとう砂海に行きます。

砂海に行って何があるのか……それは次回でお確かめを!

一応大規模な戦闘を入れようかと思っております。

ですが今回の話はちょっと変ですね……

構成力が無さ過ぎる自分です、はい。

まぁ次話はもう少し綺麗にまとめます!

それでは今後ともよろしく読んでやってください。

次話でまた会いましょう!

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