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18.少女が恋する相手は少女

「……私をあなたの物にして下さい」

 

「………はい?」

 

 エルタニア国領土にある小さな町のしがない宿屋の風呂場で、私は何故か押し倒された上に、見ず知らずの少女に裸で告白されていた。

 どして?

 

「……それは肯定と受け取りました。それでは初夜に備えて私が体の隅から隅まで洗わせて頂きます」

 

「え?いやそのはいじゃないよ?ねぇ聞いてる?何しれっとした顔で変なこと口走ってるの?ちょっ、まっ、待って!どこ触ってるの!?あっ、こらっ///]

 

 

 

 

 ―――時間は流れて10分後

 

 

 

 

「で、名前は…?」

 

「……名前?名前はアイン、アイン=フィード」

 

 場所は変わって私が借りている宿の一室にいる。

 あの後如何にか自室に撤退したのだが、部屋には既に私を押し倒した少女が居た。

 おかしい、私より来るのが早い。

 

「アイン=フィード……それじゃアイン、幾つか聞くが何で私を押し倒した?」

 

 私はベットに座るアインと名乗る少女を観察しながら聞いた。

 歳は私と同年くらい、背丈もほぼ一緒。

 髪は雪の様な銀色で肩辺りで切ってある。

 瞳はアメジストのような色で肌は磁器のように白く華奢な体だ。

 胸は……風呂場で見た感じだと私より小振りだったな。

 って違う!

 まぁ簡単に言えば儚いイメージの子だ。

 今は黒いワンピースを着てるけどスタイルはスレンダーな感じだなー。

 一応私は黒のタンクトップにハーフパンツを穿いても特に気にするほどスタイルに自信がないわけではないが、ついつい比較しそうになる。

 そんな事を考えていると小さくも奇麗な澄んだ声でとんでもないことを口走る。

 

「……肉体関係を持つことによって私をあなたに捧げようと考えました」

 

 さらっと凄いことのたまったー!

 この子何!?もしかしてそっちの人!?

 

「…もしかするとだが、男の人より女の人の方が好き?」

 

 恐る恐る尋ねる。

 もしここではいとか言われたら私はどうすればいいの?

 同性愛者は幸か不幸か私の身近過ぎるほどの身近にいたけど、この子のはアレとは別物すぎるよ……

 

「……(ノウ)

 

 そっか、よか―――

 

「……私にはあなただけ」

 

 なーーい!

 

「あのね、何その極端性は?何で私?てゆーかいいか、女同士もとい、同性愛は非生産的な事はやめよう?そこからは何も生まれないから」

 

「……構いません。覚悟の上です。それにこの世には性転換の術を記した禁断の書があるそうですし、同性同士の結婚が可能な国もあります」

 

 ……ダメだ。何言っても通じない。

 それどころか可能な事実の方が全面的に出てきてるよ。

 というか何の覚悟?それに性転換を記した書って何?

 

「クックック……!これはおもしろいのぉ、実に楽しい状況じゃな!」

 

 部屋の入り口から含み笑いをしながら現れたのはフリルをふんだんに使った黒いドレス―――所謂ゴスロリを着た十歳くらいの少女だった。

 腰まで届く金髪を揺らしながら紅い瞳に涙を溜めて笑いを堪えている少女、レイシスに向かって私は軽く睨む。

 

「ふざけてないでなんとかしてくれ。如何して私なんだ?」

 

「……愛に歳の差も理由も要りません」

 

「…………」

 

 何だろう、話が微妙に噛み合わない。

 それに(もっと)もらしいことを言ってるけど、私達の間にある障害は歳の差じゃないと思う!

 そして愛以前にこの問題はベルリンの壁以上に隔てなければならない問題だと思う。

 

「……私をあなたの物にして下さい」

 

 頬を僅かに朱に染めながら風呂場で言った台詞を言うアイン。

 

「断る」

 

「……それならあなたの従者として付き従います“マスター”」

 

「は?マスター?」

 

「……はい、マスターです。私はアイン・フィード、冒険者兼マスターの従者兼マスターの婚約者です」

 

 ほんと何この子?

 しれっと最後に婚約者とか言っちゃてるよ。

 

「いいのではないか、主よ。これはこれでなかなかおもしろいではないか♪」

 

 はぁ、どうせ何を言っても結果は変わらなさそうだな。

 寧ろどんどん私にとって不幸なことにしかならない気がする。

 

「…もう好きにしてくれ」

 

 もう諦めとこの先に待つであろう更なる面倒なことに頭を悩ませながら投げやりに言う。

 こうしてアイン=フィードという素性もよくわからない変わり者の仲間が加わった。

 まぁ何れ明らかになるだろ。

 だが翌日の朝にさらに悩まされることになろうとは思わなかった。

 

「…………」

 

 朝起きると私のベットの中に全裸で眠りながら抱きつくアインを見て絶句するしかなかった。

 

「…寝てる間に何もされてないよね?唇の童貞も下もまだ失ってないよね?」

 

 一人自問自答するように呟く。

 服が乱れてるのは抱きつかれて寝られてからだよね?

 うん、きっとそうだ。

 でも寝てる間にキスなんてされてないよね?

 は、ははは……

 寝る時まで悩まされるとは思ってもみなかった……

 

 

 

 

 ―――アインの一目惚れ記録―――

 

 

 

 

 ○月×日

 ……この日は仕事の依頼を終えて湖の畔で眠りこけていました。

 人の気配に起きると湖で水浴びをする人がいました。

 忍び寄って見ると、月の明かりを浴びて付着した水滴を煌びやかに輝せる黒髪の麗人を見ました。

 これがあの人との出会いでした。

 

 ……今はもう夜だったんですね。

 

 

 

 ○月□日

 ……昨夜のお方が気になりこっそりつけること数日。彼女について知る事が出来ました。

 彼女のはにかむ笑顔、彼女の憂いた顔、彼女の寝顔、彼女の寝起き顔、その他etc...

 それに戦闘の手際良さも良かったです。

 まるで舞のように踊り、黒髪を(なび)かせる姿……

 この時私は思いました。

 これが恋なのだと。

 

 ……しかし恋とは何でしょう?

 

 

 

 ○月△日

 ……ここ数日、体が火照って仕方ありません。特に体の下半身が疼くのです。

 何かを求めるかのように熱く、熱く……

 それにあの人にこの身体を蹂躙されたい、して欲しいと考えてしまうのです。

 私は変態です。

 

 ……変態は変態でも変形する意味の変態じゃありませんよ?

 興奮してハァ、ハァしてる変態の方です。

 

 

 

 ○月○日

 ……もう体の衝動を抑えられなくなってきました。

 今日はよくも町の宿に泊まりました。

 襲うには今日が良いでしょう。

 初夜はやはりベットの上で……

 

 ……結納は何時にしましょう?

 

 

 

 

 

「…………」

 

 何だろう、これ?

 息子のベットの下から出てきた本を見てしまい、息子の意外な性癖を知ってしまった親の気持ちのようだ。

 もしかしてここ最近の視線は全部これ?

 ガチャ、と音を立てて誰かが部屋の中に入ってくる。

 見ると風呂から上がったアインが居た。

 

「……(ポッ)」

 

 私が持っている物を見て頬を赤らめて目線を逸らすアイン。

 それはお風呂上がりだから赤いんだよね?

 目線を逸らすのは今の格好が恥ずかしいからだよね?

 この記録帳に書かれてる内容を見られたことに頬を染めてるんじゃないよね?

 

「……見られてしまいました。恥ずかしい///」

 

「あの、ここに書かれてる内容は……」

 

「……すべて私のその日の心境です。ですが話は早いです。今夜は是非……」

 

「断る!」

 

「……大丈夫です。私も初めてです」

 

 そういう問題じゃないんだよ……

 

 新たな心労が増えた日だった。











ども、unkonownです。

今回は短めショートストーリーです。

そして予告通り新キャラ追加っす!

えー、EX01.に登場してる朱音に続く同性愛者です。

理由は特にありません。

ただ入れたかっただけです。

今後はミナト、アイン、それにレイシスが活躍していきます。

次回はまだ未定です。

この回は突発的に思いつき即実行した結果です。

なので次回は今回以上に投稿は遅くなるかもしれません。

出来るだけ急ぎますがご了承ください。

それでは次回にまた会いましょう!

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