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14.動き出す者達

新キャラ登場!

 五年前

 

 

 

 

 城内には怒声に悲鳴、そして剣と剣が交わる音が鳴り響く。

 かつては美しかったであろう城は兵士達の死体が転がり、大地は血を吸い赤黒く染まっている。

 

「国王様、早くお逃げください!姫様もお早く!」

 

 若い兵士の悲痛な叫びが広間に響く。

 彼の鎧は彼方此方に傷があり、返り血や自らの血がこびり付き、戦いの凄まじさを物語っている。

 

「だが……!」

 

「お逃げください!!隠し通路の出口では隊長と仲間達が馬車で待機しております……ここであなた方を死なせるようなことがあっては、先に逝った者達に会わせる顔がありません……!」

 

「…すまない。行くぞ娘よ」

 

「皆は逃げないの?」

 

「ここで敵を食い止めるのが我々の務めですよ、姫様。……どうか無事に脱出できることを祈っております」

 

「本当にすまない。」

 

 そう言い残すと、王はなにやら呪文を唱え始める。

 すると何もない壁が音をたてて開き始める。

 王家と一部の者しか知らない秘密の隠し通路だった。

 王達が通路に消えると同時に隠し通路の扉はゆっくりと閉じた。

 

「さぁ、ここからは我々の出番だ。覚悟はできているか?」

 

 誰にともなく呟く。

 

「いまさら何言ってるんですか」

 

「そうだとも。覚悟なくして此処にいる者はおるまい」

 

「そうだったな。何としても時間を稼ぐぞ!」

 

 刹那、広間の扉が勢いよく開け放たれた。

 入口からは多くの兵士達が雪崩れ込んでくる。

 

「貴様等も裏切るつもりか?」

 

 兵士達の中から一人の男が前へ歩み出る。

 

「裏切る?何を戯言を言っている!裏切ったのはお前たちだろう!王に忠誠を誓いながら、その王に刃を向け、志を共にした仲間達を殺したのは!」

 

「裏切ったのは王の方だ。あれほどまでに言ったのに聞かなかった。我々の国は我々で守る。アイルーンの傘下に入るなど納得できる訳なかろう!」

 

「たったそれだけのために仲間達は命を落としたというのか……!」

 

「革命には犠牲が必要なのだ!彼らの死は無駄ではない。革命を起こす糧となったのだ」

 

「ふざけるな!グラム・テュリニッヒ将軍!」

 

 将軍と呼ばれた男、グラム・テュリニッヒは彼の激昂を冷ややかな笑みで流した。

 

「ならば貴様等六人も我が野望のための礎となれ」

 

 彼らへの死の宣告が下された。

 だが彼等は立ち向かうために、剣を抜き、構える。

 相手が数十人に対してたったの六人という、明らかに多勢に無勢という不利な状況下でも。

 

「うおぉぉぉーーーーー!!!」

 

 勇ましく雄叫びを上げながら敵に突っ込んで行った。

 

 

 

 

 

 この日、エルタニアはグラム・テュリニッヒ将軍の反乱により、国民は大きな衝撃を受けた。

 その事実は世界中にゆっくりと着実に広がった。

 反乱軍―――もとい、革命軍の追手から免れた国王と一部の者達は何処かに隠れ行方を眩ました。

 

 

 

 

 

 そして、それから五年後、ひっそりと着々と準備を進める者達がいた。

 かつてのエルタニアの王に仕え、革命軍の追手から免れた者達だ。

 現エルタニアの王、グラム王に復讐を誓うことを胸に刻み、その時が来るまで……

 

 

 

 

 ✝

 

 

 

 

 

「これで8回目だ……」

 

 私は深く溜息を吐く。

 

「流石に雑魚といえど、こうも多いと堪えるのう」

 

 馬車の荷台の奥からレイシスが愚痴をこぼす。

 

「まだいいよ、レイシスはただ見てるだけで。こっちは集中力使って進路の確保してるってに……」

 

 バレットM82A1のスコープから顔をどけて、荷台で寛ぐレイシスを一瞥して闇を周囲に広げる。

 くそぉ~、悠々と過ごして高みの見物ですか?!

 

「ただ見てるのもいい加減飽きてしまったのじゃ。」

 

 まぁ、分からなくもない。

 クラムを発ってからかれこれ五日は経つ。

 そしてどういう訳かやたらと魔物とかに遭遇するのだ。

 お蔭で闇を使って索敵しては遠距離から狙撃とやってるものだから神経が大分すり減ってしまった。

 それに平原ばかりで景色がつまらんときた。

 道を間違えたか?

 もう着いてもいいと思うんだけどな。

 まだまだこの状況が続くことに私は深く嘆くしかなかった。

 

 

 

 

 ✝

 

 

 

 

 人気のない薄暗い路地にて二人の人間が壁に背を預けながら小声で会話を交わしていた。

 お互いの顔も見ず、前を見ながら。

 

「エルタニアに動きが?」

 

 片方がもう片方に聞き返す。

 姿はローブによって隠されているが、声からして少女であることが窺える。

 

「えぇ、『明日の日の出』はどうやらパレードに乗じて襲撃をする予定です。ですが、グラム・テュリニッヒは既にこの情報を入手しており、襲撃させ、そこを一気に殲滅するつもりです」

 

 もう一人が彼女の問いに答える。

 何処にでもあるような格好をした痩身の男だ。

 

「彼等はそれを?」

 

「知らないでしょう。計画は既に最終段階に入ろうとしている筈です。予定通りであれば六日後です」

 

「彼等に伝えることは出来ないのですか?それが本当ならば……」

 

 彼女の言葉には何かを恐れるような感情が籠もっていた。

 

「それは無理です。向こうに潜らせておいた工作員が一人消されました。迂闊に動けばほかの工作員達が危ない」

 

「……ならば、私自身が伝えに行きます!」

 

 彼女はきっぱりと言い放つ。

 

「ひ、姫!それは危険です!」

 

 痩身の男が急に慌てだし、引き留めようとする。

 

「構いません!掛け替えのない友を見捨てるわけにはいきません。それとここで姫と呼ぶのは拙いのではなくて?」

 

「も、申し訳ありません……」

 

「私は何と言われても行きます。私を行かせなさい、これは命令です。」

 

「…はっ!お気をつけて。エミリー様」

 

 痩身の男は恭しく頭を垂れるとそのまま路地の闇に紛れていった。

 彼女―――エミリーは来た道を戻り大通りに向かって行った。

 

 

 

 

 

 クラムに到着してから一日が経つ。

 今日も情報集めをしていると一人の痩身の男が接触してきた。

 何でも彼はアイルーンの諜報員みたいな役職らしい。

 エミリーがその痩身の男と路地に入って行って数十分が経つ。

 暫らく待っていると、路地からエミリーが出てきた。

 だが、顔は険しく穏やかな雰囲気ではなさそうだ。

 

「これからエルタニアに向かいます」

 

 彼女はただ一言そう言った。

 

「エルタニア……何かあったのですね」

 

 セリーナも顔が険しく重々しい雰囲気で言った。

 あの~、俺にはさっぱり状況がわからんのだけど……

 てか、エルタニアって?what?

 

「はい。理由はおって説明します。エルタニアに行かせてくれませんか?お願いします、ユウスケ様!」

 

 何が何だか解らぬまま、その気迫に負けてつい頷いてしまった自分がいた。

 

「最短距離を馬車で飛ばして三日、十分に間に合う筈です。」

 

 馬車に乗り込むや否や、かなりの速度で走りだす。

 お蔭で揺れが酷いし乗り心地も非常に最悪だ。

 そんな中で馬車の操作をしているセリーナを除くエミリーとミーシャが事情を説明してくれた。

 なんでもエルタニアとは昔から仲がよかったそうだ。

 エミリーとエルタニアの姫も仲がよく、実の姉妹の様だがったらしい。

 だが、五年前にグラム・テュリニッヒ将軍の反乱によって国を追われて以来行方が分からなかったみたいなんだが、一年ほど前に『明日の日の出』と言う組織にいることがわかったそうなんだ。

 でも彼等は複数の拠点を転々と変えてるらしく、分かった時には既に誰もいない状況。

 そのため向こうの状況も組織の規模も殆んど掴めていないそうだ。

 まぁ、現エルタニア軍から逃れ続けてきただけあるというわけだ。

 

「間に合わせなければ……多くの犠牲者がでることになります」

 

 エミリーは悲痛な顔で言った。

 彼女はどうやら想像した惨事が起こってしまわないか不安なのだろう。

 俺はそんな彼女の不安を取り除こうと声を掛けようとして引っ込んだ。

 こういう時、一体どんな言葉を言えばいいのだろう?

 こんな状況は今まで無かったがためにどうすればいいのかわからない。

 寧ろこういう時に励まさないでどうする?

 そう自分に言い聞かせて言葉を出そうとした刹那、馬車が突如止まった。

 

「おいこら!安全運転しろよセリーナ!」

 

 急に止まったせいで舌を噛んだのだろう。

 ミーシャが涙を滲ませながら御者台にいるセリーナに訴える。

 

「…………」

 

 だが、セリーナからの応答はない。

 不審に思ったミーシャがもう一度呼びかける。

 

「セリーナ?」

 

「………がってる」

 

「は?」

 

 聞きとれずにミーシャが聞き返す。

 エミリーも気になって御者台の方を見る。

 

「…道が塞がってる」

 

 何とか聞き取れる程度のか細い声でエリーナが言った。

 

「うそでしょ…」

 

「ったく!」

 

「何で塞がってるんだ?」

 

 俺が理由を尋ねると回答は直ぐに来た。

 

「土砂によって道が完全に塞がれています。別のルートでは早くて四、五日……」

 

「それでは間に合うかどうかわかりません」

 

 エミリーは泣きが混じった声で呟いた。

 

「……それでも行こう。ギリギリ間に合うかもしれない。急いで別のルートで行こう。」

 

 俺はただそう言うしかなかった。

 

「そう……ですね、最もここから近い別ルートに向かいましょう。まだ全てが終わったわけではありませんから」

 

 

 

 

 

 ✝

 

 

 

 

 

「……ここがエルタニア?」

 

 巨大な、要塞のような門を見上げながら隣のレイシスに尋ねる。

 

「お、おかしいの……昔はもっと洒落ておって、こんなんではなかった様な……」

 

「……ここがエルタニア?」

 

 門を無事通過し、壁の内側に入れた。

 だが街の雰囲気は暗く、人の姿は疎らで少ない。

 その代わりに兵士の姿が多くみられる。

 

「むぅ、妾の記憶と大分違うのぉ。眠っている間にここも様変わりしてしまったみたいじゃ」

 

 レイシス、それ、何時の記憶?

 そんな疑問を持ちつつ、辺り見回してみるが明らかに住民より兵士の方が多い気がする。

 街の中心に向かうに連れて人が徐々に増え続けている。

 そこでふと、足元を見やると何かのチラシが目に入る。

 

「パレードのお知らせ?」

 

 チラシにはそう書かれていた。

 中央広場で準備をしてるから人が増えてきてるのか。

 とりあえず今夜の宿を探して、それから馬車やら何やら考えればいいか。

 さて早く宿を……

 

「逃がすなー!追えー!」

 

 む、何だ何事だ?

 前方からローブを纏った三人組とその後ろを兵士六人が追いかけて人垣をかきわけてくるのが見える。

 

「くっ!このままでは……!」

 

「先にお行きください、ここは我々で食い止めます!」

 

「必ず合流致します!」

 

「エイ、ビィ……!わかったわ。後は任せます!」

 

 三人組が何やら決断したらしく、二人が急に静止して後ろを振り向くや腰に提げていた剣を鞘から抜き放つ。

 すると兵士達も各々の剣を抜き、四人がエイとビィと呼ばれていた二人と剣を衝突させる。

 ってゆーかエイとビィって、本当の名前じゃないよね?

 そんな事を考えている間に事態が大きく変わっていた。

 三人組の内の一人、つまり剣を交えてない奴だが、何時の間にか二人の兵士に捕まっていた。

 どうも逃げ切れなかったみたいだな。

 ま、私には関係のない話。

 

「離せ!くぅっ…!」

 

 捕らえられた一人が抵抗するが拘束する力が強められたのだろう、くぐもった呻き声を漏らした。

 

「ミオラ!」

 

 エイと呼ばれていた男が彼女を助けようとするが交戦してる兵士達がそうはさせまいと激しく攻める。

 ビィという男も同様に動けず攻撃を捌くのが精一杯の様だ。

 

「で?お前達はあそこで何をやってたんだ?如何なんだ!答えろ!」

 

 そう言うや一人の兵士が拘束されてる人を叩いた。

 

「つっ!」

 

 痛みの声を微かに漏らしそのまま倒れる。

 その勢いでローブのフードがとれる。

 そこには叩かれた所為で赤くはなっているが整った顔立ちでブラウンの長い髪を後ろで束ね、琥珀色の瞳が綺麗な少女だった。

 年齢は私と大差変わらないだろう。

 スタイルは私の勝ちだな、うん。

 

「ほう、こりゃ上玉じゃねぇか!そうだな、俺と楽しいことしないか?そしたら今回の事は黙っておいてやる!」

 

 あれ、前にこれに似た場面を見た気がする……

 あぁそうだ、思い出した。

 何時しかの橋を落とした山賊に出くわした時だ。

 何だろ、急にむかむかしてきたぞ?

 

「あ、主?如何するつもりじゃ?」

 

 レイシスが戸惑い気味に聞いてくる。

 

「何かむかむかしてきたから助ける」

 

「は?妾はてっきり傍観者でおるのかと……」

 

「気が変わった」

 

 私はそれだけ言ってあいつ等の方へ向かった。

 

 

 

 

 ―――ミオラside―――

 

 

 

 

 何たる屈辱……!

 こんなとこで捕まるわけにはいかないのに。

 如何にかして逃げ出さなきゃ。

 でも、エイとビィをおいていけば彼等がどうなるか……

 既に二人は拘束されている。

 わたしが捕まったことによって心が乱れたせいだろう。

 エイとビィは兄弟で剣の腕も良いし、連携技は結構なものだ。

 彼等だけだったらこんな事にはならなかったのではと考えてしまう。

 

「そいつ等は拘置所に連れいていけ!俺はこの子と楽しい時間を過ごすからさ!」

 

 わたしの頬に指を這わせながら下品に笑う。

 

「おいおい、俺達にもやらせろよ!」

 

 ほかの連中も同じように笑う。

 とても耳障りな声だ。

 だが、わたしは何もできない。

 何もできずにこいつ等に体を蹂躙されることだろう。

 こんなところで……!

 そんなわたしの願いが通じたのかは分からない。

 だが通じたのだと信じたい。

 

「な、何だこれ!?ワイヤー?」

 

 突如兵士達に細いワイヤーが巻きついてきたのだ。

 

「ぐわぁぁーー!」

 

 急に兵士達が激しく痙攣しながら叫び始め、暫らくしてその場に倒れこむ。

 何時の間にか巻きついていたワイヤーは消え、周りには倒れた兵士六名とわたし達が残されていた。

 ただわたしは茫然とそれらを眺め、何が起こったのか分からないでいた。

 

「死なない程度に軽く電流を流しただけ」

 

 突然後ろから声が聞こえ、その場から少し離れて腰の片手剣の柄を握っていつでも抜けるようにする。

 エイとビィもすぐさま警戒体勢に入っていた。

 それを確認してから初めて声の主を見た。

 体格はわたしと大差ない。

 ローブを着て顔をバイザーで隠しているせいで正確にはわからないが、わたしと同じくらいの歳だと思う。

 そんな分析をしているとその人物が話しかけてくる。

 

「大丈夫、敵じゃない。それより早く逃げた方がいいんじゃないか?」

 

 ローブを纏った人がそう言うや否や、

 

「何だこの騒ぎは!さっさと道を開けろ!」

 

 しまった!このままじゃまた捕まる!

 

「エイ、ビィ!急いでこの場を離れましょう!あなたも一緒に!」

 

 わたしは二人を一瞥しつつ、ローブを纏った人に言う。

 何故この時、わたしは|『一緒に』と言ったのかは分からない。

 助けてもらいはしたがそれだけで信用するにはあまりに情報が少ない。

 エイとビィもあからさまに警戒の色を浮かべたが、今の状況であれこれ言ってる暇はなかった。

 だがわたしは何故か信頼できると思った。

 

 

 この出会いが後にわたしの命運を分けることになるなど、この時は思いもしなかった。











どもー、unkonownです。

新キャラこと、ミオラ!

今回のエルタニアでの物語のキーパーソンです。多分……

少しずつキャラ設定を固めていこうと思います。

あまりに久しぶりなので所々変になってると思いますが暫くはエルタニア編です。

また次回に!

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