01.序章
よろしく読んで下さい。
えー、どうも私こと、綾瀬湊は現在、とても稀有な体験をしております。
そりゃもう、口調が可笑しくなり現実逃避をしたくなるほどに……。
え?何、稀有な体験て、どんな体験?
よーし、説明してやろう。
それはな…
そう、それは―――
異世界トリップだ!繰り返す、異世界トリップだ!
大事なことなので二回言いました。
何故私が異世界に来てしまったか?
それは簡単な事だ。何処かの馬鹿が私の大事なポニーテールを引っ張って魔法陣に飛び込んだ所為で、私までファンタジーな仲間入りだ…!
おっと、このままだと愚痴になりそうだ。因みに馬鹿については後で説明する。
次だ、次、次の話。
えーと、次は、あー、そーだ!何故此処が異世界だと分かったかについて説明しよう。
この件についてはいたって簡単な事なのだ。
何せ、西洋の鎧に身を包んだ兵士に取り囲まれてる上に、喉元に剣独特の冷たさが伝わってくるのだ。
これを現実でないなんて否定できるものか。
それに、さっきまでいた住宅街と景色が違いすぎる。
周りが石の壁でできており、部屋の中央には私と隣に馬鹿、目の前にはズラリと並ぶ、騎士の皆様方。
その後ろに、明らかに空気が違う、白いローブを被った少女。
恐らく隣にいる馬鹿を召喚した巫女なのだろう。
そして、部屋の隅には魔術師か神官と思しき者たち…
明らかに日本人ではない。
この状況で否定できる条件が一つもない。
本当に異世界に来てしまった事を再認識するには十分すぎた情報だ。
面倒だ……。